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情報屋shrineの人助け  作者: 目黄葉
第四章 
28/29

あくまで極論


「それで、今からどこへ行くんですか?」


 白木の車にて、咲真は白木に疑問を投げるが、返ってきたのは共に後部座席に座る月麦の笑った声であった。


「どこっていうか、誰に、ってのが重要かなぁ〜」


「ま、会ってからのお楽しみだな。


 あ、ちょっとコンビニ寄ってもいいか?」


「構いません」

「いいよ」


 白木は二人の返事を聞くと車をコンビニの駐車場に停める。

「降りるか?」


「いえ、大丈夫です」

「あたしも車にいる」


「わかった。少しだけ待っててくれ」


 そう言って白木は車から降りて行った。


 すると、待ってましたとばかりに月麦が笑いだす。

「おい、どうした?」


「いや、なんでも。


 まさか、公安になるとはねぇ、」

「次はなんだよ」


「頑張んなって話だよ」

「随分と上から目線だな」


「いやぁ?だって、

 これで正真正銘あたしはアンタの先輩ってわけだ」


 にま〜っと笑う月麦に咲真は“あ“と月麦に初めて会った日のことを思い出す。

「ぜぇっったい、お前のこと先輩とは言わないぞ」


「じゃあ、あたしもタメは直さない〜」

「ぐっ」

「へへーんだ」


 そこで、咲真は気づく。

「ん?ってか白木さんにもタメだったし、

 先輩に対してもカタコトだったし、


 さては先輩って呼んでも直す気無いだろ。

 ってか敬語喋れるの?」

「失礼な。ちゃぁんと喋れるし。


 あ、バレてたか」

 月麦が敬語を話せるかどうかの真偽は置いておいて、咲真に対して敬語を話すつもりはないらしい。

「やっぱ直す気なかったな」


「そりゃあな。

 というか、あたしがいきなりお前に、敬語とか考えて

 みろ」

「うわっ、今更変な感じ」

「だろ?んじゃま、

 これから、よろしくな。

 ………………………………………………………咲真



 って、呼んでもいい、よな?」



「何?いいけど、

 ずっとそれが言いたかったわけ?」


 ぷいと顔を逸らす月麦に咲真は白木のような笑みを浮かべそうイタヅラっぽく言った。


 それが少しカンに障ったのか月麦は咲真にヤンキー風の威嚇をする。

「あ“ぁ?

 わるいかよ」



 ちなみに、咲真が月麦に名前を呼ばれたのは二回目だ。

 


「…いーや、全然。


 こちらこそ、これからよろしく。




 それと、助けてくれて、ありがとう。月麦!」

「………おぅ」


 ガチャ!

 絶妙な時間で白木が車に戻ってきた。

「待たせてごめんなー。


 ほれ、これやる」


 そう言って白木は月麦と咲真の手の上に一個ずつ小さな四角いチョコを乗せる。


「ありがとうございます」

「お、ありがとー」


「そんじゃ、行くぞ」

「はい」「うん」



 そこから、十五分ほど走ったところの廃ビルに白木は車を停めた。


「よし、ここだ。

 降りるぞ」

「は、はい!」


「もー緊張しすぎ、大丈夫だよ。


 楽逸楽座のみんな優しいし」

「ら、くいちらくざ?!」

  咲真の声が跳ね上がる。ま、そりゃそうだ。


「おい月麦」

「あ、言っちった⭐︎」


「絶対、故意だろ」

「さぁ〜??ど〜だろねぇ〜??」


 そう、その通り完全に故意である。


「え?え?ら、楽逸楽座、に、今、から?え?会う

 の?え?」


 そして、そのせいで咲真は絶賛パニック中だ。


「咲真くん、落ち着こうか。


 まぁ、アイツらだし緊張しなくて大丈夫大丈夫」


「ほ、本当ですか、?」

「あんまり気負わず、な」


「そうそう、あの人らさっきも言ったように優しいし」


「わか、った。信じる」


「それじゃあ行くぞ」

「はい!」



「だからんな気負うなって」

「いでっ!!」

(………ったく、ばか力なんだから。


 ま、頑張るか)


 緊張からくる固さは咲真の体から抜け落ちていた。









 はず、だったが。


 中へ入り、階段を登り、白木が“この部屋の中にいる“と告げた途端、咲真の心臓はまたバクバクと活発に動き出した。

「入るぞ」

「ちょっ、ちょっと待ってください。


 ほ、本当に心の準備が」

「も〜、さっきから何回それしてんの。咲真。


 白木、もー行っていいよ」

「お、おう」


 ガチャ。

「ぁぁ〜、、」


 咲真が蚊が飛ぶ時の音ように小さく悲痛な声を出す。


 その蚊を容易に撃ち落とせるであろうというほどの大音量の男の声が響く。

「やっと来たぁ!!絆音ぉおおー!!!!」


 その音量に咲真の体がビクッと跳ねた。


「悪いが津城は後から来るぞ」

「姉さんはまだ来ない」


「そ、そんなぁあああ!!


 久しぶりに、絆音が自分から来てくれると、思ったの

 に!!」

「後からだが、来ることに変わりはないぞ〜」

 月麦が男の肩にポンと手を乗せると、男は、わかりやすく満面の笑みを浮かべる。


 その男はおしゃれパーマなのかクルクルしたグレーな髪をした二十代後半あたりの顔の整った男だった、が、その顔を現在、百面相をしているため、非常にもったいない。


「そう、だよな!

 絆音が来てくれることに変わりはないもんな!」


 そんな寸劇をよそに白木が咲真にこそっと耳打ちをする。

「咲真くん、大丈夫か?」

「は、はい」


「あ、そっちの君が公安に入るって子ですか?

 白木さん」

「あぁ、」


「は、はじめまして!


 糸繰、咲真です」


「咲真くん、かぁ、

 俺ぁ、桃山律翔(とうやまりつと)。


 よろしくな」


「よ、よろしくお願いします!」


 咲真は律翔に出された片手をしっかりと握り返した。

 

 その時、まだ、部屋に数歩しか入っていなかった咲真の背後から女性の声が聞こえてきた。

「あら、やっぱり来てたのね」

「うわっ?!」


「ごめんなさい。驚かせてしまったわね」


「いえ、大丈夫、です」



 その女性はウェーブのかかった長い茶髪で、前髪を斜めに横切るように三つ編みにし、真っ赤に塗られた口で妖艶な笑みを浮かべていた。


「あなたが、新人の子よね?」

「はい、糸繰咲真です!」


「咲真くん、私は四方山伊織(よもやまいおり)。

 これからよろしくね」


「よろしくお願いします!」


「そういや、なんにもおもてなしできてないじゃん!」

 思い出した!と律翔は声をあげる。


「やっと気づいた。


 それは兎も角。

 律翔、お前私達のことを忘れてはいないよな?」


 少し鋭さを帯びた声が律翔の後ろから聞こえてくる。

 咲真が、ちらと見えたのだと、メガネをかけた几帳面そうな男だ。


「忘れてない、忘れてないよー。

 ちょぉっと絆音で頭一杯になっちゃっただけで」


「それはいつものことでは〜?」


 言い訳をする律翔に間延びした男の声が核心をつく。

 咲真の位置からでは、律翔に隠れてその男の姿は見えない。


「ぐっ!」

 それはともかく、今の言葉は否めないらしい。


「今は大事な時期なのですからもう少し節度を持ってい

 ただきませんと。


 なにより私の仕事も増えます」


 男か女かわからぬ声も聞こえてくるが、咲真からは見えない。


「それは、ほんとっごめん!」



「すぅ、……すぅ……すぅ、」


 耳をすませば寝息も聞こえてくる。


「ごめんな、咲真くん。すっかり忘れて、

 いや!忘れてはない、忘れてない、が、紹介だ」


 律翔の話しかけやすそうなオーラが、引き締まり、空気がしゃんとする。


「ここにいるのは楽逸楽座の幹部達だ」


 律翔が、横に移動し、伊織は咲真より前へ、幹部達が並んでいる方へ歩き、置いてあるL字型ソファに座り足を組む。



「私は、拷…………失礼、尋問屋の四方山伊織(よもやまいおり)」




 尋問屋:四方山伊織




 何か一瞬言い間違いがあったようだがあまり気にしないのが吉だ。


 次に喋り出したのは立っているメガネをかけた几帳面そうな男。


「私は、刻み屋:御調澄透(みつきすみと)」





 刻み屋:御調澄透

 




 次に口を開いたのはスツールに座っており、散らかっている前髪を緑色に染め、顔の右横に一房髪をおろしている。

 顔を見ているとなんとも朗らかした気持ちになれる男だ。


「オレは、

 この組の植物大好きなぁ花屋の、植松桜生(うえまつおうき)ぃ。


 よろしくね〜、咲真く〜ん!」


「よ、よろしくお願いします」




 花屋:植松桜生




 次に話し始めたのは、顎ラインで真っ直ぐに切り揃えられたボブの、男性に見える、、、が、女性に見えなくもない、人だ。


「私は、羽藤魅侑(はとうみゆ)です。

 よろしくお願いします。


 あ、見た目が男らしいとよく言われますが、女です」


 残すは、寝ている男のみ。


 咲真の視線に気づき律翔が、少し渋りながら情報を言う。


「あー、あの人は、

 道化屋の、麻木凛斗(あさぎりんと)」




 道化屋:麻木凛斗




「そんで俺は、



 座(・)長(・)代(・)理(・)の束屋:桃山律翔だ」


 よろしくな、と軽やかに笑う律翔。


「、ざ、座長、代理??」


 咲真の顔がだんだん青くなっていく。

 そんな咲真をみて白木が口を挟む。


「おい、桃山。

 あんまり、新人を虐めないでくれるか?」

「そんな、虐めてなんてないですよ!

 …………ちょっと、反応が面白いだけで」

「なんで、津城の悪い(そういう)ところの影響受けるんだよ」


 白木の口から絆音の名前が出てきたことで咲真は疑問に思っていたことをおずおずと、律翔に聞く。

「えっと、津城さんとのご関係を聞いても、、?」


 その質問を待ってたのか、律翔は自慢気にこう答える。


「絆音は俺の妹だ!」


「義理の、ですが」


 そんな、声が聞こえた瞬間、律翔の顔がだらしなく緩み、笑顔になる。


 犬の耳とぶんぶんと勢いよく揺れる尻尾が見えるくらいには、それはもう嬉しそうだ。

「あ、絆音ぉ!」


 絆音は律翔の呼びかけを無視する。

「白木さん、この状態は?」

「全員自己紹介は済んだ」


「なるほど、間に合いましたね。

 よかったです」


「俺も絆音に会えて嬉しい」


「それじゃあ移動しましょうか」

 見事なスルースキルである。


「そうねぇ、これだと全員座って話せないし、


 一個下の階でいいわよね?」

「はい」


「それじゃあ先に行っておいてくれる?


 私は飲み物を淹れてくるわ」

「オレも行きま〜す」


「あら、桜生くん、ありがとう」

「お、俺も、、」


「申し出は嬉しいのだけれど、律翔くんは、お客様を

 案内してくれるかしら?」


「はい!」



 今は律翔が座長代理のため、伊織よりも立場は上なはず、だが、これでは、どっちの立場が上かわからないなぁ、と咲真は思った。



  *  *  *



 一つ下の部屋、というか、その階は柱があるのみでフロア全体がコンクリートの壁が剥き出しで、その壁はなぜか傷だらけだ。


 一応。簡易的なものではあったが応接室のような一角はあり、そこに、楽逸楽座勢と情報屋勢?に別れて対面で座る。


「なんで、こんなに傷、が?」

「あぁ、訓練に使うんだよ」


「くんれん?」


「それは、また後でにしよう。


 咲真くん、楽逸楽座と警察の関係について、

 知っているよね?」


 先程のシスコ、、絆音に対する態度はどこへやら、律翔に座長代理と言えるだけのオーラが纏われる。


「はい」



「じゃあ、二つの条件についても聞いてるね?」

「はい」




 一つ目は、係長、、白木に許可をとること、




 二つ目は、監視員と共にそれを、犯罪を行うこと。




「聞きましたけど、まだ、腑に落ちていなくて」



「当然だ。君のその気持ちは正しい。


 楽逸楽座の監視係も最初は全く腑に落ちていなかっ

 た。


 これなぁ、説明むずいんだよ。言語化が難しい」



 そんな律翔を見て伊織が妖艶な、真っ赤な唇を動かす。


「律翔くん、なら、私が代わるわ。



 警察はね、ある程度ではあるけれど、

 正義を行使するために暴力を許されているわよね?




 極論、その暴力が、楽逸楽座(私達)なのよ。








 暴走しないように監視、管理しなければならない。







 だから、提携組織監視係(貴方達)がいるの。



 

 つまるところ、使用者と道具ね」

 ガタンッ!


「そんな風に言わないでください!」

 羽藤魅侑が、勢いよく立ち上がり伊織に物申す。



「ごめんなさいね。魅侑ちゃん、


 でも、あくまで極論よ。



 それに、あなたはそうは思っていなくても、




 上層部は、

 間違いなくそう思っているものが多数でしょうね」


「でもっ!」 

「羽藤。

 その辺にしておけ」

 白木が、口を挟む。



「…………はい」


 そんな、白木と魅侑を交互に見る咲真をみて白木は

“あー、忘れてた“という風に手を打つ。



「咲真くん、こんな時になんだが、紹介が遅れたな。

 楽逸楽座の、監視係。それが彼女。



 ま、楽逸楽座の言い方で言えば、監視屋ってとこか」





 監視屋:羽藤魅侑


「よろしくお願いします」


 キリッとそう、言う魅侑のに先程悔しそうに食い下がっていた姿はない。

「よろしくお願いします」



「咲真くん、

 改めて、自己紹介してもらってもいいか?

 ……好きなように名乗ればいい」

 白木が、咲真に向かってそう促す。


「はい。ありがとうございます」


 咲真は白木の気遣いに感謝しながらその場に立つ。



「この度、警視庁捜査一課より、


 警視庁公安部提携組織監視係に異動を申し出ました。


 糸繰咲真と申します。



 不束ものですが、よろしくお願いします」









 これから咲真に待ち受けるものは、




 絆音(情報屋shrine)の人助けが、もたらすものは、




         何か。








 少なくとも、この時




 咲真の人生が良い方向に波瀾万丈に、






 絆音が、良き仲間に巡り出会えたことだけは、明確であった。




















































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