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私の『使い魔』はビーバー!  作者: ルーシャオ


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第十六話 一学期最後のVR学習の課題

 今年の夏は暑くなるようだ——と、天気予報のお姉さんがちょっと悲しげに言っていた。


 その言葉は本当で、七月に入ってから毎日気温が三十五度を超えて、ほとんど雨は降っていないし、教室のクーラーは休むことなく働いている。


 そんな中、ナゴミはというと、教室から一歩も出なくなった。


「廊下は暑いっす。必要なら【ウォッチ】に入ってついていくんで、よろしくっす」


 AIでホログラムなのに、暑いから行かないと言ってのけるナゴミ。


 私はどうしても我慢できず、聞いてみた。


「AIも暑さを感じるの?」

「というより、『使い魔』にはそれぞれの動物の特性がステータスに組み込まれてるんすよ。ビーバーは夏の暑い日は動かない、みたいな、学校環境に合わせて得意不得意が最初から設定されてるっす」

「あ、そうなんだ。怠けてるわけじゃないんだね」

「当然っす! イーガービーバーっすよ、ご主人! 自分、働けるなら働きたいっす!」


 ナゴミは地団駄を踏んでいるようだけど、ひれのある両足をペタペタ動かして不器用なダンスを踊っているようにしか見えない。


 人間だって、暑い中無理に動くと熱中症になってしまう。そうならないために、いろいろと便利グッズが売っているんだけど……——。


「売店に何かないかなぁ」


 休み時間のトイレのついでに、私は売店へ足を延ばしてみることにした。


 一学期の初めに比べて、行列はあまり見かけなくなったけど、普段の勉強や学校生活以外でも課題や『使い魔』に関することでは何かとお世話になる。


 幸い、今日は空いていて、売店のお姉さんが温かく出迎えてくれた。


「いらっしゃい。今日は何がいる?」

「ええと、『使い魔』の暑さ対策グッズってありますか?」

「ああ、最近人気なんだよね。このおやつで対策できるよ、『りんごアイス』」

「り、『りんごアイス』!?」


 初耳のアイテム名だ。四分の一に切ったりんごのアイスが、売店のお姉さんの手で操作されて、売店のカウンター上にあるホログラム台に浮かぶ。


「暑さで動けなくなってる『使い魔』がかわいそうだから、みんなが暑さ対策できるアイテム作って、って寧々家先生に頼んだのよ」


 まさしく、それこそ私が今ほしかったものだった。


 すぐさま購入して、私はウキウキ早足で教室へ戻る。


「ナゴミ、いいものがあったよ! 『りんごアイス』だって!」


 机の下でだらけて床に寝そべっていたナゴミへ、私は【ウォッチ】から素早くスワイプして投げてよこす。


 上手くナゴミの口へ『りんごアイス』が当たり、吸い込まれるようにシャクシャクいい音を立てて、ナゴミは食べてしまった。


 すると、ナゴミは飛び起きて、短い両腕で勢いよくバンザイした。


「おお〜……力が湧いてくるっすよ!」

「そんな効果があるの!?」

「ゲームで言うと、バッドステータスが回復した感じっす! ついでに処理能力もちょっぴり上がった気がするっす!」


 力こぶを見せているみたいだけど、ナゴミの短くて毛深いお手手では盛り上がりが分かりづらい。


 それでも元気になってくれたなら、買ってきた甲斐があるというものだ。私は大満足、ナゴミは上機嫌、それでいい。


 やがて次の授業始まりのチャイムが鳴り、桃名先生が教室へ入ってくる。クラスメイトのみんなが自分の席に着くまでの間に、桃名先生は話しはじめた。


「はいはい、授業を始めるよ。先に来週の課題について、ちょっと話しておきます」


 ——来た!


 教室の大半の子が、目を輝かせる瞬間だ。


 四月から三回もこなせば、みんなVR学習の要領が分かってきた。でも、来週が一学期最後のVR学習の時間で、その次は夏休みを挟んでずっと先になる。


 となると、誰もが今度こそと、あるいは楽しみにして、VR学習の時間を待ちわびている。


 みんなの視線を集めて、桃名先生は本題を切り出す。


「今学期最後のVR学習の時間ですが、ちょっと難しい課題です。今回に限って、他の班と協力してもOKです」

「そうなんだ、一緒にやろうぜ!」

「でも、それじゃ友達多いやつが有利じゃん」

「一応、友達同士でじゃなくて、班同士でなら協力していいよ。ただし、三つ以上の班と一緒にやるのはナシです。二つの班の協力関係はいいし、もちろん今までどおり一つの班だけでやってもいい。協力関係については、課題の前までに先生へ相談してください。ステージの都合上、協力する班同士で同じステージに配置するようにしなくちゃいけないからね」


 どうやら、次の課題は、今までにはなかった班同士の協力ができる。


 逆に言えば、他の班から妨害されることもないみたいだ。多分、班ごとに違うステージで課題に取り組む形で、協力するなら同じステージに入れるのだろう。


(協力してもいいってことは、課題がそれだけ大規模なのかも? 海の上もけっこう広かったけど、それ以上ってこと? ナゴミ、大丈夫かな)


 前回の課題では、AIとしての処理能力の限界に達してしまい、ナゴミは倒れてしまった。


 今は配布されたパッチや七班の他の『使い魔』との処理分担で、どうにかなるだろうということになったけど、ナゴミのためを思えばもうあまり巨大建築物を作ったりはできそうにない。


 果たして、『りんごアイス』も含めて、ナゴミは十分に働けるようになっているのか、私はまだ心配していた。


「さて、課題です。今回の課題は——『自分の街の改善案を考えよう』、言い換えるなら『住む街をよくしよう』です」


 それを聞いて、なぜか教室がしんと静まりかえる。


 桃名先生もみんなの反応が予想外だったようで、「あれ? 何か悪いこと言った?」と不安そうになっていた。


 席替えで隣の席になったエルが、私へ耳打ちしてくる。


「ねえ、なんか……課題、今までと違うよね?」

「うん、これはちょっと、みんなで話し合わないといけないかも」


 エルは机のチャットを開いて、シンとココアへ「放課後集合」と短くメッセージを送る。二人からは、すぐにOKのスタンプが返ってきた。

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