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情報屋shrineの人助け  作者: 目黄葉
第四章 
26/29

思いの箇条書き


 咲真は絆音の言ったことを理解できなかった。

「な、何言ってるんですか?」

「端的に言いますと、スカウトです」


「はあ、」


「混乱させてしまって重ね重ね本当に申し訳ありません

 が、そのことも次回までに考えておいてください」

「わかり、まし、た」



 咲真にも悪い話ではない。……良い話かどうかも、定かではないが。


 すると、リビングのドアの方から白木が言葉を狙い撃つ。


「うちの係は回ってはいるが二人なんでな。


 来てくれたら楽になって俺も、アイツ…もう一人も、

 嬉しいが、

 来ないって選択をしようが今一応は回っているから、

 心配はいらない。


 だからごちゃごちゃ考えず、

 自分でしっかり考えること。わかったな?」

「はい」


「よーしよし!よく言った!」

 しっかりとした返事を聞き白木は咲真を思い切り子供扱いし、髪を片手でわしゃわしゃする。


「ちょっ!これから仕事なんでやめてください!」

 咲真は笑いながらも白木の手を払おうとするが白木の手は全く振り払えない。

「すぐ直せるだろ?」

「そうですけど!」



「パワハラ?」

 そんな二人を見て絆音がぽそっと、聞きずてならない事を言う。


 部屋の空気と白木が石のようにピシリと固まる。

「え、」


「違います!

 やめてほしかったですけど、

 嫌ではなかったですよ!」

 その白木を見て咲真は慌ててフォロー?を入れる。


「なら、よかったです。

 安心安心」


「ほんとに、ほんとに、嫌じゃなかった??」

 今度は白木が子供のようにおずおずと咲真に確認する。


「はい。

 よく、父にもして、もらってたので。

 久しぶりに、思い出しました」


「そ、うか。

 嫌じゃなかったなら、よかった」

 切なげにそう笑う咲真に、白木は返す言葉が見つからない。


 そんな時、そんな空気を吹き飛ばす勢いの謝罪の声が聞こえてきた。

「本っ当にすみません!準備が遅くて!」


「いや、全然時間大丈夫だよ。

 よし、そんじゃ行くか」

 白木は葵が現れたことにより普段の調子に戻り車の鍵を宙に投げてキャッチをしながら笑う。


「ありがとうございます」

「あ、ありがとうございます!」

 葵に続けて咲真も白木に向かって頭を下げるが白木が口を開こうとする前に絆音が割って入る。


「咲真さん、葵さん、またお話いたしましょう。


 日時は追って連絡させて頂きます」

「「はい」」

「それでは咲真さん、葵さん。

 お互い頑張りましょうね。


 …いってらっしゃい」


「「いってきます!」」



「あれこれ俺いる?」

 絆音のイタズラは今回も成功。

 それに満足感を覚えながらも絆音は氷のまま……

「おい、お前満足げにすんなよな。


 というか夕方また来るからちゃんと締め切り近い仕事

 は終わらせといてな?頼むから」



「…はい」

 白木はぶつくさ文句とため息をつきながらリビングから出て行く。


 がちゃっと、ドアが開き、閉まった音がし、家に一人残された絆音は、とぼとぼ、洗面所に向かい片手で頬をつねりながら鏡の中の自分へ問いかける。


「なんで、白木さんも、律翔(りつと)も、私の気持ち

 が、わかるんだろう?」


 絆音は、そのまましばらく鏡の中の自分と目を、合わせていたその時、先ほども聞いたガチャっというドアの開く音がした。

「!」


 絆音が慌てて玄関の方へ向かう。

「いと〜、開いてたから入るぞ」


 そんな絆音にとって聞き覚えのある声が聞こえてきたため、絆音は安堵の息を漏らしゆっくり玄関へ向かう。

(噂を、すれば、だね)


 絆音は慌てずゆっくり玄関の方へ向かう。



 



 一夜を越え、表面上はいつも通りの日常が、やってくる。




  *  *  *



 お話の時間が来たのは、それから五日後の日曜日。


 もちろん絆音の家だ。


 ダイニングに朝ごはんの時のように私服姿の五人が座る。


 朝ごはんと違うところは空気が若干重いところだろうか。

「おはようございます。

 また、本日はお集まり頂きありがとうございます。


 改めまして、津城絆音です。

 情報屋shrineやってます」

「あー、あたしは、交久瀬月麦。


 一応、忍び屋lion」

「え?!?」


 絆音からの流れでさらっ〜と正体をバラした月麦に葵が驚きの声をあげる。


「あ、そっか葵さん知らなかったか。

 ごめん忘れてた」


「知らないに決まってるでしょ?!?!

 咲真くんは?知ってた?!」


「知って、ました」

「知らなかったの、私だけ、」


 がくっと、項垂れる葵をよそに白木は続ける。


「俺は白木聡。


 警視庁公安部のどっかの係の係長」


 白木は葵がいるからか少し濁して自己紹介をする。


「僕は、…糸繰、咲真。


 警視庁捜査一課水本班所属、です」


「私は、佐々木葵。


 同じく警視庁捜査一課水本班所属、です」



「みなさん、ありがとうございます。


 それじゃあお話始めましょうか」


「それで、これって具体的に、なんの、お話なんです

 か?」


 葵の問いに絆音は少し悩んでか答える。

「具体的に言いますと、これからのこと、ですかね。


 では白木さんからどうぞ」


「えぇ?!なんで俺から?!言うことないぞ」


「場を和ませるためです。

 どうぞ、なんでもいいですから」

「わかったわかった。んじゃ、俺からは一つ。


 他人のことはあまり考えず、自分で決めたことを率直

 に文字で言ったら箇条書きくらい拙くても構わない。



 とりあえず、これからの自分を考えて発言しよう。


 以上」

「はいありがとうございました。

 じゃあ次誰かに何か聞きたいことがある人はいます

 か?」

 絆音はまるでバラエティ番組でつまらない話を即切り上げるMCのように、白木の話をスバっと切り、問いをかける。


 その質問に咲真が恐る恐る手を挙げる。

「咲真さん、どうぞ」



 絆音の言葉を聞いて、咲真はすっと静かに立ち上がりずっと、言おうと思って言えていなかったことを、言う。



「みなさん、五日前は、本当に、



 本当に、ありがとうございました。





 まだ、生きててよかったって断言はできませんが、


 みなさんに繋いでもらったこの命、

 必ず無駄にはしません。



 これだけは伝えたくて、

 聞いていただきありがとうございました」


 ゆっくり、何周か一人一人の顔を見ながら最後は深々と頭を下げることでしっかりとした


を見せる咲真に絆音が、しみじみ呟く。


「そう、言っていただけるだけで、十分です。



 それでは、他に何かある方はいますか」

 葵がまっすぐ手を挙げる。

「ほんっとうに、素朴な疑問でいいなら、」

「構いません。大歓迎です」



「あの日咲真くんが、落、ちた時、なんで、助かったん

 だろうなぁ〜?、っていう、疑問なんですけど」


「あ、それならあたしか」

「やっぱり、月麦ちゃんが…」

「うん。

 え〜っと、どこから説明したもんか、」


 月麦は白木をチラチラ見、その視線に気づいた白木が呑気にあくびを噛み殺しながら言う。

「ほとんど言って構わんぞ〜」


「あ、いいんだ」


「どうせ隠し事とかお前無理だろうが」

「あ、バレた」

 月麦はおちゃめにてへ、と舌を出すが、月麦は見た目は大人っぽいのでどこか艶っぽい。


「んじゃ遠慮なく、全部言うね。


 えっと、あの山、知り合いのもので木と木の間に人が

 一人はぶら下がれるぐらいの強度のワイヤーが張って

 あってね、それを調整しつつシャーと降りる」

「へえー」


「あのホテルら辺でなおかつ咲真が落ちる寸前のとこで

 命綱離す」

「へ、え!?ん?!はな、?!」


「あ、真似しないでね。死んじゃうよ」

「「「言われなくても真似するかぁ!!」」


 葵と咲真と白木に総ツッコミされた月麦は少し不貞腐れるが、そのまま続ける。

「じょーだんだよ。

 それで続けると、離した後そのまま落ちてこいつ、、

 片手で咲真の腕とってもう片方の手で、とっかかりが

 付いてるワイヤー投げて引っ掛けて、みたいな?」


 いい感じにまとめた月麦に咲真は月麦を遠い目で見つめる。


(あ、僕を投げたりしたのは言わない感じなんだ)



「へ、へぇ〜、想像以上に、人力だった、」

「ま、忍び屋だからね、」


「そう、だよね」


 忍び屋という一言で全て理解できたことにまた葵が項垂れたところで絆音が次の話題を探す。

「他に、何か質問したり、自分から発言したいことが、

 ある人はいらっしゃいますか?」


「あ、続けてごめんなさい。

 言いたいことあります」

「構いません、むしろありがとうございます。

 葵さん、どうぞ」



「これは、ちゃんと自分の考えですからね」

 葵は前置きを丁寧にした後、深呼吸を一つした後、ニコッと笑って告げる。










「私、警察官辞めます」


 ガタン!咲真が急に立ち上がったからか派手な音が響く。


「私がきちんと、考えて決めたことだよ?


 だから、咲真くん。


 そんな、泣きそうな顔、しないでよ」


「でも、そんな、先輩が辞めること、ないじゃないで

す

 か」




 咲真の顔を見て葵は嬉しいような、哀しいような笑みを浮かべ語り始める。

「私はね、

 ずっとどこかで父と張り合っていたんだと思う。


 それが、咲真君のおかげでもう、よくなったの。




 だって、あんなクズな父と張り合ってることすら

 馬鹿馬鹿しくなって、


 そうしたらやりたいことも、見えちゃったから、


 “あ、辞めよう“って、四日前に思えた」 

 葵はおっとりとした顔で意外とズバッとハッキリ物事を言う。


「だから、ありがとう」


 咲真は色んな言葉を飲み込み、素直に礼を受け取ることにした。

「どう、いたしまして?」


「それで、次の仕事って何?」

「え〜っと、ね、教師、なんだけど、」

 葵は若干顔を赤くしながら言う。


「へぇー、いいじゃん。葵さん、頑張ってね」

「うん、ありがとう!月麦ちゃん!」




「じゃあ、やりたいことはなんなんだ?」


 葵が核心をつかれた顔をする。



「その顔は何か企んでるって顔だぞ?」

「流石は公安。わかるものですか、、」

「ま、今まで見てきた人の数がな、」




 葵はすこし残念そうに潔く話始める。

「やはり、敵いませんね。



 実は、父に、痛い目を見せたくて、」




 痛い目を見せるすなわち、復讐、報復のようなことだろう。


「!?、それこそ!僕が!」

「咲真くん、君はね、底抜けに優しいの。

 だから、

 自己犠牲という形で、復讐しようとした。


 だから、

 私が娘だと知ったとたん、私を傷つけることを恐れ

 た。


 そんな君に何か、したくて、

 私も父のしたことに怒ってる。


 そして、私は私自身のことも許せない。


 それがどちらも叶うのが、私自身の手で父に痛い目を

 見てもらうこと」

「それは、つまり、」

 絆音の言葉を葵が引き継ぐ。


「津城さん。そうです。

 私の私による私のための贖罪です。


 これをしないと私が前に進めない」




 絆音は、真顔で、白木は対照的にニヤニヤと笑い、目で会話をする。



「あなたの覚悟をしかと受け取りました。


 それは私も、私達も作戦を立てることに、参加しても

 いいですか?


 より、痛い目に見てもらうために一緒に色々考えま

 しょう。


 白木さん、許可は、いただけますよね」

「おう、もちろんだ」



「いいんですか?」



「なあ、葵さん。姉さんが、いや情報屋shrineが警察内

 で疎まれてることが多い理由、なんとなく知っては

 いるだろ?」


 葵はあっと言う顔をする。

「葵さん。お気になさらず、

 警察内の汚れを取るのも情報屋shrine(私)の仕事ですの

 で」


 そんな葵に絆音は座ったまま恭しく礼をし氷のままではあるが、ドヤ顔をした。



「葵さんのものはこれから考えるとして、


 他に何か言いたいことがある人は…………





 いないのであれば私から」

「おい!俺手挙げてんだけど?!」


「あ、すみません。気づきませんでした」


「んなわけあるかぁ!!さっきの沈黙の間に五秒は目

 合っただろ!」


「はて、そうでしたっけ。

 

 ………ま、冗談もここまでにして、

 手を挙げてらっしゃることですしどうぞ」


「へいへい。

 月麦と佐々木さん、って呼ばせてもらうけど、


 ちょっと三人にしてもらっていいかな?」


「わか、りました」

「わかった。葵さん。あたしの部屋いこ?


 そんで、女子トークでもしとこ!」

「う、うん」


 葵は月麦に手を引かれ部屋を出ていく。



 ばたん、と戸が閉まり、足音が聞こえなくなった時、白木が、笑ったまま咲真に優しく話しかける。



「それじゃあ、咲真くん。


 真剣に、これからの話をしようか」















 咲真は、五日前から、纏っていない思考を引っ張り

 出す。





 このまま、捜査一課で我慢をするか、



 絆音と白木の元…公安へ、行くか。









 













(津城さんは、将来、選ぶこともできると言ったけど、


 多分、今決めないと、公安に移動できる機会が、ない。


 せっかく津城さんと、白木さんが作ってくれた選択肢

 を選ぶか否か。


 僕は、どうすればいい?)




「咲真くん、きみは、どうしたい?」



 やわらかな、慈愛に満ちた顔で白木は問う。








 その顔を見て咲真は、自分の考(・)え(・)方(・)が間違ってることに気づいた。



(あぁ、そうか、

 ─────────────────────)








































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