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情報屋shrineの人助け  作者: 目黄葉
第三期
17/20

いつも通り=喝


 津城はあぁ、と思う。


(これは今、私が何を言ってもこの子は死んでしまう)

 咲真は“死“に対する覚悟が、いや、



 どこまでも、“死“を恐れない、むしろ、“死“は長年の悲願だと言わんばかりの目に、絆音はそう、悟った。


(ここで、説得するのは、無理だ)

「………私が何を言ってもあなたの“死ぬ“という決意は

 揺らがないのならば、




 咲真さん、勝負しませんか?」

「勝負?」

 咲真の顔は難色を示す。


「私にあなたを説得するチャンスをもう一度だけくだ

 さい。

 お願いします」

 絆音は咲真に頭を下げる。


「………内容によります」



「私があなたの“死“を止められれば私の勝ち、



 私が説得できず、あなたが死んでしまえば、あなた

 の勝ち」

「あなたにしかメリットないじゃないですか」


 今の絆音の言葉だけを聞くと、確かに咲真が死ぬのを止めたい絆音にしか、利益がない。


「もちろん、あなたのメリットはありますよ。

 私が負ければ、いえ、あなたが勝てば、



 あなたの思い通りに世間に情報を流して差し上げま

 す。


 つまり、警察に揉み消されることはございません」



 咲真に絆音ができるこれ以上ないほどの“賞品“である。


「ぇ?」

 だが、咲真の顔を見る限り、乗り気ではない様子だ。




 その様子を絆音は読み取り、説明を補足する。



 

「咲真さん、世間に任せると言っていましたよね?


 大丈夫です。

 然るべき…望むところに流した後は放置します。

 それならば、世間に任せることになるのではないで

 しょうか?」


 警察に揉み消されず、情報は確かに世間に広まる。



「ぁ、なる、ほど、」

 確かに、この勝負は、咲真にとってのメリットもちゃんと考えられている。



 咲真は笑って、こう言った。

「それなら、構いません。





 まさに、一世一代の大勝負、ですね。





 死んでみせますから(勝ちますからね)


 咲真はそう言った後、微笑を絆音に向けた。



 絆音はそれを水のように滑らかに流し、反論する。


「いえ、生かします(私が勝ちます)







 ルールは三つ」


 絆音はすくっと、立ち上がり、咲真の前に人差し指を立てた。





「一つ、勝敗はあなたの生死」



 次は人差し指と中指を。


 


「二つ、佐々木恭介さんに会いに行く時は申告してか

    ら行くこと」




 最後に薬指を加えた。




「三つ、あなたが勝てば、私は先ほど前述した通り

    情報を流します。





    そして、私が勝てば、まあ、その時決めます」


 絆音の言葉に咲真はすかさず反応し、煽る。

「賞品を決めないってことはもしかして、勝つ自信、

 ないんですか?」




 絆音は軽くそれをあしらう。

「まさか、自信満々なので何をしてもらおうか迷って

 いるだけですよ」


 




 絆音は冷たくも暖かい真剣な目で咲真に向かって確認をする。



      「異論はありますか?」



 咲真は“やってやる“という笑みを浮かべ、

「ないですよ。それじゃあ、僕早速今夜()()()

 会いに行きますからね」

 









 決戦は、今日だと宣言した。












 絆音はそれを予想していたのか、

「了解致しました。






 それでは、また今夜お会いいたしましょう。





 あぁ、安心なさってください。


 あなたの仕事が終わる時間を見計らい、佐々木恭介

 さんの居場所を送るので」



 それぐらいのサポートはしますよ、と言った絆音の顔が咲真の目には、







 本当に、ほんの、ほんの少し、泣きそうに見えた。




  *  *  *



 流石に咲真はもう時間で、仕事へ行かねばならないので、退席した。




 絆音一人の提監の部屋に、白木が入ってきた。




 だが、影が薄かったのか、絆音が俯いていたからか、白木は絆音のすぐそばに来るまで気づくことはなかった。




 故に、殆どの割合で掠れている口笛をしながら部屋の中ほどまでは(それほど広くはない部屋だが)上機嫌だった。




「うおっ!なんだ、津城いたのか」


 カッスカスの口笛を聞かれた恥ずかしさからか少し顔を赤くして白木は飛び退いて大袈裟に驚く。



 絆音が顔を上げると白木はぶっきらぼうではあるが心配そうに問いかける。

「って、なんて顔してんだよ」



 水本や、塚田あたりが見れば、絆音の顔は微塵も変わらず、いつも通りだろうが、



 さすがは白木、絆音が顔に出した少しの変化を見逃さなかった。




 絆音が何も、答えないので白木は絆音が不安な顔をしている理由を探し、“まぁ、これが理由だろうな“と思い、咲真の話を振る。


「………あ、……あーあれか?谷川の件か?」



 その言葉で絆音は震えた声で、









 ずっと、





 ずっと、








 胸に押し込んで詰まっていた言葉を吐き出す。




「私が、今日の夜、






 咲真さんを止められなければ、






 彼は、


 彼は、



 死んで、しまいます」

 

 声は今にも泣きそうな声なのだが、顔は少し割れてはいるが、依然、氷のままだ。

「………そうか。怖いんだな?」


 そんな絆音の話に適当に相槌を打つ白木。


「はい、

 私に彼を止めることができるのかどうか、






 怖くて、







 不安で、たまらない」


 白木は弱音を吐く絆音に慰めの言葉は逆効果だと知っていた。



 では、何が効果的か?それは慰めの反対をしてやれば良い。



 即ち、煽りだ。




「どうした?お前らしくもない」

「え?」

 白木の言葉が予想外だったのか、絆音はきょとんとする。


「そうだろう?



 俺が知ってるお前は、誰よりも、


 狡猾で、冷静、


 そして、卑怯と言われようが、


 自分が持てる全てを使い、仕事(任務)を果たす。





 それが今はどうだ?


 失敗するかも、と


 不安と恐怖に押しつぶされそう、なんて情報屋shrine(お前)

 らしくもない」



「そんなのっ!私の言葉で、あの人の命が、」

 絆音はそれ以上言葉にするのははばかられるようで、行き場を失いわなわなと震える唇を噛む。



「それはお前のせいじゃない。

 お前にもあったろう?()()()()時期。


 ってことはその時引き止めてくれたやつも今のお前

 と同じ気持ちだったってこった」

「あ、」


 絆音は虚をつかれたように固まり、脳裏に一人の人物が浮かぶ。


「アイツの気持ち、わかってよかったんじゃねーの?」


 絆音は目を伏せる。

「そうかもしれない、ですね。



 でも、怖い、ものは、怖い、です」


「じゃあ、やらないのか?」

「やります」

「怖いのにぃ?」


 白木は更に絆音を焚き付ける。



「私は、今、あのとき、生かしてくれた(止めてくれた)ことにとても、

 感謝しています」




 絆音はゆっくり深呼吸を挟み、だから、と続ける。

 白木はそんな絆音をいつにも増して真剣な表情でじっと、見つめ絆音の言葉を待っている。


 


「怖いものは怖いです、けれど、




 あの人が、いつか、“生きててよかった“と思えるよ

 うに、私は私のできることをしたいと、思うのです」






 満足いく回答だったのか、白木はニヤリといつもの笑みを浮かべ、情報屋shrineに()を入れる。



「それなら、いい。



 提携組織監視係係長、白木聡から依頼だ。






 谷川咲真を()()()()()で止めてこい。






 情報屋shrine、この依頼受けてくれるな?」








「っ!」

 絆音の目が一瞬、チラと輝いた。




 公安(白木)から直々の依頼ということは、結果がどうなろうと、




 “責任は俺が取る“


 もしくは


 “これでこの件はもうお前だけの件じゃないぞ“

 と言っているのと同義である。


 だが、この白木の場合、もう一つ意味が隠されている。




 “公安()の依頼だぞ?


 いつも通り、遂行しろ《やれよ》”



 絆音の自信を出すために、白木はあえて、いつも通りの文言を言った。








 絆音は、白木の言葉の意味を一滴も漏らすことなく汲み取り、いつも通りの文言を返す。



「もちろん。





 情報屋shrineの名にかけて、必ずやこの依頼、

 達成して見せましょう」







 割れた氷は元に戻り、反対に胸には熱い決意を宿して。







  *  *  *






 夜。


 咲真は仕事を終え、路地をしとしと、と少し重い足取りで歩いていた。



 昼休憩の際にスマホに届いた、絆音からの


 “佐々木恭介さんにお会いになるのでしたら、

 路地か、警視庁内、

 どちらがよいですか?“


 という結構物騒な連絡に咲真は“路地“を選んだため、絆音から指定された場所へ向かっている。



………………………ちなみにその指定された場所に警視庁からそこに行くまでの道順が、とてもとても、それはもう、びっしり情報が書かれてきた。



 それが、とてもわかりやすいのが咲真にとって少し複雑だった。



 そんなことを考えていると、咲真のスマホに電話の着信が、来た。相手はもちろん絆音だ。


〈もしもし、咲真さん。津城です〉


「もしもし、咲真です。もうすぐ指定場所に着きます」

〈はい、



 今日は“情報屋shrine“の名で、佐々木恭介さんを呼

 び出しておりますので、ご了承を〉



「了解です。


 というか、今日は、そうなんですね?」

 そう言って咲真はイタズラっぽく口元をゆるめた。


〈はい。

 警察の闇の部分を暴くもの、も度々依頼されますの

 で。




 だから私は、一部の人から嫌われているんですよ。


 監視されてるみたいで気味が悪い、と〉



 そんな絆音の言葉に咲真は水本との会話を思い出し、そういうことか、と納得する。

(だから、水本さんは、情報屋shrineのことを毛嫌い

 してる奴もいるって言ってたのか)


 一度は納得したものの咲真は、ん?と首を傾げる。

「……それ、絶対に

 監視されてまずいことがある奴の方が悪いと思うん

 ですけど」


〈それはそうですよね。月麦も同じことを言っていま

 した〉

 

「そ、そうですか」

(なんか、

 バカ強い人(あの人)と同じって結構複雑、、



 だって多分あの人脳筋じゃ)

 咲真がそんなことを考えたところで絆音が話を戻す。


〈とりあえず、





 糸繰咲真さん、道を間違えないように、気をつけて

 お進みください。




 そして、佐々木恭介さんとゆっくりとお話なさって

 きてください。












 そのあとは情報屋shrine()ともお話いたしましょう〉



 絆音からの電話はこの言葉を最後に、切れた。




 咲真はツーツーツーと、機械音を発するスマホを見つめ、





「いや、一番最初に言うこと道なの?」



 と、不満を、苦笑しながら口にした。



 





















































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