Link.13 尋問
セラノアの黒い天輪について、学園の登録をどう誤魔化すか悩むアマネの元に、一つの放送が届く
呼び出された先には、とある背の高い男がいて───とある問いを投げかけてきた
「黒い天輪を、知っているな?」
◆
「──黒い天輪を知っているな?」
心臓の音が、静かになる。
もはや音は遠くなり、ただ強く、一つドクンと鳴ると緊張の汗が流れた
その言葉を聞いた瞬間、体は危険反応を示し、思考することに全神経を注がせてきていた
アマネは背中に冷や汗が伝う感覚を確かに覚え、口を満足に開くことも難しかった。
──言葉が続く
「あの日、私は私の率いる魔錠警団を連れ、現場に向かった」
魔錠警団。
聞いたことはあった。天使を持たず、魔道具で戦う人間の警察組織。
魔法犯罪や物理犯罪。どちらかといえば悪魔よりも人間を専門とした武力組織だった。
「ただ、私がついた頃にはあの悪魔の首は落ちていた。契約者共に聞けば奴らが到着した頃には既に首が焼き切れていたそうだ──そして、その場に居合わせたのは貴殿と、そして私の娘。娘は眠っていたが直前の記憶があった」
まるで犯人を詰めるかのように、雪崩のように話す男は目の前の男をただ見定めていた
「──私は自分の目で真偽を図るのが信条でね。業務上、恩人にこう言うことをしたくないとしても聞かなければならない」
「…………っ」
ロゼはトーンを落とし、確かに残念そうな声色で未だ圧をかけ続ける。
契約者ゆえか、背後でセラノアが動揺しているのが肌で感じられた
「──貴様は、デザイアか?」
「……デザ、イア……?」
「あぁ。堕天使を使う犯罪者の総称だ」
やっと声が出せるようになってきたアマネはようやく自我を取り戻し、危険信号に従った逃げる判断以外の思考も成り立つようになってきた
「……俺、は……知らない」
「ほう」
堕天使……セラノアを売ればきっと安全に終われる。
誰も殺してはいない。罪を犯してはいない
今なら間に合う
──なわけない
生活してきて、セラノアが少なくとも好んで人を殺すようには思えなかった
「デザイアなんてもの、知らない。それに……契約してたとしても、自分の相棒を売るわけない……!」
「ならば聞こう。あの事件からまだ数日。1ヶ月も経っていない。堕天使と契約しているとして、なぜそこまで信じられる?………力に魅せられているのか?」
アマネは、ダン!と強く机を叩き、痛みで自分の怯えを隠す。
強く、拒絶の意思を表明した。
対してロゼの意見も尤もだ。
それはアマネ自身、深く理由はない
──強いて言うならば
「俺は、俺も……自分の目で見て決めるタチなんすよ……だから、セラノアはまだ渡さない。渡せない」
「………逃げず、契約した事実を認め抗うのか」
「もともと契約した地点で賭けだ……!裁くか、見逃すか……恩人に剣を向けるか否か、決めろ……!」
下唇を噛み、勝てない事実の上で抗って見せるアマネ。下手な言い訳は圧で思考から消えている。
珍しく強い言葉を使う裏には、仲間とみなし始めた相棒を守る意思があった。
その言葉にロゼは少し目を細め、ボソッと呟く。
………嫌だろ、せっかく知り合ったのに
一触即発の空気の中、一つの声が膠着した場を動かした
「──まだ、というのは言わない方が好印象ですよ」
「………!」
空から現れたセラノアに、ロゼは驚いたような表情をして咄嗟に距離を取る。
動きはまさに武人のソレだった。
「………初めまして。私はセラノア──堕天使です」
一世一代の博打
掛け金は二人の命運だった




