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情報屋shrineの人助け  作者: 目黄葉
第四章 
27/29

理由は後付け



(あぁ、そうか、

 僕、ずっとあの癖、抜けてなかったのか、



 また、人の顔色、見てたのか。



 白木さんがあれだけ、自分で考えたことをって、言っ

 てたのに)


 じっと、咲真の言葉を待っている白木と絆音。


「ぼ、く、


 自分がどうしたい、のかまだ、わからなくて、」


「だろうな、

 だが、異動するタイミングってのは重要だ」


 白木の言葉を聞いて絆音が呆れながら口を挟む。

「それ、

 あなたがめんどくさいのが嫌なだけでしょうが」

「めんどくさいってやつじゃあない。


 今が一番会話できるってだけだ。


 後々になると、会話の機会がなくなる可能性が高い

 からな」

「そういうことにしておきますが、


 確かに異動のタイミングは大事です。

 聞きたいことはなんでも聞いてください」

「なんでも答えるぜー」


 そんな頼もしそうな二人に咲真は疑問に思っていたことをぶつける。


「じゃ、じゃあ僕の、何を見てスカウトをしたん、 

 ですか」



 咲真の問いに二人は打ち合わせでもしたかのようにスラスラと言葉を述べていく。


「まず、初めに話した時に津城とか俺と価値観が同じ

 だった」


「二つ目に、あなたの特技です。


 鶯の時に月麦の声を真似していましたね?

 そう言う人が欲しかった」


「三つ目は、君の性格。


 優しくて、負けん気が強くて、しっかりとした芯も

 ある。


 ま、つまりいい子ってことだ」



「四つ目は、」

「も、もういいです」


 咲真は俯きながら慌てて絆音と白木を遮る。

(隠してるけど耳まで真っ赤。りんごみたい)


 そんなことを絆音が考えていると白木が咲真に向かって歳を感じる顔でいたずらっぽく笑う。

「じゃあ最後にこれだけは聞いてくれ」

「え?」





「実はな、今までのは後付けみたいなもんなんだよ。



 咲真くん。俺と津城がな、単に」



 まだりんごのように顔が真っ赤な咲真に向けて白木と絆音が声を合わせて言う。










    「「君と一緒に、働きたかった」」










 咲真の、目の奥にふっと、やわらかな光が差した。


(この人達は僕の技術も、性格も、全部見て、

 復讐(しようとしたこと)も、僕のこれからのことも、


 全部、全部、ひっくるめて、


 

 僕と働きたいって、


 言ってくれてる。思ってくれてる)


 


 “応えたい”と咲真は素直に思う。





「津城さんや白木さん達と働いて、みたいなぁ」


 気づけば咲真は、そんなことをぽろっと、呟いていた。


「そ、れは」

「承諾と取ってよろしいですか?」

 咲真の言葉を聞いて白木は固まり、絆音は食い気味に咲真に聞き返す。


「え?

 あ!!今、僕なんて言いました?」

 どうやら咲真は考えがそのままぼろっと口から出たことに気づいていなかったようだ。


「私達と働いてみたい、と」


「ぁ、その、すみません」

 咲真の顔がまたもや赤くなる。

「なぜ、謝るのです?」


「無性に謝りたくなっただけです」

「そうですか」


 咲真は顔をシャキッとして二人に顔を向ける。

「改めて、その、働いてみたいのですが、」

「「が?」」

 二人の疑問の声が揃う。



「………………仕事内容って聞いても、いいですか?」




「「あ」」

 二人のなんとも間抜けな声が揃う。



「……本当にすまん。

 スカウトとか普段しないもんだからどういうものか

 わからず。仕事内容言ってなかった」

「そうですね、仕事内容必要ですね」


 失念していたと二人の空気がずーんと重くなる。


 その空気も白木は一瞬で取り払う。

「よし、それじゃあ津城よろしく!」

「なぜ?」

「説明するのうまいだろ?」


「……わかりましたよ。

 ではまず、提携組織連携係について説明しますね。


 提携組織監視係とは、その名の通り警察に協力する

 組織を監視する少々グレーな係です。


 現在、提携している組織は二つ。


 一つは、楽逸楽座(らくいちらくざ)、聞いたことは

 ありますか?」

「何回か、あります」


 咲真は“楽逸楽座“の名前を聞き、ごくりと唾とともに驚きを飲み込む。


 咲真は、口に出した通り“楽逸楽座“と言う名前を何度か聞いたことがある。



 それも、大体は犯人の口から聞かされる名だったため、今までの咲真であれば取り乱していたであろうが、今の咲真は少々免疫ができていたため、唾を飲み込むだけでリアクションは少ない。



 それを少し残念がるように絆音は少し肩を落としながら話を続ける。


「話が早くて助かります。

 そして二つの内のもう一つは、情報屋:shrine、、


 つまり、私です」


「ん?そうなんですか?」



 今、提監(警察)の情報を白木(警察)に変わって言っているのに?


「ええ、つまり、私も監視対象なのですよ。



 事務以外のこの係特有の仕事となれば、



 あなたの仕事はおそらく


 

 情報屋:shrineと忍び屋:lionの監視となるでしょう



 私(・)達(・)と(・)同(・)じ(・)立(・)場(・)に(・)立(・)っ(・)て(・)の(・)」






「………………おなじたちばにたって?」

「発音おかしくなってるが大丈夫、じゃなさそうだな」


 日本語がゲシュタルト崩壊したように咲真の発音はちぐはぐだった。


「それではここからは、白木さんにバトンタッチしま

 す」


 絆音はもうさっきの説明で仕事は終わったとばかりに席を立つ。

「ここから?おいちょっま!どこいく?」


「女子トークに入りに行こうかと、」

「行きたいのか?」


「…………………………まあ」


 そう言いながら絆音は目を逸らす。

 白木はこの反応が何を示しているのか、理解している。

(あ、これは大分行きたいって反応だ。


 ま、いっか)


「戻ってこいよ?」

「わかっていますよ」


 絆音は、顔は氷だが身近な人が見たらすぐわかるくらいには上機嫌のオーラを出して、部屋から出ていった。


 白木は一つため息をつきまだ固まったまま戻ってこない咲真に声をかける。

「さて、

 おーい、咲真くーん、そろそろ戻ってこーい」


 白木が声をかけるとすぐに咲真はビクッと肩を震わせ戻ってきた。

「ぁ、すみません、情報量が、すごくて、


 理解するのに時間がかかってしまって」


「いいのいいの、

 津城が早く女子トークしたくて捲し立ててただけだ

 から、時間はかかって当然だ。


 疑問点は俺が答える」


 白木はどっしりとそう構える。


「僕の仕事が、情報屋:shrineと忍び屋:lionの監視、


 というのは?」


「まぁ、そうなるだろうな。今は俺が監視してる」


「それ、僕がしてもいい仕事ですか?」


「全然いいやつー。

 いやー、

 なんとか回ってるとはいえ一応ここ人手不足だから

 なぁ、だって今俺入れて二人だよ?


 もう一人は楽逸楽座の監視が仕事だから忙しくって

 なぁ」

 白木の先ほどのどっしり構えていたのはどこへやらペラペラよく回る軽い口だ。


 その喋りに少し押され気味になりながらも咲真は口を開く。


「そ、それじゃあ同じ立場に立ってって、言うのは

 どういう、こと、なんですか?」



「色々な、誓約があるんだよ。


 楽逸楽座の説明は、

 ………………アイツその説明全部省きやがった」


 上の階に遠い目を、いや確実に、女子トーク中の絆音に向かって目を向ける。


「まず、楽逸楽座と公安が“提携“している理由は、

 なんだと思う?」


「え、っと他の組織への抑止力、などでしょうか?」

「おっ、正解だ。


 アイツらは今絶賛勢力拡大中でな?


 そこに便乗してある、噂を流してるんだ。



 楽逸楽座の縄張りで何かしたら、組ごと潰されるって

 なぁ」


 白木は悪どく笑う。

「なるほど!警察側では犯罪の抑止力として働き


 楽逸楽座側では、協力しているからこそ見逃してもら

 える犯罪(もの)もあり、互いにメリットが大きい」


 咲真の見解に白木は満足そうに笑う。

「そゆこと、

 それで、一応犯罪を黙認する条件が、


 例外はもちろんあるが、

 監視員を通して係長、つまり俺の許可をとること。


 そして監視員と共にそれを行うこと」


「一つ目は妥当でわかるのですが、

 二つ目の条件がいまいちよく、わからなくて」



「虚偽の許可申請をしていないかを確認するんだ。

 その場に警察がいないと話がややこしくなる。


 この話は、また詳しくする」


 つまり、この話をまとめると提携組織監視係とは、


 楽逸楽座という組と手を取り、



 楽逸楽座に犯罪への抑止力として働いてもらい、



 こちらからは条件はあるが、ある程度の犯罪を黙認する。


 なるほど、結構黒に近めのグレーな係である。



「と言っても、

 楽逸楽座って義理に熱くて、ほぼ正当防衛で済むし


 てかほぼ俺らからの依頼だから

 黙認もしやすい、だから、手を組んだ。



 まあ、多分働きやすいとは、思うぞ」

 


 咲真の胸中にはまだ疑問や不安が残るものの気持ちは、固まった。



「白木さん、改めて

 僕、糸繰咲真は、


 警視庁公安部提携組織監視係への異動を、望みます」


「……了解した」



 白木は咲真の言葉を重く、重く受け止め、それを心の奥にしまう。



 そして、いつもの調子に戻る。


「津城が戻ってくるまで色々話しとこうか。


 じゃあ、好きなご飯とか聞いてもいいか?」


「はい!もちろんです!僕が好きなのは」

 咲真は、大きな決断の後の少々の寂しさを味わいながら、白木(この人)が上司なら、とこれからの自分に思いを馳せた。




 しばらくして絆音が戻ってきた。ドアを開けたところの白木と咲真の雰囲気を見て、絆音は全てを察する。


「残念もう、終わっていましたか、


 では他二人を呼んでも?」

「おう。いいぞ


 ってか、終わってることとか、ほとんど全部計算通り

 なくせに」


 白木の追求をひらりと交わしながら絆音はドアを開けたままにしながら二階に目を向ける。

「まさか、たまたまですよ。


 月麦ー、葵さーん。下おいでー」


 絆音は階段の方へ行き少し声を張り上げるとすぐに二人からの返事が返ってきた。



「咲真くん、自分で言えるか?」

「は、はい!がんばります」

「あんまり気負わず、な?」

「はい!」


 緊張している咲真をほぐすように白木は咲真に優しく声をかける。


 葵と月麦が来たのはそんな時で、咲真の様子から葵は何かに気づいたからか葵の歯切れが悪い。

「お話はもう、終わったん、ですね」


「あぁ、それで、話してたことについて咲真くんから

 話がある」


 咲真は、白木にそう言われた勢いのまま葵に宣言する。

「先輩、僕、公安に、なります」


 


「…………そう、だとは思ったよ。

 私と咲真くんいなくなっちゃったら、水本班が、


 寂しく、なっちゃうね。


 お互い、それぞれの道で頑張ろうね」

 寂しく笑う葵に対し咲真は柔らかく微笑む。

「はい」


 

 少し沈黙が落ち、少々気まずくなる直前で、パンッ!と白木が手を打つ。

「それじゃあそのこれからの話をしようか。



 佐々木さん、痛い目を見せるというのはプラン、

 とかは、あったりする?」

「はい」


「それは、警察を止めることと関係ある?」

「まあ、あり、ますね」



「じゃあ、津城と後で話した上で決まるが、



 多分そうなると思う。


 警察やめるのを少し先にしてもらってもいいか?」

「わかりました。

 具体的にどれくらいでしょうか?」

 葵はすんなり白木の頼みを引き受けた。


 白木はそれを好ましく思いながら葵の疑問に答える。


「二ヶ月ぐらいだから、五月あたりになると思う。


 教師になるために必要なことがあれば言ってくれ。



 なんせ、こっちには情報収集のプロがいるからな」

「なぜあなたがドヤ顔なんですか。

 まあ、喜んでやりますけど。


 それじゃあ葵さん、話をしたいので、

 この後少々残っていただけますか?」


「もちろん構いません」


「この後は、咲真くんと、月麦は俺と来てもらえる

 か?」

「はい」

「りょーかーい」



「後で私も追いつきますので先に、どうぞ」




 

(あ、てことはいきなりアイツらと会うのか、


 アイツら濃いけど、、ま、咲真頑張れ)



 月麦だけは咲真にこの後起きるであろうことを予想し、咲真の反応を面白がろうとしている。


…………………こういうところは絆音(姉)と似ていると言えるだろう。




 白木は月麦が意地の悪い笑みをしているのを見て、何を考えているのか予想がついたため、心の中で叫んでおく。



(なんで、そういうところは津城に似るんだよ!!)





  *  *  *


 同時刻、都内某所。


「お、白木さんから連絡だ、

 言ってた子、公安になるってさ


 それでいまから来るって」


 桃山律翔が、その場にいる人達へ向かって意気揚々と告げる。


「へぇ、どんな子かなぁ?」

 間延びした声を出すものが、一人。


「やっと同僚、来ましたか」

 鋭い目になるものが、一人。


「あら、どんな子か楽しみね」

 興味津々なものが、一人。



「どんな子か、見極めねば」

 冷静なものが、一人。


「すぅ、………すぅ、………すぅ、」


 話を全く聞かず、眠りかけているものが、一人。




 合計六人が咲真に対しそれぞれの関心を(一人をのぞいて)向けていた。
















 





















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