第九話 『あの件』はどうなった?
そうして制限時間が終わり、VR学習の課題は、またしても私たち七班が『大変よくできました』をもらうことになった。
ただ、今回はちょっと、素直に喜べない。
放課後、こっそりココアがやってきて、『あの件』についてヒソヒソ話をした。
「カナデちゃん、先生からメッセージ来た。やっぱり一班が売店のアイテムで、私たちのところのお邪魔キャラクターを増やしてたんだって〜。でも、今回は一班のこと見逃してあげて、ってさ〜」
「え? そ、それはいいけど、他の班を邪魔したら減点って話は?」
「一班には先生が注意したから、次やったら本当に減点だよ〜。それに、変なアイテム使ったから、次の課題あたりまで『使い魔』が動けなくなるんだって」
そうなんだ、と私はそのときはイマイチよく分からなくて、生返事をしていた。
(一班が、どうして私たちのお邪魔キャラクターを増やしたりしたのかな……減点されるようなことなのに)
一班は、あの火野ハルトのいる班だ。負けねーから、と言っていたハルトは、何か知っていると思うけど、直接聞くのは気まずい。
どうにかしたいけど、どうすればいいんだろう。
あと、もう一つ、気がかりなことがあった。
(あれ? 変なアイテムって聞き覚えがあるような……あ、ひょっとして、売店の試作品!?)
そう、私が昼休みに行った売店で、店員のお姉さんの代わりに店番をしていた寧々家先生は、おすすめしてきていた謎の怪しいアイテムのことを試作品と言っていた。
ちょっと聞いてみよう、そう思い立ってナゴミを連れて売店へ向かう。
ところが、先に桃名先生が売店にいた。
しかも、桃名先生は相当怒っている様子で、店番をしている寧々家先生はタジタジだった。
「次はないですよ。そういうことは子どもたちの教育に悪いですから、絶対にやめてくださいね」
「分かったってば! それでさ、『超!AIコピーカプセル』の効果はバツグンだったと思うんだけど、どんな感じになったの? 教えてよ〜」
「はあ。反省していないと教頭先生に伝えておきますね」
「悪かったごめんなさい! 試作品は回収します!」
やっぱり、と私はため息をついた。
きっと、一班の誰かが寧々家先生の試作品アイテムを買って、それで変な効果が出ていたんだ。お邪魔キャラクターのヒツジとヤギがたくさん増える、なんて、一体全体何をすればそうなるんだろう。
なんだかんだで、寧々家先生は売店の中で試作品の撤去に追われ、桃名先生もまたため息をついていた。
「まったくもう、寧々家先生のせいだったんだ」
「あやしいモノは110番か、先生に報告するに限るっすね、ご主人」
ナゴミの言うとおりだ。今度から、あやしいものを見つけたら、すぐに桃名先生へ伝えよう。私はそう心に決めた。
そんなとき、桃名先生が、私とナゴミに気付いて声をかけてきた。
「ああ、葦原か。ごめんな、七班だけお邪魔キャラクターの数が多かったって聞いてる。でもまあ、寧々家先生の試作品アイテムのせいも大きいし、一班のことはひとまず許してやってくれ」
「は、はい。分かりました」
「助かる、今度埋め合わせはするよ。それにしても、妨害されても一番すごいの作ったのは七班だし、その『使い魔』のビーバーもすごいな。次もがんばって、すごいもの見せてくれよ」
桃名先生はそう言って、寧々家先生の監視に戻っていく。
先生に褒められたことが嬉しくて、私はつい、「ふへへっ」と笑ってしまった。
喜んでばかりはいられない。ハルトの「負けねーから」発言や、一班のこともある。
でも、課題で一番すごいの作って、褒められて、つい両手でナゴミのおなかをモニモニ触ってしまう。
「ちょっ、ご主人、腹を揉まないでくれっす!」
「ふへへへ」
「ご主人!? ねえちょっとこそばゆーいっす!」
ホログラムなのにこそばゆいらしく、ナゴミは必死になって私の手から逃げていく。
そのせいでナゴミはプリプリ不機嫌になってしまい、私はキャベツを積んで平謝りするしかなかったのだった。




