表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の『使い魔』はビーバー!  作者: ルーシャオ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/16

第十話 ジメジメのバシャバシャ

 本格的な夏になる前に、梅雨の時期がやってきた。


 毎年のことだけど、妙に暑くてジメジメして雨かくもりの日ばかりで、嫌になってくる。


 私の足元で床に腰を下ろしたナゴミが、キャベツをかじりながらうなだれていた。暑さのあまり、『ヘルメット』は脱いでいる。


「夏はイヤっすねぇ、ご主人。ビーバーは暑いの苦手っす」

「そうだね。教室はクーラーついてるけど、体育の授業は……夏は外でやりたくないな……」

「その気持ち、よく分かるっすよ。そういうときは水の中にドボーンと飛び込みたくなるっす!」

「あー、プールの授業が待ち遠しいよぉ」


 きっと、この時期の全小学生が待ち望む一番の授業は、体育のプール授業だろう。そう思える。


 でも、例外は何にでもある。


 メンちゃんを被ったココアがひょいとやってきて、こう言った。


「ココアは逆だね〜。泳げないもん」

「そういえばそうだったっけ。ココアちゃん、運動あんまり得意じゃないもんね」

「運動音痴〜。あれ? なんで音痴って言うんだろ?」

「そういえば……方向音痴って言うこともあるよね」


 言われると、気になってきた。私は【ウォッチ】でインターネットを開いて、『運動、音痴、方向』と単語を入力して検索してみる。


 すると、新聞社のニュースサイトのコラムで、『どうして運動や方向に音痴をつけるか』という文章を見つけた。私はそれを読んで、まとめてみる。


「えっとね、音痴って言葉をつけたら何でも、苦手、っていう意味になるんだって。だから運動にも、方向にもつけるようになったみたい」

「へぇ〜」

「ココアは動きたくないだけでしょ。運動神経悪いってことはないんだから、真面目にやればできるって」


 エルがココア——というよりメンちゃんをぐるっと避けて、やってきた。いつもの仲良し三人が集まって、おしゃべりする形だ。


 私もココアと同じで、運動は得意というほどじゃない。ビリにはならないけど、クラスの半分よりは下、くらいなものだ。だから、体育の授業で輝くような運動神経のいいクラスメイトたちとはそれほど縁がなかった。


 しかし、エル曰く、ひょんなことで縁があると分かった。


「クラスで一番運動ができるのって、あそこのハルトくんかな。たしか、ジュニアのサッカークラブに入ってるんだって聞いたことあるよ」


 ハルトくん。


 私はちょっとだけ、その名前に警戒してしまった。


 前回の課題のとき、私たち七班の妨害をした一班、そこにハルトはいる。それに、課題の直前にぶつかったときの「負けねーから」発言。


(私、ハルトくんに嫌われるようなことしたっけ? 全然話したこともなかったし、やっぱり四月のVR学習で一番よかったから? でも、そんなに嫌わなくたって……)


 人に嫌われるというのは、嫌われる側の私も嫌な気持ちになる。


 何とかしたい。けど、どうすればいいか分からない。本人に聞きにいくほうがいいのか、それともケンカになってしまうから何か別の方法を考えたほうがいいのか。


 こればかりは、ナゴミに聞いても解決しそうになかった。


 授業開始のチャイムが鳴って、桃名先生が扉に足をぶつけたのを誤魔化しながら、教室へ入ってくる。


「はいみんな、席についてください。授業をはじめるよ」


 ざわざわと騒がしかった教室は少しずつ静かになり、クラスメイト全員が着席する。


 桃名先生は、こほん、と大げさな咳払いをして、話しはじめた。


「えー、夏休みまであと一ヶ月と少しですが」

「気が早いよ、先生」

「そうだよ。それよりVR学習の次の課題ってまだー?」

「何だ、そんなに早くやりたいのか?」

「だっていろいろできるじゃん! すっごい楽しい!」

「私も! 今度は一番取るんだから!」


 誰もがやる気を見せていて、気合が入っている。


 VR学習は楽しい。それはこのクラスだけじゃなくて、他のクラスの子たちも同じで、プールくらい待ち遠しい授業だ。


(私たち七班が『ノイシュヴァンシュタイン城』や『ツリーハウス』を作って『大変よくできました』って一番褒められてるけど、他の班だってけっこうすごいもの作ってるし、やっぱりみんな楽しいんだろうなぁ)


 そう、最初こそ私たち七班が『ノイシュヴァンシュタイン城』を作ってクラスメイトの度肝を抜いたけど、前回から他の班もやり方が分かってきたのかレベルアップしてきた。


 たとえば、前回の課題では、二班はVR空間ステージに、南米アマゾンのジャングルを精密に再現した。


 三班は南極全体の『緑地化』に挑んだし、五班は動物園の柵を植物で作った完全『緑地化』動物園というものを完成させていた。どれもすごい発想だ。


 それを聞けば、私たちだって、うかうかしていられない。


「一学期のVR学習はあと二回あります。次の課題はさらにレベルアップして難しくなるけど、夏らしい課題になるから楽しみにしていてください」


 桃名先生はそれ以上、次の課題については何も言わなかった。


 ただ、夏らしい課題というと——やっぱり、海やプールだろう。


 でも、ちょっと待って。海、と聞くと何かが引っかかる。


(確か……ビーバーは、海水がダメなんじゃなかったっけ?)


 イヤな予感がする。


 もし次のVR学習のステージが、海だったらどうしよう。


 ここまでナゴミの力がなかったら、何も作れていない。もちろん、それはメジロたちやハムスターたち、メンダコのメンちゃんの誰が欠けてもできなかった。


(ひょっとすると、次の課題は私たち、大ピンチ!?)


 なるべく海水と関わりのない課題が来ますように——私はそう祈るほかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ