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情報屋shrineの人助け  作者: 目黄葉
第三章 「刑事:咲真」
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手放したもの


(くらいなぁ、まぁ、山だしなぁ)

 咲真は闇と静寂に包まれた山を携帯しているライトで照らしながら、一歩一歩、踏みしめながら慎重に歩く。


「とりあえず、上行ってるけどまあ、大丈夫か」


(山なら、津城さんに見つからない可能性がかなり高

 い


……………じゃあやっと、死ねる(勝てる)、よな?)


 そこから数十分後、咲真は少し開けたところに、到達した。



 咲真が、そこをライトで照らすと、そこそこ大きいビルが建っていることがわかった。


(大分廃れてるけど、これホテル、だよね?)


 そう、咲真がたどり着いた場所は廃ホテル。

 雰囲気はとてもおどろおどろしいが、咲真は臆することなくホテルへ向かう。


「うわぁ、くっら」

 咲真は眉を顰めながらホテルに入る。


(ずっと山いるよりは、入った方が、いいよな?


 それに……)



 咲真はチラリと天井に目を向ける。

(あんなとこに監視カメラ、ついてやーんの。


…………いいよ、津城さん、勝敗はこれから決めよう)


 咲真は哀愁漂う笑みを監視カメラに向け、屋上へ向かう。



  *  *  *



 絆音は連絡が来たのかスマホを立ち上げる。

「なるほど、たどり着いたのは廃ホテルの方ですか」


「んじゃそっち方行へ向かうからな」

「よろしくお願いします」


 葵は絆音こ言葉で何か引っ掛かることがあったのか絆音に問いかける。

「あの、廃ホテルの、方(・)ってどういうことです

 か?」


「それは、」

 絆音が運転する白木に目を向けると白木はいつもの調子で言う。


「あー、別にそんな詳しくとかじゃなければ言っても

 いいから」


「わかりました」


 絆音は葵の方は向き直り、淡々と告げる。


「実は、今から向かう山は、私の知人が所有しておりま

 して、様々な建物や仕掛けがあるのです」

「へ、へぇ、山を所有している知人、」


 白木が一瞬、後部座席に目を向け呆れた目でこう告げる。

「おい、知人って言ったこと知ったらアイツ絶対うるせ

 ぇぞ」

「知ってますよ。だから言わないでくださいね」


「へいへい、りょーかーい。


 あ、うっかり口が滑ったらすまんが」

「あなたも面倒くさいことに巻き込まれますが?」

「やっぱやめますごめんなさい」


 会話についていけていない葵は絆音と白木を交互に見ることしかできない。


「ごめんなさい、葵さん。こちらで話を進めてしまっ

 て」

 そんな困惑した葵を見て絆音は話しかける。


「いえ、構いません。

 それで、仕掛け、というのは、聞いてもいいものです

 か?」

「それは、色々ありますね。まあ、山の中にはあまり

 ありませんが、必要に応じて取り付けることもありま

 す」


「そ、そうなんですね」

(これは、言えないことなのか、)



「おい、もう着くぞ。すぐに降りられる準備だ」


「「はい」」


 咲真がホテルに入ってからおよそ五分。


 車が廃ホテルの前に着き、絆音と葵は車から降りた。

「それでは白木さんここは任せましたよ」

「おう」


 白木は先ほど同様、留守番と、今は見張りの役目も兼ね備えている。


(ここまでは、予測がついていたけれど、


 ここからは、咲真さんがどういう行動を取るのか、

 まだ、予想の範囲。


 咲真さん、どう、出てくる?)


 絆音がホテルの上へ視線を向けた、その時、絆音のスマホから、静かに通知音が鳴った。


「!」

 絆音はすぐさまスマホを確認した。

(アイツはもう私から連絡が来ない限り来ないから多分

 これは、)


“正真正銘、これでケリをつけましょう


大丈夫ですよ勝手に死んだりはしません。ゆっくり、

来てください”


 やはり絆音の考察通り、咲真からの連絡だった。


「……………なるほど?」


(そう来たか)


「佐々木さん、行きますよ。咲真さんはおそらく、屋上

 です」

「わ、かりました」


 絆音がスマホのライトで照らしながら迷うことなくまっすぐ階段を登り始まる。


 葵もそれに続くが、背が丸まっている。

 更に震える声で絆音に問う。

「あ、あの、ここお、お、お化けとかでませんよね

 ぇ、??」


「さぁ?

 いないとも限りませんよ」

 絆音は真顔で返す。

「そ、そんなこと言わないでくださいよぉ!」


 流石にからかいすぎたか、と絆音は思い先ほどの言葉を否定するような言葉を出す。


「少なくとも、私とここの所有者は見たことはありませ

 んね」

「それならそうと言ってくださいよぉ、」

 葵は安堵したように息を吐くが背中は丸まったままだ。

 

 そんな葵を次は安心させようと絆音は情報を捕捉する。

「すみません。

 あとこのホテル、見た目はボロボロで、今は暗いです

 がちゃんと補修工事などしているので丈夫ですよ」


「そうなんですか?」

「はい、

 というより、お化け怖いんですか?」

 絆音は真正面を見ながら後ろに続く先ほど自身の手で安心させた葵に向かってまた揶揄うようにそう言う。


「そそそそんなの!怖いに決まってるじゃないです

 か!?

 だって、」

「だって?」


 絆音が葵が立ち止まった気配を感じ振り返ると葵は恥ずかしそうに顔を両手で覆い乙女のように恥じらしそうに、





「お化けって投げれないじゃないですか?」


 



 乙女らしからぬ、アニメなどの二次元でよくある理由を述べた。



「そうですか」


 絆音がこんなにも軽くスルーしたのは、月麦と、あ、、、、うん、察しておくれ。


「でも、もしかしたらお化けにも人間に友好的な方も

 いるかもしれませんよ?」


「いる前提で話を進めないでください!」

「すみません、佐々木さん」


「………あの、できれば、葵って呼んでくれると嬉し

 い、んですけど、」

「すみません、どう呼べば良いかわからず、色々な呼び

 方で読んでしまって、」


「それは、別にいいんですけど、咲真くんの前で、

 佐々木って結構こたえる、と思うんです。


 だから、葵でお願いします」


 絆音は数瞬目を見張り、その提案を了承する。

「…わかりました。


 それでは葵さん行きましょうか」

「はい!」

 そんなこんな、仲良く足を進めていると、階段は終わり、代わりに、扉が現れた。


「これが、屋上へ続く扉です。


 いきますよ」

「はい!」

 さっきまでの怯えた姿はどこへやら葵はシャキッと背を伸ばし完全に仕事モードだ。


 絆音が扉を開ける。キィイという金属音が鳴り響く。

「どうも、先ほどぶりですね、津城さん」


 世間話でもするかのようなトーンで咲真は、屋(・)上(・)の(・)手(・)す(・)り(・)にのんびり座っていた。


「思ったよりも車が来るのが早かったってことは、


 やっぱり尾行、いましたよね?」


「……………………気づかれていましたか」

「まあ、はい。

 だって人気のない山でもなんか後ろにいるなーって

 感じしたんで」


「そうですか」

(アイツ後で説教しよう)

 絆音は氷の奥底で少しの苛立ちを感じていたが、それは後回しにし咲真に目を向ける。


「それでは、お話、始めましょうか」


 絆音はそう言い咲真の正面に立つ。

 葵も絆音から一歩離れたところで立っている。


「咲真さん、復讐、したいですか?」


「まあ、そう、ですねぇ?」

 咲真は目を細め地面を一瞥したのち、歪んだ笑みを浮かべながら、そう言った。


 そんな咲真に葵は察しながらではあるものの、ある問いをかける。

「咲真くん、あなたがしたい復(・)讐(・)って、何?

 私は、聞くよ」


「そ、れは」

 咲真は先ほどとは比べ物にならない言いづらさを感じていた。


 葵はそんな咲真を見て質問を変える。

「さっきもそうだったけど、屋上(この場所)は

 関係、ある?」

「……はい」


「そう、なの」



 葵は、察した。


 そして、理解した。


 絆音が止(・)め(・)る(・)と言っていたのは復讐ではなかったことに。



 復讐ならば、絆音は咲真を諭して犯罪にならない程度の復讐であれば手伝ったりするであろう。



 だが、咲真の命がかかっているのなら?


 それは、今のように全力をもって止めるだろう。



 この時、葵は決意を新たにした。

(あの人の娘として、私が絶対、止めなければならな

 い)


「咲真くん、あなたをそこまで追い込んでしまって

 ごめんなさい。

 本当にごめんなさい。



 私に、




 私に、償うための、時間をくれませんか?」


 葵の泣きそうな顔を見て咲真は首を絞められた時のような苦しげな顔をする。

「だから!先輩は、償わなくていいんです!」


「こっちが償いたいって言ってるんだから、償わせて

 よ!」

「いやです!



 先輩は!ただ、いつも通り、仕事して、いつも通

 り、笑って、いつも通り、生きて、ください。



 先輩はあの人の娘に生まれた、だけです」


 葵の口から乾いた笑いがこぼれる。

「生まれた、だけ?


 私と同じくらいだったキミの人生を父が壊しておいて

 私、その父に認めたくないけどちょっとは可愛がられ

 て、のうのうと今まで生きてたんだよ、?



 なんで、!」

(なんで、恨んでくれないの、?、


 なんで、そんなに優しいの、?、

 


 復讐相手に同年代の娘なんていたら、

 恨むものでしょう?)


「………………確かに、僕があなたのことを何も知らない

 状態であの人に娘がいるって知ったら恨みますよ。



 でも、あなたはあの人と違うでしょう?


 復讐したい相手の娘だからって、その人が必ずしも

 “やな奴“だなんて思ってないですし、」


 咲真は座ったままのんびり絆音と葵の顔を交互に見て、“そもそも“と付け足す。


「今、僕は先輩というひとがどんなひとかを、


 知っています。




 出会った、という過去は変えられないので、僕は、




 あなたを恨みません。



………………………………恨めません。


 もう、手遅れです」



 葵の身体の奥のどこかから、何かが、溢れそうになって、食い止めようとする。


 だが、勢いはとまらない。


 堪えきれずにそれが、目から、涙となって溢れ出る。


(泣くな!泣くな!

 なんで、なんで、私が泣いてるの、?


 本当に泣きたいのは咲真くんなのに、



 なんで、責められるべき私が、)

「ごめっ、なさい、


 せめっ、て、謝、らせて、ごめん、なさい、」


 咲真が、言葉に悩んでいるとすっと絆音がハンカチを差し出す。


「葵さん、これで拭いてください」


 葵はふるふると首を振る。

「あ、りがとう、ござ、ます。


 でっ、もハ、ンカチもって、るんでだいじょぶ、

 で、す」

「わかりました」

 絆音は手を引っ込める。


「先輩、すみ」

「謝ら、ないで!」

 葵は自身のハンカチで涙を拭いながら咲真の言葉を遮った。


「謝ったり、償ったりする、べきなの、は私と、私

 の、父なの!


 だから、謝罪を受ける側が、謝らないで」


「わ、かりました」

 泣きながらではあるものの、葵のその力強いまなざしを見て、咲真は頷いた。



「それでは咲真さん、次は私と話しましょう?


 葵さんは少し、休んでいてください」


 絆音はそう言うと咲真の前にもう一歩足を踏み出し、もう一度先ほどと同じ質問をする。

「あなたは、本当に復讐したいんですか?」

「え?

 それは、まあ、はい」


「先ほども今もあなたの返事は曖昧ですね。



 あなたの目的は、本当に、復讐ですか?」


「………………………わかりません。


……今までずっと、復讐するために、生きてきた、

 のに


 先輩に話してから、



 なんか、もう、いいかなって、」


 そう言って空にむけた咲真の目は“生”への関心を手放しているように見えた。


「…………………………先輩、さっき、謝らないでって、

 言ってましたけど、




 これだけは、謝らせてください。ごめんなさい。




 死(これ)は僕が選んだことです。



 娘(あなた)はなにも、悪くない」



 咲真の身体が、ゆっくりと、後ろに倒れていく。


「まっ!」

 それを見て、葵が咲真に向かいながら、手を伸ばす。


「むしろ、あなたがいたから、僕、仕事、楽しかった

 です」

 そんな咲真の表情を見て、絆音は目を見張り、葵は、伸ばした手が、体が固まる。


「ありがとうございました」



 その表情(かお)は紛れもなく、咲真の一番の何を含んでいるわけでもない、純粋な、












 笑顔であった。















 咲真は、そのまま、後ろへ、倒れた。













 





















 



 




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