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私の『使い魔』はビーバー!  作者: ルーシャオ


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第六話 悩み、モヤモヤ

 家に帰って、宿題が終わり、夕食もお風呂も済ませたあと、パジャマ姿の私はベッドに寝転がりながら【ウォッチ】で調べものをしていた。


 もちろん、VR学習課題の『緑地化』のことだ。


 どんな植物があればいいんだろう、とか、ビーバーの好きな木はヤナギの木とか、そういうことを調べていると、大変だけど楽しくなってきた。


 それに、【ウォッチ】の中から、ナゴミがアドバイスをしてくれる。


「ご主人、どんな緑いっぱいの土地にするにしても、水は確実に必要っす」

「そうだね。海水でも育つって有名なマングローブはあるけど、それより……真水、川の水を探さなきゃだね」

「一見、川や湖のない土地でも、掘れば水が出てくることもあるっすよ」

「なるほど。そういうときは井戸を掘るんだ……じゃあ、どんなステージでも、やれることは割とありそうだね」


 こんなふうに、ナゴミは私が知らないこと、気付いてなかったこともシレッと教えてくれて、とても助かる。


 ただ、いっぱい情報が集まってきたのはいいけど、多すぎて考えがまとまらなくなってきた。


「でも、『緑地化』って言っても、ただ単に植物だらけにすることじゃないんだね。誰がそこで暮らしていくか、お世話する人のこととか、場所が寒い北海道か、暑い沖縄かでもやることが全然違うみたいだし」


 うーん、考えることも多すぎる。全部考えるのはちょっと、いや、だいぶ苦労しそうだ。


 そこへ、ナゴミはフォローを入れてくれた。


「あんまし考えすぎちゃダメっすよ、ご主人」

「え?」

「ようするに『緑地化』っていうのは、そこに住む生き物にとっての、住みよい環境を作るためにやることっす。そうそう、ご主人はどんなところに住みたいっすか?」

「私は——」


 私は、どんなところに住みたいんだろう。


 そう考えてみると、今住んでいる家のこと、街のこと、近くの山のこと、川のこと……想像が少しずつふくらんでいく。


 それを、ひとつひとつ言葉にするのは、私にはまだ難しいところもあるけど、できることからやっていく。


「うーんと、今より広いお庭があって、今より広い自分の部屋があって、今より学校が近くて、そうだ、楽しい遊具がある公園があって、コンビニもほしいな」

「自分的にはそこに池とか森とかあれば最高っす」

「あはは、ビーバーと一緒に住むなら必要だね」


 私と、ビーバーのナゴミが一緒に住むなら——。


 住みよい環境に私がほしいものと、ナゴミがほしいものは違うかもしれない。


 コンビニと池は一緒に置けるのかな。公園ならどうだろう。森は、お庭に木があるだけじゃ足りないかな。ならもっとたくさんあれば——。


 住みよい環境って、誰のため?


 『緑地化』が住みよい環境にするためのことなら、私にだって住みよい環境にしなくちゃいけないんじゃない?


 イメージがふくらむと同時に、思考もあちこちに飛んでは戻って、また飛んでいく感覚が私の頭の中を満たす。


 そうして、私はピンと来た。


「あっ、そうか! そういうことなんだ!」


 慌てて起き上がった私は、学習机のノートとペンを取り出して、思いついたことを走り書きしはじめた。


 明日の課題のために、この湧いて出てくるアイデアを書き留めておかないと、忘れちゃう。


 この日はちょっと夜更かしして、ノートにまとめたことを【ウォッチ】のメモに記録して、やっと布団に入ったのは夜中の十一時を過ぎていた。






 次の日、お昼休みの終わりかけのときのことだ。


 この日、五時間目と六時間目がVR学習の時間だから、課題用のアイテムを買ってきたクラスメイトのみんなは売店からゾロゾロと帰ってきていた。


 私は何だか緊張してきて、とりあえずトイレに、と思って席を立った。


 そのとき、近くを通っていた誰かと肩がぶつかった。


「あいた!」


 体がよろけて、転ぶかと思った。でも、とっさにぶつかった相手が手を引っ張ってくれて、私は転ばずに済んだ。


「ごめん」

「ううん、私もぶつかってごめん」


 謝って、ぶつかった相手を見上げると、背の高い男の子だった。うん、こんな大柄な子にぶつかって、吹っ飛ばされなくてよかった。


 私が席から離れようとしていると、背の高い男の子が教室の友達の誰かに呼ばれていた。


「おいハルト、準備できたか?」

「今行く! それじゃ」


 そう言って、背の高い男の子、ハルトは通り過ぎていく。


 でも、ハルトはチラリと私を見て、こう言い残した。


「あと、次は負けねーから」


 聞き間違いかと思ったけど、ハルトは私を見ていた。私へ向けて言ったんだ、と気付いたころには、ハルトはすでに遠ざかっていた。 


(確か、あの子は火野ハルトくん、だっけ。負けないって、課題のことかな)


 それはそうと、トイレに行かなくちゃ。


 一番近くの女子トイレは空いていて、待たずに帰ってこられたけど、私の心の中は何となく、モヤモヤしていた。


(負けない、なんて、まるで私とハルトくんが勝負しているみたい)


 一体、何の勝負?


(課題は、別に私とハルトくんの勝負じゃない。なのに、何でだろう)


 モヤモヤは晴れないまま、五時間目の始まりのチャイムが鳴る。

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