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私の『使い魔』はビーバー!  作者: ルーシャオ


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第十七話 協力プレイだ!

 さっそく、今日の放課後に七班のみんなが集まり、次の課題について話す。


 言いたいことはみんな同じで、ひとまず私が疑問を投げかけた。


「街の改善案、って……?」


 うーん、と全員がすぐには答えを出せず、悩む。


 最初のVR学習、四月の課題は『ここに、自由に何かを作ること』。


 二回目、五月の課題は『緑地化』。


 三回目、六月の課題は『海のアトラクションを作ること』。


 そして、四回目となる七月の課題は『自分の街の改善案を考えよう』。明らかに、三回目までの課題とは毛色が異なる。


 三回目までは、課題を聞けば何をすればいいかすぐに分かった。何をするか考えて、どうすればいいかを班のみんなと『使い魔』たちの力を借りてこなせばよかった。


 でも、次の課題は、いまいち何をすればいいのか分かりづらい。


 改善案と言われても、何を改善するのだろう。自分の住む街のことなら知っているけど、強い不満があるわけでもなく、ずっと住んでいるから気に入っているくらいだ。


 だから余計に、この課題でVR空間のステージに入って何をすればいいのか、全員がつかみかねていた。


 手のひらに乗ったオレンジ色の毛並みのハムスターを指先で撫でていたシンが、口火を切る。


「ひとまず、ありきたりでもいいから、街の悪いところを挙げてみるか」

「駅前が人多い、とか?」

「ゴミ捨てのマナーが悪い、とか〜?」

「それって、VR空間で何か作ったら改善できるの?」


 またしても、全員が押し黙ってしまった。


 住んでいる街に何か不満があったとしても、VR空間で何をすればよくなるのだろう。今までと違って、課題から読み取れることはあっても、そこからの道筋がさっぱりだ。


 メジロを頭に乗せたナゴミが、つま先立ちで机に顎を乗せていた。


「今回は難題っすねぇ。ビーバーは『森の建築家』なんで、街のことはさっぱりなんすよ」

「言われてみればそうだよな。建築に関しては任せられるけど、アイデアはおれたちが出さないといけないか」

「当たり前だけど考えるの大変よね。ココア、首傾げてるの? それ」


 エルがそう言って初めて気づいた。


 ココアの顔に、メンちゃんが引っついていた。どうやら頭の上からずり落ちたらしい。


 それでも、ココアはしゃべれた。


「ねえねえ、街って言われても、ココアの住んでるとこは山のふもとだし、エルちゃんは駅前のマンションでしょ〜? 市内でも全然場所違うし、どっちが自分の街?」


 相変わらず、ココアの視点は鋭い。それを聞いたエルは、腑に落ちたようにうなずく。


「そっか、全部まとめて考えるのもアリだけど、大変すぎるよね。市内って言ったって、けっこう広いし」

「それにご主人の家は一軒家っすけど、マンションはデカデカ建造物っすから住み心地が全然違うっす! 良いとか悪いじゃなくて方向性が違うっすよ!」

「そうだね〜、方向性が違うと解散しちゃうもんね〜」

「それは昔のアイドルとかバンドの話でしょ!」


 合っているようないないようなココアのボケに、すかさずツッコむエル。


 どうしてエルとココアは、昔のアイドルとかバンドが方向性の違いで解散していたと知っているのだろう。私は知らなかったけど——そんな疑問は、課題とは関係ないから胸にしまっておいた。


 そうやって話があらぬ方向へ行きかけたとき、不意に声をかけられた。


「なあ、葦原」


 最近、ちょっと聞き慣れてきた、ハルトの声だ。


 私は振り向き、キリッとしたウルフドッグを連れた背の高いハルトを見上げる。


「ハルトくん?」

「あのさ、その」


 モゴモゴ、とハルトは何か言いたげに、しかし言いづらそうにしている。


 そこへ、ハルトの後ろから来ていた女の子が顔を出し、ハルトを押しのけた。


「ハルトくん、ちょっとどいてね。私、桐谷ミオ。突然だけど、次の課題、うちの班と一緒にやらない?」


 そう言うと、ゾロゾロとハルトや一班の子たちが集まってくる。


 委員長を務める桐谷ミオ、おしゃべりで有名な小峰ナナ、それと『オタク』に憧れているらしい三沢タクミ。みんな、四年生になってから知り合ったクラスメイトで、七班全員がちょっと身構える。


 もちろん、身構える理由はそれだけじゃない。ハルトが私たちを妨害してきたことも、一班がハルトを止めなかったことも、全部が全部納得できているわけじゃないからだ。


 それなのになぜ、私たちと次の課題を一緒にやろうと提案してくるのだろう。そんなこと、当然の疑問だった。


 私は、ハルトにたずねてみる。


「その、何でうちと?」

「それは……」


 意外なことに、スポーツ万能でいつも自信満々なハルトが、今は何だか小さく見える。


 一班のナナが、助け舟を出した。


「単純に、君たちってすごいもの作るじゃん? だからぁ、一緒にやりたいなってハルトが推すんだもん。ね、ハルト?」

「ばっ、ナナ、うるさいぞ!」


 ハルトは照れて、ナナを後ろに下がらせようとする。ナナはというと、カピバラに乗ってヒョイと逃げて、からかっているようだ。


 ふと見ると、蚊帳の外で、メンちゃんを被り直したココアと、チーターを背負ったタクミが何やらヒソヒソ話をしていた。


 お互いの【ウォッチ】を見せ合って、深くうなずき合っている。


「……ココアちゃん、何してるの?」

「ちょっと待ってね。ふむふむ、ほーう」

「ココア殿、どうですかな?」

「いいでしょ〜。りょかーい」


 そう言って、ココアとタクミは握手を交わしていた。一体、何の話をしたのだろう。


 ココアが、みんなに大きな声でこう言った。


「ハルトくんはね〜、今まで迷惑かけたお詫びに、カナデちゃんの力になりたいんだってさ〜」


 途端に、ハルトの顔が赤くなる。それが言いたくて、でも言いづらくて、柄にもなくずっとモジモジしていたようだ。


 その気持ちは、分からなくもない。


(これまでと違って、ハルトくんは私たちと仲良くなりたいってことだよね。すっごく勇気を出して、そう考えてくれたんじゃないかな……一班のみんなも説得して、ここに来たんだろうし)


 だったら、ハルトのその勇気に応えたい。私は、シンとエル、ココアへ目を向ける。


 私はよくてもみんなはどうだろう、と少し心配していたけど、誰もハルトがしてきたこれまでのことを気にする様子はなかった。


「おれは別にいいけど、エルとカナデは? あとココアは何かそこで意気投合してるけど」

「ココアは問題なし〜」

「ふーん、まあ、カナデがいいって言うなら、私もいいよ」


 七班のみんなの意見は、同じだ。


 それなら、と私は、一班からの協力の申し出を快く受け入れた。


「うん、一緒にやろう!」

「ありがとう、カナデちゃん。ほら、ハルトくんも」

「お、おう。ありがとな」

「こちらこそ、一緒にがんばろうね」


 ココアたちを真似て、私もハルトへ手を差し出す。


 オズオズと、ハルトは同じように手を出してきて、結局最後はミオに強引に引っ張られ、私としっかり握手した。


 こうして、少なくとも、ハルトと仲良くなる一歩は踏み出せたと思う。


 一班のみんなも、きっとハルトのことを心配していただろうし、同じように私たち七班が仲良くしてくれるかどうかも不安だったはずだ。


 ちょっとずつでいい。一緒に課題に取り組んで、わだかまりを解いていこう。


 ナゴミが小さいお手手でグッと親指を立てて、よかったねとジェスチャーを送ってきていた。

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