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私の『使い魔』はビーバー!  作者: ルーシャオ


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第七話 お邪魔キャラは聞いてないよ?

 VR学習の時間が始まると、私たちは前回と同じく七班で集まった。


 今回のVR空間ステージは、青空だけどこげ茶の土で覆われた土地だ。タンポポがほんの少し生えているくらいで、木は一本もない。


 このステージを『緑地化』するのが今回の課題で、宙に浮いた【01:29:59】の数字がカウントを始める。


「それじゃ、『緑地化』しよう!」

「お〜!」


 私とエル、ココア、シン、それに『使い魔』たちは、課題に取り組みはじめた。


 考えてきたことはたくさんある。【ウォッチ】にメモとして保存しているから、そのこともみんなと話し合わないといけない。


「ひとまず、手順は前と同じでいいよな。どんなモノを作るか、カナデが決めて、ナゴミが建築する。それから、エルのメジロで材料の場所を探して、うちのハムスターたちに運ばせる。ココアは……」


 うんうん、とうなずいていたら、ココアの頭の上にメンちゃんがいなかった。


 どこに行ったの、と聞く前に、ココアが何かに気付き、こう言った。


「ん、ちょっと待って」

「え? 何?」


 ココアが上空を指差す。


 すると、そこには真っ赤になったメンちゃんが浮いていた。ふよふよと、ゆっくり降りてくる。


「メンちゃんが真っ赤な警戒色になってる。誰か、こっちに邪魔しにきてるよ」

「邪魔!?」


 一体何のこと、とみんなで周囲を見回す。


 すると、遠くからドドドド、という轟音とともに、土煙を上げながら何かの集団がすごい速さでやってきた。


 いきなりのことに驚いていると、次第にそれは、白い生き物で、よく見るとモコモコとしたヒツジと巻き角のあるヤギの大群だと分かった。


「わああ! ヒ、ヒツジとヤギ!? こんなにたくさん、何でいるの!?」


 あっという間に、白いヒツジとヤギの大群がステージを埋め尽くす。


「メェ〜」


 あちこちで鳴き声を上げながら、白いヒツジとヤギの大群はわずかに生えているタンポポを勢いよく食べてしまったのだ。


 これには、七班の全員がなすすべなく見ていることしかできない。だって、ビーバーとメジロ、ハムスター、メンダコが、四年生の私たちと同じくらい背の高いヒツジやヤギたちを追い払えるわけもないのだから。


 そうこうしていると、桃名先生の声が聞こえてきた。


「みんな、注目。うっかり言い忘れたけど、今回から自動でお邪魔キャラクターが出てくることもあります。がんばって乗り越えよう、以上です!」


 遠く、ステージのどこかで声が上がった。「うっかりじゃないでしょ!」、「以上、じゃないよ!」、「先生、ひどい!」と。


 それはともかく、大量のヒツジとヤギに囲まれて、エルは悲鳴を上げ、腰の引けたシンを盾にしていた。


「お邪魔キャラ、それにしたって多すぎだよ!」

「ダメだ、これじゃ植物を植えても片っ端から食べられる!」

「そんなぁ! どうしよう、ナゴミ!」


 私の隣にはココアが、そしてナゴミがなぜか腕を組んで立っている。


 どちらも何やら落ち着いた様子で、特にヘルメットを被ったナゴミは自信満々だ。


「ふっ、慌てなくていいっすよ、ご主人。やつら、デカい草食べモコモコは水を渡れないっす」

「デカい草食べモコモコ……ヒツジとヤギだよね、それがどう関係するの?」

「ビーバーとして、ここはサツマイモでやる気を出して、モコモコのまわりを水で囲んで動けなくするっす! 具体的には、水でやつらを上手く追い詰めて、自分たちの作業スペースを確保するっす!」


 その提案は、とっても力強い。


 メンちゃんを被り直したココアが、それに賛成した。


「おお〜、いい案だねぇ。水路を作るってことでしょ? ナゴミちゃん、材料はいるの?」

「これは水源を見つけて掘るだけっすから、すぐできるっす!」


 シンを盾に、白いヒツジとヤギの間を縫ってやってきたエルも、今すぐどうにかしたい一心でなのか、ナゴミの案に手伝いを申し出た。


「なら、メジロで近くの湖か川を探すね! 海でもいい?」

「海は塩水なんでビーバー的にNGっす」

「そっか、分かった!」


 エルは【ウォッチ】で、メジロたちに指示を出す。


 メジロたちは空高く飛び、あちこちに散っていく。十秒も経たないうちに、メジロたちから、近くに湖があるというホログラムメッセージが送られてきた。


「ちょっと待って、地図作るから。位置が分かればいいよね?」

「いいっす!」


 どうやら、エルは前回の課題で、VRステージの地図の作り方をマスターしていたらしい。


 大して時間もかからず、エルはメジロたちから次々と送られてくる情報をまとめて、ホログラムのステージ地図を作り出した。


「よし、はいこれ、ナゴミ!」


 シュッとスワイプして、エルの【ウォッチ】からナゴミへステージの地図が送られる。


 それをナゴミのお手手がキャッチすると、どこからともなく丸太が現れ、ナゴミは抱き抱えてかじりはじめる。


「待ってました、作業開始っす! うおー!」


 一生懸命働くナゴミの作業中、私たちもぼうっとしていられない。


 シンは、エルと一緒に前回同様の材料集めを申し出てくれていた。


「エル、ハムスターたちに材料集めさせるから、おれも地図見ていい?」

「うん、早めにやっとこ。メジロたちに案内させるね」


 私はというと、【ウォッチ】のメモを取り出して、みんなに説明しようとする。


 そこへ、ココアが私へこそっと耳打ちしてきた。


「ところでさ、メンちゃんって警戒とかできるんだけど〜」

「う、うん」

「さっき、近くに一班の子がいて、何かアイテム使ったのをメンちゃんが見てたんだ〜。そのあとに、ヒツジとヤギがたくさん来たんだよ」

「え!?」

「このこと、先生に言っとくね〜。一班のこと、今度から気を付けないとダメっぽい」


 ココアは【ウォッチ】で、桃名先生へメッセージを送っていた。


 メンちゃんが撮影した——空中から撮ったものだ——誰かと『使い魔』のオオカミのような動物が並んでいる画像を、メッセージに添付して。


(どういうことだろう? 一班が何で?)


 気になる。だけど、今はどうしようもない。ココアが先生に知らせてくれたから、それ以上のことは私にはできない。


(ううん、それより今は課題! ナゴミ、がんばって!)


 私は視線を前へ向けようと、ナゴミを応援する。


 ナゴミの丸太ガジガジがどんどん進み、宙に浮かぶ制限時間が【01:19:45】になったころ、白いヒツジとヤギたちの足元に水が流れはじめた。


 慌てて白いヒツジとヤギたちは、水のないところへ逃げていく。そうして、ポツンと孤島になった場所に、すべての白いヒツジとヤギたちが追い込まれ、閉じ込められた。


 あとは、その周囲だけ水深をより深くして、ナゴミの作ったダムが水を調節すると、ほとんどの水は引いていった。


 これで元どおり、ちょっと湿気ったこげ茶色の土地が現れて、作業を始められる準備が整った。

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