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情報屋shrineの人助け  作者: 目黄葉
第一章
4/10

清廉潔白な組織


「えっと、安全なところって言われても、取引先ってどこなんですか?」

 ごもっともな質問である。

「行けばわかりますよ。では、行きましょうか」


 そこから二人は警視庁の奥へと進んだ。咲真は外に出ると思っていたからか困惑しているようだ。

 いや、絆音に対しての不満も混じっているか。


「ここですよ」

 と絆音が止まったところはもちろん朝、咲真を呼んでほしい、と頼んだところであった。


「って!まだ警視庁内じゃないですか!?」

 廊下の雰囲気が静かなため、あまり大きくはなかったが咲真は驚きの声を出した。

「?はい、そうですけど、言っていた通り安全でしょう?」


「……………………はい」

 咲真は絆音に対して困惑や混乱をするのは無駄だということを理解した。


「入りますよ」

 絆音はノックをして失礼しますと言って扉を開けた。

 そこには……


「うおっ!待って!今ちょうどボス戦なの!!うあああ!HPがヤバい!ほんっと今ヤバいから、ちょっ後にして!」


 威厳のかけらもない公安(白木)の姿があった。


 それを静かに見て絆音は開けていた扉をゆっくりと閉めた。

「………申し訳ありません。お取り込み中のようなので待ちましょうか」

「は、はい」


 そこから数分して向こうから扉が開いた。

「待たせてすまんな。津城、入ってくれ。ん?そっちは」

「白木さん、とりあえず入れてください」

 絆音に睨まれるような目を向けられ白木はすぐに小さく“はい”と返事をした。………これではどちらの立場が上かわからない。


 その部屋は普通の会社のように部長らへんの立場にある人の机が横になっておりその机にくっつくようにして縦になっている。

 所謂(いわゆる)対向型のレイアウトと呼ばれるもので並べてあったが、机は全部で三つしかなく、それの部長らへんの立場にある人、つまり白木と、もう一つの机しか使われていないように見える。


 絆音と咲真の二人は先ほど説明した机ではなく、白木が先ほどまでゲームをしていた来客用のソファーに座った。


「いつも通り、お茶でよかったか?」

「えぇ」

 少しして白木はお茶を三人分持ってきた。


「それで?君の名前は?俺は白木聡(しらきさとし)。ここの、一応責任者だ。」

「ぼ、僕は、谷川咲真と言います。捜査一課に所属しております」

 咲真は緊張で少し体が強張っている。

 その緊張を汲み取ってか、白木は少し笑ってこう言った。

「そんなに緊張しなくていい。それで津城?なんでここに連れてきた?」


「少々私の依頼を手伝ってもらおうと思って連れてきたんですけど」

「はあああああぁぁぁぁ!?」

 絆音の言葉に白木は立ち上がって叫んだ。


 白木の声に驚いて咲真は肩が跳ねたが、絆音は予想していたのかいつも通りであった。


「うん、よし。叫んで落ち着いた。谷川くん、驚かせてごめんね。そんで、協力ね。何やらすんだよ」

「やらすという言葉は少し、適切ではないかと。コンプライアンスがありますので」


「あー。そっかぁ。そうだよなぁ。んじゃ何をしてもらうの?」

「……まあ、それで問題はないと思いますが」


 一方、咲真は“あんたらなんで、今ここでコンプライアンス気にすんだよ。別にいいだろ。多分。ってか僕何すんの?早く話進めてよ“という風に不満タラタラであった。


「今、私が公安(あなた)から受けている依頼ありますよね?」

「あぁ。まさか、それに協力してもらうつもりなのか?」

「ええ。……咲真さん。私にあなたの警視庁捜査一課水本班所属という立場を少々、利用させてほしいのです」

「立場?」

 

 咲真は全くわかっていないようだが白木は理解したようで小さくため息をつきこう言った。

「なるほどな。そういうことなら俺の名前で協力を許可しよう。咲…いや、谷川くんは協力することに合意しているのか?

 どーせ津城のやつ、谷川くんのこと半ば脅して連れてきたんだろ?」

「……否定は、しません」

 白木は“やっぱり“という視線を向かいに座る絆音に向けた。


「ま、まあ。警察からの依頼ということなら警察官として協力したいですし、僕にできることを言ってください」


 今度は絆音が“ほら“と言わんばかりの視線を白木に向けた。……なんだかんだ似ている二人であった。


「話はまとまったわけだけど、咲…谷川くんは何か聞きたいこととかある?依頼の詳細以外で」


「えっと、この部署について、って聞いてもいいもの、ですか?」

「………うーん。ま!いっか!津城お前どうせ言うもんな。それだったら俺が言うのがいい、か」

「ご明察」

 絆音は大きく首を上下に動かした。

 それはそれで問題なのだが。


「この部署は、警視庁公安部提携組合(ていけいくみあい)監視係、略して提監(ていかん)

 ま、公安部でさえ、こんな部署知ってるやつの方が少ないから略して呼ばれることなんてないんだがな」


「あの……本当に聞いといてなんですけど。重要な情報(そんなこと)、僕なんかに言ってよかったんですか?公安でもないですよ」

「協力してもらうんだからいいだろ、別に。俺が言うんだ。別にバレたとてよ、とて」

 提監ほんとにこの人が上司でいいのか?と絆音は疑問に思ったが、一応今この部署はそれで成り立っているため口には出さない。いや、成り立って、?うん、この話はまた今度とさせていただこう。


「とてって。…というか提携組合?どういうことですか?すみません。もちろん守秘義務ありますよね?この質問は忘れてくださ」

 白木はこの質問を待ってましたとばかりに咲真の言葉に被せて言った。


「谷川咲真くん。国家国民を、()()()()()()で守れると思うか?」

 その白木には、先ほどのかる〜い感じは微塵もない“公安“の風格があった。


「思いません。そのために公安(ここ)があるのでしょう?」

 咲真は即答。


 咲真の答えに白木は満足そうに微笑み白木は言った。

「その通りだ。

 国家国民を守るためには、清廉潔白な組織というのは諦めないといけない。清廉潔白で守れないより、少しはグレーで守れるの方がいいに決まってるよな?

 つまり、その少しグレーなところがこの部署ってわけだ」

「なる、ほど」


「んじゃ、俺は仕事があるから協力のことやらは津城の家でも行って説明して〜」

「家で説明するのは構いませんが、仕事ってゲーム、じゃないですよね?」

 絆音の一言に白木の肩が跳ねた。

「…………………………んなわけないでしょ」

「とっとと仕事してください」

 絆音の一言で白木はガクッと項垂れた。


「というか、まだ昼前なので僕、まだ結構仕事が残っているんですが、どうすれば?」

「「あ」」

 絆音と白木は二人揃って間抜けな声を出した。


 絆音は少し悩むそぶりをしたあとこう言った。

「今日、何時ぐらいに仕事、終わりそうですか?」

「え?そんなのわかりませんよ。事件が起きなければおそらく定時であがれますけど」

「何も起きなければ、定時で上がってここに来てください。先輩などに公安に協力することはくれぐれも内密に」

「はい。もちろん」


  *  *  *


 咲真はようやく解放され(なににとは言わないが)、捜査一課に戻った。

「ふぅ」


「それで?どうだったの?」

「どうしたもこうしたもありませんよ。普通にアンケートみたいなものでした」

 絆音に「何か聞いてくる人がいたら、なんか、アンケートとか言って誤魔化してください」とテキトーに言われたため咲真はそう誤魔化した。


 席に戻った咲真に話しかけたのは、グレーのスーツに身を包み、肩より長い髪を素っ気なく一つにまとめた、少しタレ目な女性の先輩だった。

 名は、佐々木葵。咲真のことを何かと面倒を見てくれる先輩だ。

 もちろん、南家の事件にもいたのだが周辺の防犯カメラなどの確認に奔走していたため絆音とは会っていない。


「アンケート?やっぱ谷川くんなんかしちゃったんじゃない?」

 佐々木はイタズラっぽく笑う。

「先輩、苗字は慣れていないから名前で読んでくださいって言っているじゃないですか………からかう時だけ苗字で呼ぶのやめてくださいよ」


「だって、みんなさくま、さくまって呼びすぎて、苗字忘れ気味じゃん?」

「はい。むしろその方がいいかな〜って。ちょっと狙ってやってるところもあるんで。そのくらい本当に苗字に慣れてなくて」

「せめて、からかう時のは許してほしいけどね」

 目を伏せる咲真に対し口を尖らせて言う佐々木。


「おい!お前ら二人!口じゃなく手を動かせ!」

「「はい!」」

 二人は仲良く水本に叱られた。


 時は進み、定時。

 平和なことに、大きな事件が起きるでもなく、咲真は定時を迎えることができた。

「それでは失礼致します。お疲れ様でした」

「おう。お疲れ」

「それじゃあまたね」

 水本と佐々木の言葉を聞き捜査一課の扉を閉めた。


(めんどい。どうしよう。行きたくない)


 そんなことを考えながら足は公安に向いている。そりゃあ咲真にとっては脅される形で連れていかれたのだ。

 面倒臭くても行かないわけにはいかない。


 咲真の足は憂鬱だった。最初は行きたくないという感情もあったのだろうが、今は別の意味で憂鬱だった。


(なんで僕は道を覚えられないんだ!方向音痴なことぐらいわかっていたのに!こんなことならどっちかと連絡先を交換しておくんだった!)


 端的に言うと、咲真は迷った。


 咲真は絶対に一回だけしか通ったことがない道を覚えることができない。

 咲真が道を覚えられるのは三回目かそれ以上でないと覚えられないくらい、咲真は壊滅的に方向音痴だった。

 この性質は咲真の()()によるものが大きい。


 先ほども来た提監の扉を探し続けること三十分、咲真はもう、訳がわからなくなってほぼ諦めていた。

 すると、咲真のスマートフォンから着信音がした。

(誰?)

 表示された番号が誰のものかはわからなかったが咲真は電話に応じた。


「もしもし」

〈もしもし。津城です。谷川咲真さんですか?〉

「え!?、あ、はい」

 電話の相手は絆音だった。

 そのことに驚き、少し大きな声を出してしまった。

 だがすぐに彼女が情報屋shrineということを思い出し、咲真は冷静になった。


〈何か事件でも起こりました?それともサボるおつもりで?〉

「違います。ちゃんと定時で上がって向かってます」

〈それではなぜ、定時から三十分も経っているのですか?〉

 さながら事情聴取されている容疑者だが、次の咲真の言葉により、事情聴取は終わる。


「それは、その、僕が……方向音痴なだけです」


 電話の相手は四、五秒黙った。そしていつも通りの声で言葉を発した。


〈すみません。それは、その、なんと言ったらいいか〉

「ごめんなさいねぇ!方向音痴で!」

〈今どこにいるんですか?〉


「とりあえず、上に行こうと思って今ひたすら階段登ってるんですけど…えっと今は十階ですね」

〈それでは十四階まで来てください。白木さんを階段の方へ向かわせますので〉

 絆音の電話の奥から“えぇ!なんで俺が!聞いてない!まぁ、行くけどね!”という声が聞こえた気もするが咲真は気にせず返事をした。


「…はい、わかりました」


 咲真の足は行きたくないという理由で憂鬱になった。


















 第四話読んでいただきありがとうございます!あまり展開が無く申し訳ないのですが次話も読んでいただけると嬉しいです。

 


※ 対向型のレイアウトがわからなかった方は申し訳ありません。調べていただけるとどういう形か出てきますのでお手数をおかけしますが気になる方は調べてみてください。


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