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情報屋shrineの人助け  作者: 目黄葉
第一章
3/10

お勧めしないこと


 南家で事件か起きたときから少し暖かくなった。だが寒い日は寒い。なので寝ることが好きな絆音が布団にくるまるのも必然だった。


「姉さん!起きて!あたしもう学校いくよ?」

「いっ…てらっしゃ〜い」

 絆音は寝ぼけている。


「姉さん…今日は出かけるから起こしてって言ってなかったっけ?」

「あ」

 絆音はそうだった、とばかりに声を漏らした。

「だから!早く起きる!」


 絆音のことを姉さんと呼ぶ女の子…顔がとても大人っぽいため高校の制服があまり似合っていない子に無慈悲にも布団をめくられ、強制的に布団から出された。

「寒い」


「ごめんって。それじゃご飯とかは用意してるから温めてよね」

「わかってる。ありがとう」

「どういたしまして!んじゃいってきまーす」

「いってらっしゃい」

 その女の子は家から出ていった。


「さて、準備して、出かけるか」

 それを見送ったのち絆音はそう呟いた。


  *  *  *


 絆音が向かったのは警視庁だった。そしてその中の絆音にとって最も馴染みのある部署に裏口から入って向かった。


「こんにちは。白木さん」

「うおっ!なんだ…津城かよ」


 絆音は足音をあまり出して歩く方ではないため白木は驚くだろう。なぜならお化けに話しかけられるようなものだからだ。


「少々頼みたいことがありまして」

「お前が頼みたいこと?……あ!また今の依頼の期限を先延ばしにしろとか言うんじゃないだろうな?!」

「……………………そんなわけ、ないじゃないですか」

 絆音はたっぷり間を空けて目をそらしながら言った。そういう魂胆がないといえば嘘になる。

 つまり、何が言いたいかというと…絆音は表情が変わらないにも関わらず何かを誤魔化すのが苦手だということだ。

 そして南家事件の時の電話から見てわかるようにそんな苦手(こと)が白木にバレていないはずはない。


「おい、じゃあ今の間はなんだ?間は?」

 絆音は手を一度叩き、話を強制的に断ち切った。

「こんな冗談を言いあってる場合ではありません。

 本題に入りますと、公安が呼んだとバレないように、一人の警官を呼び出してほしいのです」

 白木にほんとに冗談か?という疑いの目を向けられながら絆音は必死でそれに気づかないフリをする。


「ほう?その警官を呼び出したら何か公安(おれ)に利益になることでもあるのか?」

 絆音の言葉を聞き白木はさっきまでの軽薄な笑みを引っ込めた。


「公安というか警察の不利益を防ぐという面ではプラスマイナスゼロだと思います」

 白木は絆音の顔をまじまじ見た。

「……今回()嘘じゃなさそうだな。わかったよ。んでその呼んでほしいのはどこの誰なんだ?」

「はを強調されたのが気になりますが…まぁいいでしょう。その人は、警視庁───────────さんです」

「ッ!、わかった。んで?場所は?」

「空いている会議室でお願いします」

「りょうか〜い」


  *  *  *


 警視庁内の会議室で二人の人物の姿があった。その会議室の空気は、重々しくはなかったが軽いわけでもないという、つまり微脈な空気が流れていた。

 二人の人物の片方はもちろん絆音なのだが、もう片方は…


「お久しぶりです。あの時の事件でお世話になりました。佐久間さん」

「お久しぶりです。急に誰かわからない人に呼び出されてここに来るまでずっと緊張してたんですから!」


 そう、絆音が呼び出したのは警視庁捜査一課水本班に所属する佐久間であった。


「それは申し訳ありません。谷川咲真さん」


 さくまは明らかに動揺していたがすぐに気を取り直した。

「…確かに俺の名前は谷川咲真ですけど、なぜいきなりフルネームで呼んだんですか?」

「てっきり隠しているものと思っていましたので驚かせようかと」

(名前で動揺するか。それなら、本題に入ったら説得できる可能性が高まった。よかった。この一回でできそうで)


「いや、まあ驚きましたけど」

「では企み最高ですね。嬉しいです」

 何度も言うが表情が凍っているように見えるため、言っていることにあまり信ぴょう性がない。


「では話しましょう。呼び出したのは他でもありません。南家で起きた事件のその後が気になってしまいまして」

「なるほど。そういうことでしたか」

 そこから絆音は咲真と主に事件のことについて話をし、それがひと段落ついたときだった。

「申し訳ありません。それでは俺はこれで。仕事もありますので」

 と咲真が絆音に背を向け会議室から出て行こうとした時だった。


「咲真さん」

「はい?なんでしょうか?まだ何か聞きたいことで」


「復讐はお勧めしませんよ」


「っ!」

 咲真の体が強張った。そしてゆっくりと絆音の方を向き目を細めながら問いを投げた。


「名前の時も思ったけど、あんた、何者?」


「そう言えば私の自己紹介がまだでしたね」

 絆音は右手を左胸に置いて、左腕を腰の後ろに置き、咲真に向かって少し頭を下げた後こう言った。


「私は津城絆音です。そして又の名を情報屋shrineと申します」



  *  *  *


(ん?は??この女性(ひと)今何つった?情報屋?しかもshrineって確か)

 咲真は前の水本(上司)との会話を思い出した。


 ────

 ───────あれは確か咲真が捜査一課に配属されて少し経った頃のこと。と言っても咲真は捜査一課に配属されてまだ五ヶ月ほどしか経っていないのだが……


 いやそれはともかく咲真が配属され少し経った頃、少々大きな事件が起きた。そしてその捜査に難航していたときに、水本班に一通の封筒が届いたのだ。

 その封筒の中に入っていたものはその事件の情報だった。何か変わったことといえば封筒に狐の判子が押されているということだけだった。


 それを不思議に思っていたら水本が咲真に話しかけてきてくれた。


「それはな、稲荷(いなり)、じゃなくて情報屋shrineからの情報だ」


「情報屋shrine?稲荷?」

「そいつはな、警視庁で課を問わず割と大きい事件が起きて、その捜査が難航したときに限って、その事件の情報を送りつけてくる奴だ。

 そんで、その情報はどれも百発百中。

 そいつに感謝してる奴もいるが、毛嫌いしてる奴もいる」


「なるほど……ってあれ?では稲荷って言うのはなんでなんですか?というか名前も書かれていないのによく情報屋shrineの情報ってわかりましたね」


「いや、最初送りつけてきたときははっきり“情報屋shrineより”みたいなこと書いてたんだが、いつの間にかその判子になっててな。んでその判子が狐だから、通称稲荷ってことになってんだ」

「なるほど」


 そして時は現在、咲真の目の前に情報屋shrineだと名乗る人がいる。

 咲真の脳は混乱していた。自身が計画した復讐がバレていることなど吹っ飛んでいることだろう。


(こ、今回も、じょ、冗談だよな?)

 と思っていた咲真の心を見透かしたかのように絆音が口を開いた。

「あ、これは嘘ではないですよ。なんなら証拠見せますけど」

 と言って絆音は狐の判子をズボンのポケットから取り出し、咲真に見せ、咲真の脳にとどめを刺した。


  *  *  *


「落ち着きましたか?咲真さん」

「え、えぇ、なんとか」


「……落ち着いたところに申し訳ないのですがあなたの計画のことについてお話させていただいてもよろしいですか?」

「………わかり、ました」

 咲真は椅子に戻った。

「私は南家の事件の後、依頼の合間を縫ってあなたのことを調べました」


「なぜですか?俺は……」

 と一区切りして咲真は悩むそぶりを見せため息混じりに“もう、いいか”と呟いた。

「いや、僕は何か疑われるようなことしたでしょうか?」


「それに関しては二つあります。

 一つ目、私は仕事柄、()()()()下調べをするのが習慣となっていまして、南家の事件に行く前、南家のことを調べた後、捜査一課を調べたんですよ。

 ほら、私結構遅れて捜査に参加したでしょう?」

 そう、絆音が南家の事件に顔を出すのに時間が経った理由は下調べをしていたからなのだ。……断じて行きたくなくて布団でゴロゴロしていたわけではない。


「そうしたら苗字が佐久間さんという人は捜査一課にいますが、水本班に苗字が佐久間という人はいないんですよ」

 絆音は淡々と話す。

「それで僕が佐久間と名乗ったから不信を持ったんですね?」

「その通りです」


「そして二つ目は私が綾さんと話しているときの表情が、普通に見れば平静に、見えたのですがその、私から見て、辛そうでしたので」

 その一言で咲真は項垂れた。


「ちなみに、私はあなたの過去について聞くつもりはありません」

 絆音の言葉に咲真はバッと顔を上げ、小さく“え”と声が漏れた。

「その代わりと言ってはなんですが、協力しませんか?」

「協力?」

 咲真が眉をしかめた。 

「はい。私の依頼を少し手伝ってほしいのです。安全はできるだけ保証します」

「できるだけってのは気になりますが、見返りはなんですか?」


「やるんですね」

「だって、さっきの言い方だと脅迫になりかねませんよ」


「おや、そうでしたか。以後気をつけます。見返りは……そうですね、給金と、その復讐相手を見つけて差し上げますよ」

 絆音はサラっと、なんのこともないように“復讐相手を見つける“と言った。つまりさっき復讐をお勧めしないと言っていた人が急に手のひらを返したようなもの。


 咲真は一部が震えながらだが、なんとか言葉を発した。

「いいんですか?津城さん僕の復讐、とめていたでしょう?」

「警察全体に復讐されるよりマシかな〜と思いまして。まあ、それについてのお話は、その情報を渡すときにしますよ。それでは、行きましょうか」

 絆音は言葉を発しながら咲真を見据え、椅子から立ち上がった。

「どこへ?」

 咲真は一応は絆音に協力するらしいが、まだその顔からは不信の色が隠せていない。


情報屋shrine(わたし)の一番の公安(取引先)へ」


 そんなに心配なさらずともそこはとても安全ですよ、と絆音はいつものように淡々と言った。











 第三話目読んでいただきありがとうございます。次回をお楽しみにしていただけたら嬉しいです!

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