表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
情報屋shrineの人助け  作者: 目黄葉
第二章
7/10

視線は誰に向く?


「それで?

 昨日ぶりで、しかもこんな早い時間に、僕を呼び出したってことは何か進展があったんですよね?」

 月麦と鶯が接触した次の日の早朝、咲真は提監(ていかん)に呼び出されていた。


「えぇ、昨日、月麦がとある取引現場を潰したのですが、そこに(sai)の幹部であり、怪盗である、鶯が現れたのです。

 とりあえず(まく)したてるので、受け入れてください」

「はい。慣れましたし。津城さんもう捲し立ててるので、続きをどうぞ」

 絆音は捲し立てられることに慣れた、半ば諦めている咲真に昨夜のことを話した。


「……というわけで三月十三日の深夜、沢田邸に、鶯は現れます」


「な、るほど。三月十三日というと、今日が六日なので、丁度、一週間後ですか」

「はい」


「交久瀬さんは?今学校ですか?」

 月麦のいないところではちゃんとさん付けをする咲真。

 それを見て絆音は、素直じゃないなと思いながら咲真の言葉に答えた。


「昨夜も、夜遅くまで仕事をさせてしまったのに、ピンピンして学校行ってます」

「へ、へぇ。元気ですね」

「えぇ。嬉しいです」


「白木さんは?」

「白木さんはですね…昨日の夜の後始末やら何やらでほぼ徹夜みたいな感じだったので今仮眠室にいます。そうですね、今が七時半なので八時にもなれば起きてくるかと」


「津城さん、寝ました?」

 申し訳なさそうに聞く咲真に、絆音は何でもないことのようにこう答えた。

「私が徹夜を嫌いなこと皆さんわかっているので、ひっかり、ぐっすり眠らせていただきました」


「それはよかったです。

 あ、話を逸らしてしまいすみません。それでは僕は一週間後、どのような動きをすればいいんですか?」


「私がある場所に配置するか、呼び出します。そして合図を出すので月麦を潜入させてください」

「わかりました……………あれ?それだけですか?」


「はい。主にそれのみとなります。もしかすると月麦にハプニングが起きた場合、手伝っていただくこともあります」

「了解です」


「それと、一応、鶯の動画を見てください」

「はい」

 それを見終わったのち、咲真は顔を少し赤くさせ勢いよく絆音に聞いた。

「なんでさっき、口説いてるって言わなかったんですか?!」

 意外と初心(うぶ)らしい。


「別に、言うことでもないかと、」

「言うことです!なんか!交久瀬さんの見ちゃいけないもの見てしまった気分です……じゃあ、口説いてるのを念頭に入れてもう一回見ても?」


「もちろん、いいですよ」


 そしてもう一回、動画を見終わった後絆音が咲真の顔を見ると、目を細めていた。

「?何か気になることでもありましたか?」

「あ、いえ。厚底を履いているにしても背が高めな女性だな〜っと思ったくらいで」


「なるほど。

…………………実はできる限り調べてはいたのですが、全て片手間でしたのでまだ(sai)についてそれほど詳しくないのです。

 白木さんから依頼を受けたのも二ヶ月ほど前で割と最近ですし……」


「それでよく、精霊樹(ドライアド)髪飾り(サークレット)が狙われていることわかりましたね……」

 咲真が顔を引きつらせながら言う。


「一応、情報屋shrineなので」

 絆音は(かす)かながら声に自慢を含ませ言った。


「まあ、そうですよね。

……………………それで、その、あの」

 咲真が何か言い淀んでいるため絆音は思いつくことで一番最初のものを言った。

「あなたの復讐のことですか?」

「っはい」

 どうやら図星らしい。


「それは、順序よくいけばこの協力が終わりひと段落したときに連絡をしますので、そこでお話しましょうか」

「はい」

「それでは早朝にお呼び立てをしてしまい申し訳ありませんでした」


「いいえ、大丈夫です。それでは、」

 絆音は咲真の暗い顔に気づかないふりをして咲真が提監を出るのを待った。


 そして咲真が遠ざかったことを確認し、

「さて、根回しするか」

 と呟いた。


  *  *  *


 次の日、咲真はいつも通り警視庁捜査一課室へと向かった。


「おはようございます」

「あっ、おはよー!咲真くん」

 一番最初に返してくれたのは先輩である佐々木だった。

「咲真が来たか。よし、それじゃ移動するぞ」


「?どこへ、ですか?」

「捜査三課だ。呼び出された」

「え!?なんでですか?水本さん何かしました?」

 少し大袈裟に佐々木が聞く。

「何としてないし知らん。だからそれを聞きに行くぞ」

「「はい!」」


 咲真と、佐々木は元気よく返事をし、席を立った水本の後ろを歩いた。


「ここだな。うーし!行くか!」

「「はい」」


「捜査一課の水本です。捜査三課の塚田さんはいらっしゃいますか?」


「は〜い。ここにいます!ちょっと本当にちょっとだけなんで待ってくださいね〜」

 少し間延びした声が返ってきたので言われた通り待っていると。


「よし!、すみませ〜ん、お待たせしてしまって、」

 と言って三十代ぐらいの物腰が柔らかそうな男性が現れた。


「水本さん、ですよね?」

「はい。それでこっちの二人が、」

 水本が佐々木と咲真のことをチラりと見た。

「佐々木葵です!」

「谷川咲真です!」



 余談であるが、水本は咲真の苗字が谷川であることはもちろんわかっている。それでも、谷川と呼ばないのは咲真に苗字を呼んでほしくない、と頼み込んだからなのだ。

 そのため咲真がさらりとフルネームを言っても何も反応はしない。



「佐々木さんに、谷川さんね〜」

「それで?なぜ捜査三課(あなたがた)捜査一課(われわれ)を呼び出したのですか?」


「それは、中に入って話しましょう?」

「そうですね」


 三人は塚田に会議室に案内され、佐々木、水本、咲真の順で座ったところを確認し、お茶を出したところで塚田が対面に座り口を、開く。


「私の名前は塚田滋(つかだしげる)と申します。

 この(たび)捜査協力のための捜査一課(あなたがた)への説明係に選ばれまして。

 それでは説明しますね」


 塚田の纏う空気が、変わった。その姿は物腰柔らかな男性の姿は一切なく、信念ある一人の、警察官だった。


「お願いします」

 水本はしゃんと背を伸ばして答える。


「鶯という怪盗を名乗るヤツから“三月十三日沢田邸にて精霊樹(ドライアド)髪飾り(サークレット)を盗むという旨の予告状が来ましてね」


 と言い、塚田は懐から少し大きめなポリ袋に入った予告状を出した。


「その鶯とやらは捜査三課(あなたがた)に直接、この予告状を送りつけて来た、のですか?」

「いえ、これは稲荷…おっと、失礼。情報屋:shrineからの情報です」


 絆音の名前が出て来たが咲真は動じず真剣に話を聞いている。ように見えるが、実際は、


(えぇ〜、津城さん、一日でこんなに根回ししてる。やっぱ情報屋:shrineてすごいんだなあ)


 と、絆音の根回しの速さに感心していた。


「ですが鶯はおそらく情報屋が警察にこのことを流すことを理解していると思われますし、予告状に書かれていた沢田邸にも送りつけていたようで、昨日通報がありました」


「なるほど、それで捜査一課(われわれ)は何をすればよろしいのでしょうか?」


「情報屋:shrineからの情報ではこの鶯は宝石を盗むためであればどんなことでもするそうなのです」

「ほう?」

 水本が目を細め聞き返す。


「それに、実を言うと、」

 深刻な表情で水本達を見据える。


「捜査三課人員が足りてなくてですね〜」

 塚田、が物腰柔らかそうな男性に、戻った。


「は?いや、失礼。申し訳ありません」

 拍子抜けしたのか水本は思わず素で答えてしまった。

「えぇ〜別にいいですよ?あんなに雰囲気出してたくせに人員足りないなんてね〜。

 でも今闇バイトでの空き巣とか、詐欺とか多いじゃないですか?」


「はい。ニュースよく聞きます」

 佐々木が口を開く。


「ですよね〜。だ•か•ら!捜査一課の水本班に協力してもらえないでしょうか??」

 ぐいっ!という効果音がつきそうなほど塚田は身を乗り出す。


「わかりました。が、なぜうちの班に?他の班でも良かったのでは?」


「それは〜、これまた情報屋:shrineが、この班がいいのでは?みたいなこと書いてたからなんですよね」

「な、るほど、それでは三月十三日沢田邸にて、怪盗を名乗る鶯を捕まえるための作戦をお聞きしたいのですが」


「構いませんけど〜、できれば水本さん()()残ってもらっても〜いいですか?」

 物腰柔らかそうな瞳に有無を言わせぬ圧を感じる。


「わかりました」


「それでは、失礼いたします」

「失礼いたします!」

 咲真は佐々木に続き言葉を放ったのち二人揃って部屋を出た。


 それを確認し、塚田は水本との話を進める。


「やはり、あまり人員はさけないですか?」

「はい、難しいですね〜。そもそも漫画などに触発されて宝石を狙って予告状だけだす、所謂(いわゆる)イタズラもよくあるんですよ〜」


「イタズラ、アレには苦労しますよね。警察をオモチャみたいに遊ぶヤツとか、普通にいますし、」

「あ、タメで大丈夫ですよ〜。年齢も上で先輩なんで」


「……………………わかった。んじゃあ遠慮なく、」


「イタズラ〜やめてほしいですよね〜。

 ま!雑談はさておき、作戦のお話です。

 まず…………」


 話し合いが進められていく一方で咲真達はというと。


「今この時代に怪盗なんているんだね〜」

「はい。驚きました」


 わきあいあいと話をしていた。


「というかさ、あの塚田って人、水本さんを見てるようだったけど、多分咲真くんのこと見てた」

 咲真は佐々木の言葉をいつもの冗談だと思い、笑って返そうとするが、佐々木は真剣な顔をしていた。

「え?」

 そのため、咲真は声を漏らすことしかできなかった。

「目、合わなかった?」

「たしかに、目は結構合いましたね」

 咲真は先ほどのことを思い出し言う。


「でしょ?

 私は口を開けた時でさえ、あまり目が合わなかったし、もしかして、私が気に入らないのか、咲真くんが気になるか、の二択だと思うんだけど……」


「佐々木先輩何かしたんですか?というか塚田さんと初対面ですよね?」


「なんもしてなーい、はず。

 うん、初対面。

 だから、あの目線は咲真くんが気になるから無意識で見ちゃってた!だと思うんだけどね〜」


「は、はあ」

「それじゃ、各自仕事に戻ろうか!」

「はい!」


  *  *  *


 その日の深夜、資料室にて。


「………………………やっぱり、糸繰先輩と佐々木先輩の子供、だよね。これは、因果か、それとも、運命か……本当に世の中ってのは狭いよね〜」


 塚田はパソコンを閉じ、資料室の電気も消した暗闇の中で、


「ほんっとうに、因果とか運命ってのは残酷だよ」


 と忌々しげに呟いた。




























 第七話読んでいただきありがとうございます!

 塚田の言葉の真意とは!

 次のお話もお楽しみにしていただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ