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情報屋shrineの人助け  作者: 目黄葉
第二期 「怪盗:鶯」
11/20

あなた


「何をしているんですか?中島さん」


「煙が上がってきていたので何事かと駆けつけたのですが」


ガスマスクは何です(そんな準備万端で)?」

「それを言う貴方もガスマスクしてるじゃないですか」


「これは捜査三課のものを()()()が何をするかを考えた上で、借りたものです」

 笑みを崩さず咲真は淡々と言う。


「あなたって、私が怪盗のように言うんですね」


「そうでしょう?中島さん、いえ鶯さん?」


 長き沈黙の後、中島は観念したようにため息をつき先ほどのような爺さんの声ではなく、若い男の声を出した。



「どこで気づいた?」


「最初は情報屋:shrineと見た動画で違和感を覚えたところです」


「は?情報屋:shrine?」

 警察官から出てくる言葉だと思っていなかったようで執事服を着ている爺さんの格好な分、その仕草がまったく似合っていない。

「はい」


「で?どこが違和感だったんだ?」


「歩き方、ですね。

 まず、その時の歩き方とあなたがあまりにも酷似していたことと、動画の鶯は女性にしては身長が高めで最初は厚底かと思いましたが、違いますね?」


 咲真の説明に不満げながら納得して言った。

「なるほどなぁ。

 歩き方、気をつけていたんだけど。

 そう、正解。厚底の半分くり抜いて本当の身長を隠した」


「それと、情報屋:shrineに調べてもらったんですが、あなた、中島としてこのお屋敷で働き始めたのは二ヶ月ほど前でしょう?」

「あぁ」


 咲真は微笑む。


 目の前に怪盗がいるという緊張に飲まれないように。


(逃げ道は僕が塞いでいるこの階段のみ。だから大丈夫、だと思いたいな)


「はは、ご明察。宝石盗むの無理そうだし、今回は諦めようかなぁ」


(あ、この余裕は逃げる気満々だな?)


 何とか引き留めようとした咲真の頭に出てきたのは、


「忍び屋:lionのこと、どう思ってるんですか?」


 鶯が、月麦に口説かれていたことだけだった。



  *  *  *



「ふひっ、さっきから守ってばかりじゃつまらないんだけど~」


「悪かったね」


 咲真が中島に話しかける少し前、月麦は自分のことを守りながらイズクをある場所へ誘導しようと目論んでいた。


〈あと、三十秒〉


 そして、イヤホンから聞こえてくる絆音の声。


(よし、あとは、見る!そして隙を!)

 月麦はチラッと誘導させようとする場所に目を向けて確認した。


〈あと、十五秒〉


 月麦は隙を待ち、あと十秒のところでイズクの襟元を掴んだ。

「!?」

 イズクは予想していなかったようで目を見張った。


〈あと十秒、九、八、七〉


 そして、あと五秒のところで勢いをつけて確認したところへ投げ飛ばし、イズクと逆方向に跳んだ。


「うぇっ!」

 なんとも情けない声をあげながら月麦の狙い通りのところへ飛んでいった。


〈三、二、〉







〈「(いち)!」〉


 月麦と絆音の言葉が重なったその瞬間、盛大な爆発音が響いた。


「ぁっ!」


 苦悶の表情を浮かべるイズク。


 それも無理はない。


 月麦が絆音に“ありったけで作動させて”と頼んだものは一回目の爆発音がなった理由であり、月麦が戦う前に確認していた、



 超高性能の小型スピーカーであった。



 つまり、機械である。


 それならば、絆音はハッキングすることができる。


 しかし、絆音であってもいつでも任意の時間に音を出せるようにするためには少々時間が足りなかった。


 そのため、音を出すために時間を設定し、その時間まであと何分か、何秒かを月麦に知らせていたのだ。


 月麦はイズクとは逆方向に跳んでいたものの、あまりの大きさに失神しそうになった。

 と、いうことはそれを間近に聞いたイズクが失神したのも当然だ。


「ずるいとか言わないでよ?

 戦いにおいては使えるもの使って勝てるんならそうしない理由なんてないよ……って、聞こえてないよね」


 月麦は伸びをし、声を絞り出した。


「うし!終わったぁぁ!!あとはこいつしばって、西側確認しにいって、屋敷戻らないと。

 後輩くん(咲真)にばかり任せてらんないからね」


 仮面の下でニヤニヤと笑いながら。


  *  *  *



「ど、どどど、どう思ってるか??それは、その、えっと」


 目に見えて動揺する鶯を見て咲真は、


(ビンゴ。やっぱり惚れてんじゃん)

 と確信を持って口を開く。


「あなたが一週間前、鶯の目の前に現れた理由は三つありますね?

 一つ目、()()()であることと

 二つ目の、()()()()()()()()こと

 三つ目は情報屋:shrineに警察に情報を送ってもらって警備をつけてもらうことが理由ですね?」


「それが?」

 まだ少し答えながら


「そのために忍び屋に接触する必要があった。でもあなたは忍び屋に口説かれ惚れてしまった」


「ほ、惚れてなんか、」


「その忍び屋の声は“こんな声”だった?」



「?!」


 咲真は月麦の声マネをした。その精度は鶯が思わずときめいてしまうほどだった。


「俺ね、大体の人の声ならマネできるっていう特技があるんですよ。

…………………もしかして一瞬でもときめいちゃいましたか?」


「そそそそそそそ、そんなことないし!」


 咲真は戦えば負けること、機嫌を損ねれば命を落とす危険があることはわかってる。


 だから、咲真は時間を稼ぐことに命をかける。


(必死に時間稼いでんだから、早く来いや、月麦(先輩さん)よぉ!!)


 内心で反抗的な笑みを浮かべ、ひたすらに時間を稼ぐ咲真、月麦が来るま「ごめん。待たせたね」


















 そう言いながら咲真の肩に手を置いた月麦。



 月麦が、来た。



  *  *  *

 


(ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!ご本人様登場?!え、待って、今オレ爺さんの格好してるんだよ!合わせる顔がなぁぁああい!

 でも取らない方がいいよねぇぇ!!

 ふくざつ、、)


 月麦は鶯の気持ちなど露知らず、咲真とこそこそ話している。


(てか、なんでなんでなんでなんで、オレより目の前の警官の方と親しそうなんだよ!

 ってかlionも来たってなると本格的に逃げなきゃじゃん。

 いや、まだここいた〜い)


 と、未練タラタラな鶯だが逃げた方がいいことはわかっている。


(逃げるかぁぁ、)


「それじゃあとりあえず、逃げさせてもらうね?」


「させると思う?」

 月麦は予想していたのかすぐさま鶯の懐に潜り込んだ。


 普通の敵ならば“やばっ“とか“しまった“とか思うところを鶯は

(やっば、カッコいいぃぃ、カッコ良すぎる。むり、やっぱ今回逃げよ。耐性がなさすぎる)

 とどこまでも盲目であった。(月麦はお面をつけているのでカッコいいかどうかは別である点も含めて)


「させてもらうよ、忍び屋」

 


 鶯は老執事の姿でニタリと笑い例に漏れず煙玉を落とした。


「また煙か…………流石に同じ手は喰わないよ」

 月麦は焦ることなく神経を研ぎ澄ます。


 そして、月麦はカッと目を見開き煙の中に手を伸ばした。


「さすがは忍び屋」

 


 月麦の手は鶯の腕を掴んでいた。


 それに鶯が乱心しないなんてことはなく、

(やっば、いや、回答としてもヤバいんだけどlionに触れられてるってのがダメだよね。このままがいい、なぁ!!

 でも逃げなきゃ。あぁ、悩む。でもボスがなぁ、)


「でも、甘いな」

 鶯はこう呟き、月麦を振り払った。


「くそっ」

 その隙に鶯は咲真を軽々かわし、階段を駆け上がった。



 つまりは、逃げられたということだ。


 


 だんまりをきめる咲真と月麦。


〈二人ともお疲れ様。宝石は守れたんだから、気にしないでいいからね〉


 絆音の言葉によって、先に口を開いたのは咲真だった。


「そういえば、東側と西側の森の状況はどうだったんだ?」


「東側も西側もとくに火とかは発生していなかった。だけど、どっちも人は眠っていたよ。確認したけど命に別状はなかった」

「なるほどね。了解ありがとう」

 事務的?の様な連絡をした後に咲真が月麦に

「そろそろ身を隠した方がいいんじゃない?忍び屋さん」

 嫌味を込めてそう促した。



「へいへい。もう行くよ。じゃあ()()()



 そう言って月麦も姿を消した。



  *  *  *



「まったくさぁ、大音量でスピーカー流すとは思わないじゃあん」

 そう呟いて起きるのはもちろんイズクであった。


 それに反応し、イズクが縛られているのを解く一人の男。


「まったく、やられてどうするんですか?私のところは普通に眠らせただけですけど。

 忍び屋:lionが現れて?でもそのヒトにやられるあなたじゃないでしょう?」


「えぇ〜、ふひっ、依頼主からは忍び屋:lionと警察を半分ほど引きよせるなら、暴れてもいいっていう依頼だったでしょ〜?

 ならいいじゃん?仕事はした〜。帰ろ」


「そうですね。イズク()


 そう言って二人は夜の闇に消えていった。



  *  *  *



「はあ、まさか失敗するとはなぁ。ボスに連絡しないと」


 すっかり老執事の格好を脱ぎ捨てすっかり若者らしい格好になった、鶯。


「もしもし」

〈鶯か〉

「申し訳ありません。ボス。失敗してしまいました」


〈そうか。処分は追って言い渡す〉

「…………はい」



 こうやってそれぞれの夜はふけていく。



  *  *  *



 それから三日後、提監(ていかん)の部屋に絆音と咲真の姿があった。


「それじゃあ、始めましょうか。復讐(あなた)のことを」






 















 










 第十一話読んでいただきありがとうございます!

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