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エンゲージ・リンク  作者: 花酔
第一章 問いと契約のオーバーチュア編

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Link.16 白き亡国

セラノアの供述と、アマネの熱意を見届けたロゼはひとまず見逃すことにした

しかし、そこでロゼは何故そうなったのか、という根幹を問いただすのだった


◆


「私は、亡国レミニセンスで生まれた天使でした──」


セラノアは、重く苦しい表情を隠しながら、冷静を装って語り始めた


▼▼▼

現在では亡国となったレミニセンス。

今、レミニセンスの土地のほとんどはこのオラトリオが使っています。


立地が良く、ずっと豊穣で、外交にも適し迎撃にも長けた完璧な国でした。

白い神都と呼ばれたその国は、とある厄災で幕を閉じます


「──これは、なんだ」


レミニセンスを治め、導いた賢王がいました。

しかし、その賢王ですら理解できない惨状が目の前に広がっていました


赤黒い、炎です。


私が生まれた時、意識ができた時。

白衣の男の人が二人いました。

知っての通り、天使はレミニセンスから生まれたものです


彼らは私を作り、天使という種族を使ったのでしょう

少なくとも、それまでに天使という種族はあ(・)り(・)ま(・)せ(・)ん(・)で(・)し(・)た(・)

そして、彼らのうち一人が死にました。


……私が眠っていた時、いつのまにか握っていたナイフで、刺していました


「………貴女は救世主となるでしょう」


苦しい声が聞こえました。

血が、頬に滴り落ち、私は呆然と目の前の光景をただ見ていることしかできませんでした。

動かない体、思考がまとまらない頭、手に伝わる冷たい液体の感触。

ただ、声と金属音だけが聞こえていました


「......兵器にするつもりはありません。どうかせめて──」


声はそこで途切れ、研究員は命を落としました。


覚えていますね?

天使は人を殺せば、堕天使に変わる。

瞬間、私は一つの経験したことのないほどの重い呪い(罪架)を感じました。


──そして、その後のことは記憶にありません。

目が覚めると、辺りは焦土と化し、黒い雲が雨を、涙を流していました


▲▲▲


「──そこからは、史実通りです。やってきた勇者に、私は封印されました。そうして、淵下力の充満するあの教会地下に拘束されていたのです」


一通り、話し終えるとセラノアは目を閉じて俯いていた


「──つまり、恐らくは暴走して、気づけば周りは死んでいたと」

「でもそれなら殺したことには──!」

「なります。この、私の中にある多くの罪架が、証拠です」


それを聞き、アマネは言い返せなくなる。

罪架は殺した人の怨恨、記憶、残響だと言われている。本人にはその数が正確にわかるのだろう


「貴殿の話が本当ならば、自己喪失状態の殺人だ。……法的に罪に問われることはないだろう」

「………それでも、私は自分を簡単に許すことはできません。だから、せめてこの真相を知ることは、明らかにすることは、彼らへの償いになると思ったのです」


ロゼは神妙な面持ちで考え込む。

しかし、すぐにソファから立ち上がって一つ深く息を吐いた


「私は、昔の人がどうなろうと、何人死のうと俺に助けられはしない命だ。どうでもいい。戦争の歴史を裁こうとは誰も思うまい。」


その言葉はかなり冷徹で、現実的で、警察としてあるまじき発言だった


「過去に戻ってまで歴史の悲劇を救いたいというヒーローなど、極度の夢想家であり阿呆だろう」

「えっ?は、はい……」

「それに、時効だ。貴殿を裁けはしない……というのは屁理屈だな。慰め、ではないが私ならば知人のために、声を、足跡を知る人のために償うことを悪いことだとは思わんさ」


その言葉には、どこか遠くを見ているような寂しさがあった。

落ち着いた声で、アマネはその声が確実に優しさを含んだものだと理解していた


「事情は理解した。経過観察はさせてもらうが、私──ロゼ・エペイストは君たち恩人の権利を認めよう。これは無礼の詫びだ」

「これは……」

「眼鏡?」


ロゼは一つの箱を机に置き、立ち上がって素早く綺麗な動作で軍人のような礼をする。

それを開けた二人は目を丸くした


「貴殿らの情報はあまり広めるべきではない。始まりの天使やその情報は下手に広めると貴殿らを危険に晒してしまう」

「ええと……それとこのメガネの何の関係が?」


ロゼは外していた手袋を義手にはめ直し、説明を始めた


「これは、天輪の色を白(・)に(・)す(・)る(・)眼鏡だ」

「えっ!?」

「貴殿たちは娘を救ってくれた恩人だ。こうなる可能性は元より考えていた。そのための品だ。受け取ってくれ」


アマネとセラノアは目を合わせ、驚いた表情を互いに見合う。

そしてメガネを見直すと、恐る恐る手に取ってみた。


「か、隠れていますか?」

「えっと……おぉ……!!し、白くなった!」

「アマネ。貴殿はこの学園の生徒なのだろう。天使を所有する場合届出が必要なはずだ。これは役に──」

「ありがとうございます!!最高のタイミングっす!!」

「ん………そ、そうか」


アマネは喜びを隠しきれずにガッツポーズを決める。セラノアも、目を輝かせてメガネに手を置いてクルクルと回っていた


「………ふっ、貴殿らは不思議だな」

「へ?何か言いましたか?」

「いいや。なにも。これからも縁があるだろう。アマネ、セラノア嬢。応援している」


二人の賭けは、ひとまず勝利という形で幕を閉じた。

白輪の鏡 (はくりんのかがみ)

天使の輪を白く見せることができるメガネ。

ヘイローそのものの外郭に作用して色を変化させている

負荷はない

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