第30話 バロックの音楽家 zwei
男はなぜ、カールを...?
男「皆さん!!ご清聴ありがとうございました!!」
男「それではまた!!」
男は、800人規模の演奏会で、盛大な拍手を得た。
歓声を得た。地位を得た。金を得た。
30もの天才的な楽曲は多くの民に評価された。
かつて、男は彼の演奏が好きだった。
誰よりも、彼を評価していた。
彼の演奏を初めて聴いた時、顔が熱くなった。
20人程度の小規模な演奏会が、男は好きだった。
そして、音楽家を目指した。
最初は大変だった。
どれだけ頭を捻ろうと、名曲は生まれなかった。
ただ、沢山勉強し、沢山曲を作って、やっと演奏会には
十数名程の客を集めることが出来た。
そんなある年だった。
彼が音楽から姿を消した。
代わりに、彼の息子、カールとか言うガキが名を挙げた。
とても残念だった。
カールの音楽は美しかった。
演奏には、どこか彼に似たところがあった。
嫌いだった。
大嫌いだった。
瞳に満ちた自信が。
我こそがという活気が。
美しく、彼に似たあの音楽が。
大嫌いだった。
新しく曲が出来た。
自信作だ。
不気味だが、どこか綺麗な。
そんな音楽。
カールの演奏を聴きに行った。
優越感に浸りたかった。
自分の曲の方が素晴らしいのだと。
そう思いたかった。
なんで...
アイツが演奏した音楽は、新曲とそっくりだった。
盗作?ちがう。
アイツの方が作るのが早かった。
アイツが先だった。
あんなやつに...
あんなやつに...
...あんなやつに...
なんで...
カール「そして、ワタシは悪霊となった。」
カール「恨み、怒り、憂い。」
カール「悪霊になるための条件は、充分すぎるほどに揃っていたからねェ。」
カール「数百年の間。ワタシは悪霊として力をつけた。」
カール「勿論、理由はわかるだろう?」
カール「しかしあの男は、ケインはもう、消滅しちまったんだッ。好き勝手人の音楽で評価され、未練も無かったんだろうねェ。」
カールは拳を握った。
怒っているのだろうか。
複雑な心境。
今の彼の感情は、彼にしかわからないと思う。
カールは再び笑顔を作った。
カール「そんな中、悪霊であったワタシは、無意識のうちに人に迷惑をかけていたのだろゥ。」
カール「まさか、日本にその『依頼』が行くとは思わなかったがねッ。」
依頼...
カール「まぁそんなわけでボコボコにされてしまったと言うわけさッ!」
カール「ただ、祓われなかった。」
カール「優しかった。救われたんだ、ワタシは、君のお祖母さん...」
ーーー緑さんにーーー
君、ホントすごいね。
カールは目が覚めた。
深い、深い眠りについていた気分だった。
カールは、再び光を見た。
それは、眩しくはなかった。
ただただ、暖かかった。
カールは、自分の名前を思い出した。
カールの目は彼女をはっきり捉えることが出来なかった。
カールは泣いた。
たった一言で。
カールは泣いた。
真実を知ってもらえたことに。
心の底から嬉しかった。
我が子のように大切だった曲を
自分の演奏会に来ていた、曲と同じくらい大切なお客に、曲を盗られ、搾取された。
それを理解してくれた。
それが、心の底から嬉しかった。
カール「君は、お祖母さんに似たんだねェ。」
カール「とッても優しい。」
「...そう、ですか...」
えへへっ//
ヤバいにやけが止まんない。
なんだろう。
とてつもなく嬉しい。
私が、祖母と似ている。
あぁ、嬉しい。
いやぁ、カールと緑さんの絡みもそのうち書きますね。




