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情報屋shrineの人助け  作者: 目黄葉
第三期
15/20

揺らぎ



「え?、





 佐々木先輩の、父親が、僕のお父さんに、罪をなす

 りつけた?」


 明らかに困惑しながら飲み込もうとする咲真、だが、脳が拒否するように、飲み込むことができない。


「信じたくないと思うよ。


 でも、それが、事実なんだ」

 塚田の顔も泣きそうに歪む。







 そこに絆音が水を差すように言う。



「なぜ、あなたはそれを調べて事実に行き着いたのに

 も関わらず、何も行動しようとしなかったんです 

 か?」



 






「それは、……その、」


 塚田は言い淀み、考え込むように目を閉じる。



 少し経った後、塚田は固く瞑った目をゆっくりと開き、咲真に謝罪をした。

「咲真くん、ごめんなさい。俺がもっと、本当にもっ

 と、度胸があれば、よかった」




「先ほども、そんなこと言っていましたが、どういう

 ことですか?」

 咲真はとりあえず、佐々木のことを考えるのは後に回し、目の前の塚田に焦点を向ける。












 塚田は自らの拳を握りしめ、重々しく言葉を絞り出す。



















「実は、俺、今その佐々木恭介に、脅され、てるんだ」


「承知しておりますとも」











 そんな意を決した重い塚田の告白に、間髪入れず絆音は通常運転で、“知っている“と言った。



「え?」


 塚田は自分の意を決した告白を軽くいなされたことに驚愕した。



「え?知ってるって、」



「忘れました?



 私、情報屋shrineですよ。




 これしきのことがわからずその()を名乗れる

 わけがないでしょう」


 “情報屋shrine“であることに誇りを持ち絆音は言う。



 咲真はそんな絆音を何度か見たことがあったため、気にせず塚田へ問う。

「それで、脅されてる、と言うのは、」



「説明しにくければ私から端的に言いますが……………

 どうしたいですか?」


 絆音がコテンと首を傾げる。




「いえ、自分の口から、言います」


「そうですか」

 絆音の反応が冷たく見えてしまうかもしれないが、絆音は今、ほっとしていた。


(私が言っても良かったけれど、やっぱりそれは味気

 ないよね)



「情報を掴んで、まずは、佐々木、…先輩に話を聞き

 に行ったんだ。本当かどうか。


 怪しまれないように、居酒屋で」




  *  *  *




 それは、咲真が警視庁捜査一課に配属された頃のこと。



 都内の居酒屋に塚田と、佐々木恭介の姿があった。

 

「久しぶりですね。佐々木先輩」

「まさかあんな新人だったお前が今や警視庁捜査三課

 とはなぁ!!」





 そう言って、ガハハと、豪快に笑う男こそ、

 




 佐々木葵の父親であり、





 塚田が、咲真の父親に横領の罪をなすりつけた、と睨んでいる、






 佐々木恭介である。



「、先輩も今や上層部所属じゃないですか」

 塚田の笑顔の裏にあるものとは、


(アンタ、糸繰先輩嵌めたんじゃないのか?

 だとしたら、よくそんな豪快に笑ってられるな



 俺が絶対、糸繰先輩の無実を認めさせる)












 復讐心にも似た、()()であった。











「まぁな!だが、こっちの仕事も大変なんだぞ〜」


 そこから塚田はお酒を一滴も口につけず、恭介がほどよく酔うのを待つ。


「娘が警察になってさぁー、もう本当に心配」

 今日、何度目かの話を聞き、酔っていることを確信したのち、塚田は本題に入る。


「ところで、先輩」

「ん、なんだ?」











「糸繰先輩のこと、覚えてますか?」




















 少し、だが、明らかに、恭介の顔が強張った。




 それを見逃す塚田ではない。

「覚えて、ますよね?」


「あぁ、もちろんだ。

 だが、なんで、今更、糸繰の話を出すんだ?」

 佐々木は表情を隠すように俯く。


「あの時俺は、警視庁にすら所属していませんでした

 から、ふと、気になってしまって、





 あの時、糸繰先輩って、佐々木先輩の直属の部下で

 したよね?」

 塚田は笑みを崩さぬまま世間話をするかのように聞く。


「そうだ。だから、なん」

「あの時、糸繰先輩は横領なんかしていない、という

 のが、俺の意見です」



「違う。あれは糸繰が犯人だ」




「違います。

 調べたら、糸繰先輩が配属される前も、ほんの少し

 ずつの金額ですけど、横領はありました」

「別のやつなんじゃないのか」







「えぇ、糸繰先輩ではありません。



 そして、


 その記録、あなたが、警視庁捜査一課に配属された

 時期と、丸かぶりなんですけど、これに何か意見は

 ありますか?」


(これなら、言い逃れ、できないはず)


 塚田は小さく息をふぅー、と吐く。


(あとは、先輩がどう出るか)



 恭介が顔を上げた。















 







 その顔は、いつものように、()()()()()()()()()









(なんでっ!笑ってんだよ!)


 塚田の背中につぅー、と謎の汗がつたう。









「すごいな、一人で調べてそこまで辿り着くなんて」

 さらに、恭介は感心するように言った。














「はい?

 もっと、狼狽えたり、とか、は、ないんですか?」






「自分で言うのもなんだが、これまでも何回かバレて

 るんだよ」




「え?」


 塚田は目を見張る。






「その度に、俺は()()してきたんだ」



()()?」


 塚田は顔を顰め聞き返す。


「なんて顔してんだよ。










 ところで、お前、独身だよな?」



「喋ると思います?」

 警戒心を隠さず、塚田は恭介を睨む、が恭介はそんなのどこ吹く風で話す。


「だよなぁ。


 それでさ、お前、どうせ、糸繰の無実証明できた

 ら、自分は辞めさせられてもいいとか思ってるよな

 ぁ?」




 塚田は答えない。






  







 恭介と目が合い、塚田はようやく気づいた。

「っ!」







 恭介の目が一ミリも笑っていないことに、









「でもさぁ、これならどうだ?

 俺の情報(ソレ)どこかにバラしちゃったら、









 君の上司、上野博樹、だっけ?










 に、なんかしちゃうかもしれないなぁ」









「は?」



 塚田の思考が停止した。










「なんでっ!


 なんで、そこで上野さんが出てくる?!」



 我に返った塚田は敬語も忘れ、塚田は恭介の方へ乗り出す。






「おぉ〜、怖い怖い、ま、そゆことだから、()()尊敬する先輩を失わないように、





 君が懸命な判断をすることを願っているぜ。









 塚田滋くん?」



 そう言って、恭介は居酒屋の代金を机に置いて、出て行った。




  *  *  *



「って言うわけで、俺マスコミとかに情報、もらせ、

 なくて、ごめんね」

 塚田は再度謝る。






「咲真くん、君がそんな顔しなくていいんだよ?」




 咲真は怒りやら、色々な、言葉で言い表せない感情がないまぜになった、顔をしていた。





「なら、塚田さんは謝らないでください、悪いのは、

 佐々木恭介、……さん、です。







 むしろ、脅されているのにも関わらず、情報を言っ

 てくださり、ありがとうございます」





 咲真の言葉を聞き塚田は申し訳なそうな顔をやめ、

 穏やかな声で、咲真に話しかける。


「俺の分まで行動、してくれる?」





「はい!もちろんです」




 塚田の問いに咲真は笑って返した。





  *  *  *



 塚田と別れ、二人は提監へ戻った。




 白木はいなかった。




 ゆっくりとお茶を啜る絆音に咲真は口を開く。


「………………津城さんは知って、たんですよね?」




「はい。ばっちりと」



「ですよね〜、………これから、どうしよう?」

 咲真はボソッと呟く。




「どうする、とは?」





「いえ、その」

 咲真はしばし言い淀んだのちに、口を開く。




「復讐、しようって、決意、したのに、





 それが、佐々木先輩のお父さんって聞いて、」





「決意が、揺らいでいる、ということですか?」

「はい」













「なぜ?」

 絆音は淡々と質問をする。















「なんでかって、そんなの!」

「佐々木恭介さんに復讐すればどうあれ、佐々木葵さん

 が傷つくからですか?」


「っ!、そう、です。わかって、るじゃないですか」



「なぜ、それが決意が揺らぐ理由になるのですか?







 あなたの決意はそんな簡単に揺らぐものなのです

 か?」





「簡単には揺らぎません!




 でも、佐々木…葵先輩は、本当に優しい、方で、







 僕がミスをしてしまっても笑ってフォローしてくれ

 るような人です。







 そんな、優しいひとに、





 僕と同じような苦しみを与えるなんて、!そんな、




 恩を仇で返すような真似、できません」


「では復讐は諦めるんですか?」








「復讐も諦めたく、ないんです。





 だから、今、感情ぐっちゃぐちゃで。




 少し、考える時間が、欲しい、です」




「わかりました。




 では最後に私とお話しましょう。




 それでも考える時間が欲しいのであれば、時間を

 与えます」


「わかり、ました」










「私は今、とてつもなくホッとしています」

 絆音は自分の胸に手を当て言った。


「ホッと?」


「私は、あなたが佐々木葵さんがあなたの悲劇の元凶

 のお子さんだと知って佐々木葵さんに恨むことが

 なかったことに、






 あなたが他人の迷惑を顧みず、自分の利益や欲求を

 優先するような、人ではなかったことを





 とても嬉しく思っています」



「当たり前じゃないですか。


 驚きこそすれ、恨むなんて、しませんよ」




 それを聞き、絆音は





「一つ謝罪しなければならないことがあります。





 私は、あなたの本性を知るために酷いことを言って

 しまいました。




 すみません」


 絆音は頭を下げる。




「構いません。それで、話は終わり、ですか?」


 咲真の問いに絆音はきょとんとした顔で返す。

「まさか、







 これからです」



 絆音はしっかり感情を込めて、話し始めた。



 




 







 

 



 


 







































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