Link.2 残響都市②
天使に嫌われる体質の「落ちこぼれ」アマネ。
彼は一部の同級生からの陰湿な「いじり」を受けていた
ある日、彼はそんな同級生、とある貴族の子や他のクラスメイトから、肝試しに行けと言われ……
◆
「……はは……ちょっと楽しくなってきたかも……?」
怖いと思っていたはずなのに、不思議と足は止まらない。
白い廃都を歩くうちに、最初の恐怖は少しずつ薄れていた。
廃墟群に入ると、少し割れた地面などに足を取られつつもその"観光"を楽しんでいた
しばらく歩くと、やがて街の中心らしき場所へ出る
そして目の前には大きな教会が立っていた
「……とっくに廃れたってのに……結構綺麗だな?……文化遺産にならないのが不思議なくらい」
どうせ証拠を持ち帰らなければ面倒なことになる。
入るしかないか……
気が進まないもののため息を一つついてゆっくりとドアを開けた。
「う、臭っ……」
扉を開けると、長い間開かれていなかったのか大量のホコリが舞い上がった
まるで灰色の埃を口に含んだような言いようのない不味さが体内に満ちた気がした。
目に見えるほどに月明かりに照らされて舞うホコリを手で振り払いつつ、アマネは中へと足を進めた
「天使……」
教会の奥には、一つの像が建てられていた。
羽が生え、円環を持っている小さな少女。
いわゆる"天使"というものだった
「なんで神様じゃなくて天使なんだ……?」
少し疑問に思ったものの、アマネは地面がギシギシと音を立てて脆そうに感じたので先を急ぐことにした。
階段を登り、天使像の裏手から2階に上がる
「そういえばこれ何を持って終わりにすればいいんだぁ……?悲鳴?わ、わぁ〜!怖い……よ──」
早く終わりたい気持ちもあって、アマネは脳内で迷走した結果の結論を試してみる
終わりを決めるのは自分であり、クリア!などという文字が出ることもないため本来ならばただ静寂の中で虚無感を抱えて終わるはずだった
しかし、目の前には世にも恐ろしい悪魔の像がこちらを見ていた
「うっ……!?……っあ……」
本当に心臓が跳ねた時、人間は声が出なくなる。
悲鳴をあげることすら忘れて、本能的に熊に出会ったかのように硬直する。
心臓の音が周りの音を掻き消し、アマネは思考を早める。目を離さずゆっくりと後退していった。
が、後ろを見ず、足元を見ず、よそ見をしながら歩けるほどこの廃墟は丈夫ではなかった。
「はっ?──はぁぁぁっ!?」
バギッ、ともグジュッとも取れる音を立てて脆くなった木の柵が折れた。
アマネはそのまま柵と共に落ちてしまった
落下先には天使の像。
咄嗟にアマネは体を捻って像を避ける。
しかし、そのまま落下する事実は変わらず、アマネは一瞬のうちに来るであろう衝撃に備えていた
が、その衝撃は柔らかいものが先にやってきた。
「へ?……っだ!」
もちろんその後に本来の衝撃がやってきたのだが
痛みに腰をさすりながら立ち上がると、アマネはそこが先ほどの教会の地下だと理解できた。
どうやら上から落ちた衝撃で床が抜け、そのまま地下に落ちたようだった
脆くなった木が何枚か体の下敷きになっており、床と地下の天井両方を踏み抜いたのだとわかった
「きょ、教会に地下……?こんなのあるんだ……って」
胸ポケットを確認すると、元々入れて録画をしていたリトホは画面が砕け、付かなくなってしまっていた。
「あっ、録画………!嘘ぉ……結構高いのに……はぁ」
金銭管理を全て自分でしているアマネにとって、お金があったとしても今後に確定した無駄な出費は悲しいものがあった
ひとまずここから出ようと辺りを見回すと、目の前にはなにかの鎖が見えた
「……は?ひ、人……!?暗くてよく見えないな」
ボロボロになっている布が暖簾のようにかかっており、そこには鎖に繋がれた黒い髪の少女が座っていた
どうやら生きてはいるものの、眠っているようだった
アマネはビビりつつもしばらく様子を見て、話しかける決意を固めた
「あ、あのぉ……?大丈夫ですか?」
「………」
どうやらちょっとやそっとのことでは起きないようだ
鎖に両手を拘束されているようでまるで断頭台に首を差し出すかのようなポーズで固定されていた
その姿はまるで罪人のようだった
「……これ、もう錆びに錆びてんな……あっ」
ふと少女に近づき、その鎖を興味本位で触ってみると、見た目以上に錆びており簡単に砂のように崩れてしまった
「……もしかしてまずい?ってかなんでこんなに傷一つない綺麗な姿で繋がれてんだ……?」
疑問は尽きないものの、少女の腕を縛っていた鎖を全て砕き、壁にもたれさせた
1本壊したしもう何個やっても同じだろ……
それにこんな状況見て見ぬふりしたら心がさらに荒むわ……
アマネは自分のエゴだとわかっていながらも楽観的に少女を助けようと思った
全ての鎖と手錠を壊すと、アマネは少し離れて様子を伺った
「あのー……大丈夫です?」
「……」
その時、ふと少女の頭上になにかが浮いていることに気づいた。
元からあったのか、今出てきたのか
わからないものの暗いこの地下に馴染むようになにかがあった
「これは──」
「──触らないでください」
頭上のなにかを触ろうとした時、ふとその手が誰かの手によって弾かれた
否、誰か、ではなく目の前の浮かぶものの主、黒髪の少女によってだった
「うわっ!?」
突如起きて声をかけられたためアマネは驚く。
背後に転がる腐った木に足を引っ掛けて尻餅をついてしまった
それに対して少女は立ち上がり、自分の両手を確認してからアマネを見た
「……あなたが……」
少女はアマネが驚いている隙に観察を終え、すぐにしゃがんで目線を同じ高さに合わせてこう言った
「あなたは、誰ですか」




