第八話 完成! ツリーハウス!
「できたっすよ! これでデカい草食べモコモコは包囲されたっす!」
おおー、と私やみんなは喜ぶ。これで白いヒツジとヤギたちに追いかけ回されないし、邪魔もされない。
その間に、私はみんなと【ウォッチ】のメモにまとめていた『緑地化』プランを話して、アイデアはまとまっていた。
メジロたちとハムスターたちも続々と戻ってきて、建築に必要な材料が圧縮された、たくさんの四角いブロックが積み上げられていく。
これで、材料も問題ない。
「よし! 『緑地化』プランを考えたから、受け取って、ナゴミ!」
私は、【ウォッチ】から取り出した『緑地化』プラン、それにサツマイモを、スワイプしてナゴミへ送る。
ナゴミのお手手は先にサツマイモをキャッチして口に放り込み、それから『緑地化』プランを受け取っていた。順番、逆じゃないかな。
「うっひょー、サツマイモっすー! これさえあればバリバリ働けるっすよー!」
「うん、プランちゃんと読んでね」
「まあまあ」
ナゴミはサツマイモに夢中で、ホログラムの紙に書かれたプランはお手手につかんだままだ。
とはいえ、すぐにサツマイモは食べてしまい、ヘルメットを被り直して、ナゴミは建築に取りかかる。
「ついでに〜、作業効率アップのアイテムもあげるねぇ」
「あ、それ私も出そうと思ってた!」
「じゃあ、おれも使っちゃえ」
ポイポイっと、みんなナゴミへ売店で買った『集中ゴーグル』を投げる。そのせいで、ナゴミはワタワタと慌ただしく三つも『集中ゴーグル』をヘルメットに引っかけて、それから作業を開始していた。
それはさておき、アイテム盛りだくさんでナゴミの作業効率は格段に上がった。ナゴミがガジガジと丸太をかじる間に、どんどん目に見えて土地が変化していく。
まずは、さっきダムを作って引いた水を、あちこちに流し、貯める場所が生まれた。
すると、どこかからか流れてきた植物の種が芽吹き、スクスクと草花が成長していく。
まるで初夏のように、こげ茶色の土で覆われていた土地は、緑色の草原へと生まれ変わっていく。ヒマワリも背が伸びて、もうすぐ花が咲きそうだ。
でも、それだけじゃない。
「うん、想定どおり! 水が豊富で、暖かい気候なら植物はどんどん増えてくれる」
そこへ、もう一つ、植物を助けるモノを作ることにしたのだ。
ちょうど、シンのハムスターたちが帰ってきた。
「カナデ、ヒツジとヤギのところから、フンと土を拾ってきたぞ」
「やった! ありがとう!」
私はシンにお礼を言って、ブロック化したヒツジとヤギのフンと土を指定の場所へ運んでもらう。
お邪魔キャラクターだって、『緑地化』プランに利用してしまおう。
ナゴミに掘ってもらっていた大きな穴へ、みんなでそのブロックを放り込む。
「あちこちで拾ってきた枯葉と一緒に、穴へぽーい」
「うーん、フンのブロックって、触るのちょっとためらう。仕方ない、えい!」
「あはは……埋めて、ちょっと待つと堆肥ができるから、ここに木の苗を植えて」
みんなで力を合わせて、すっかり大穴はブロックで埋まり、その上に土を被せる。
そこへ、【ウォッチ】の持ち物リストから、売店で買った『植物の種セット』を選び、四人で一緒に大穴の跡に撒いていく。
そこからは、ものすごい早さで、草花だけじゃなく樹木まで成長していった。私の背を追い越し、見上げてもてっぺんが見えないほどの大樹が何本も育ち、すっかり森林ができたのだ。
「おお〜、アイテムで作業効率上がりすぎて、早送りみたい」
「あっという間に森になっちゃった……」
「迫力あるなぁ」
エルとココア、それにシンは感心しているけど、実はまだまだ、これで終わりじゃない。
ちょうど、他の場所をすっかり『緑地化』し終えたナゴミがやってきた。
「ご主人、いいっすか?」
「うん、森はできたから、始めちゃって!」
「了解っす! 『緑地化』プラン、最終工程っすよ!」
うおー、と気合の叫びを上げながら、ナゴミは森林に向かっていく。
トンテンカン、ガジガジ、ガジガジ。
そんな作業音が終われば、大きな樹木の上には丸型の小さなお家が、さらに木と木の間を結ぶ木製の吊り橋がかけられて、人が住める街ができていく。
全部が木で作られ、木の上で生活ができるスタイルの街だ。木の根元には川や池があり、草原には見渡すかぎりのタンポポや菜の花、ヒマワリ、色とりどりの花が咲き誇っている。
ようやく、ナゴミが戻ってきて、宣言した。
「樹上のツリーハウスの街、完成っすよ!」
わあ、とみんなではしゃいで、手を叩く。
ただし、一点だけ、ちょっとした問題があった。
よくよく見ると、樹上のお家は、私たちでも入れないくらい小さいのだ。そこまで精密に作ると、制限時間に間に合わなくなると思って、小さめに作ることにしていた。
「街はミニチュアなんだけど、いいよね」
「それは仕方ないって。課題のメインじゃないし」
「実際、制限時間ってあと十分しかないもんね」
そう、気にしていた制限時間の残り時間を確認すると、宙に浮かぶ数字は【00:11:06】となっていた。
「ギリギリまでやって完成させてもいいけど、前はそれでハラハラしたもんな……」
「うん、あれは本当、心臓に悪いから……」
「まあ、気持ちは分かるわ」
「そだね〜。メンちゃんも、うんうん、って」
そういうわけで、今回は早めに終わるよう工夫をしたことで、制限時間内に余裕を持って課題を終わらせることができた。
『緑地化』——植物を増やすだけじゃなく、住む生き物にとって、住みよい環境にすること。
まわりの草原や森、川、池だけじゃなくって、樹上のツリーハウスの街もプラスすることで、ここでは私もビーバーのナゴミも一緒に暮らしていける。そんなふうな思いを込めた、今回の課題は完成だ。
やり切ったナゴミが、チラッ、チラッ、と私を見上げてくるので——私はそっと、サツマイモをもう一つ、ナゴミへあげた。
それを見て、エルはメジロたちへ、シンはハムスターたちへ、ココアはメンちゃんへそれぞれご褒美のおやつをあげていた。




