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3話 いざ異世界

「名前はまだしもなんで天使のことや能力のことを隠すんですか?」


名前を付けるのはまだわかる。武器の天使と言い続けるのも変に感じ始めてきたところだからアメノと名前が付くのは呼ぶ側も呼ばれる側もうれしい。実際、アメノは自分の名前を繰り返し発声している。しかし、天使のことや能力のことは疑問に映る。


「ようは嘘を憑くってことでしょう?そんなことをすれば口を滑らしたりなんだったりでバレたとき信用だったりを無くしちゃうと思うんですけど。」

「確かに、人の子の疑問は正しい。まずは一つ目の疑問。能力の隠ぺいについてだが、これは異世界では常識だ。いつどこから災厄がわに情報が洩れて対策でも立てられたら目も当てられない。だからこそ人の子たちはある程度は隠ぺいする。」

「完全に別の能力とするんじゃなくてあくまで表面情報だけを明かすってわけですね。」

「ちなみに天使であることを隠すのは私が天使ではなくなるから。」

「え?そうなの?」


アメノがどうでもいいことのように伝えてくる。俺は確認を取るようにキリノさんを見る。キリノはこくんと首を振り肯定する。


「たしかに、災厄は私たちの敵でもある。だがあたしたちは公平だ。人の子に天使を与えてしまえばあちらにもなにか渡して公平を保たなければならない。そこで天使の力のほとんどを封印して均衡を保つんだ。世界に降りるとき、武器…アメノは半天半人になる。」

「アメノはいいのかそれで…。」

「べつにどうでも~。」


ええ…。


「というわけで、天使でもないやつが自分は天使だと言ったら色々面倒なことになる可能性が発生する。それを防ぐためにも能力の隠ぺい、アメノの設定を考えなければいけない。」


なるほど。そういわれてもパッと思いつけないな。アメノを改めて見る。顔は良いほうだ。おそらく異世界のほうでも有数の美少女だろう。…今思ったんだがそんな美少女を前線に立たせて後衛からサポートだけをする俺ははたから見たらそうとう情けないのではないか?…いや、そんな時代錯誤なことを考えてはいけないな。これは当人たちの話だ。うん。


「だったら能力名は【他力本願】。私のことは妹ってことにしたら。」


そんなどうでもいいことを考えているとアメノがなかなかなことを言った。絵面の最低度が100%になってしまった。さすがにそれは擁護できないよ。キリノさんもどうしたものかと困っている。でも、まあ、うん。


「それでいいや。」

「いいのか本当に⁉」

「だってそれが一番しっくりくるじゃないですか。」

「まあ、人の子らが良いというならこちらもいいのだが。」


アメノは自分の案が採用されてムンと胸を張った。キリノさんはまだ困惑しているが一度深呼吸するとフッと小さく笑った。


「ひさしぶりだなこんな愉快な転移者は。…そんじゃ今から世界に飛ばす。なにか最後にいうことはあるか?」

「キリノさん。ありがとうございました。」

「土産話に期待してね。」


俺はペコリと頭を倒し、アメノは心配させないためか、少しふざけた調子で答えた。それにたいしてまた、キリノは笑った。


「それじゃあな!しっかりと楽しんで来いよ!ムラクモ!アメノ!」


キリノさんが手をふっと上げると足元の床が下にスライドする。


「アメノ。ちなみにこの後俺たちはどこにでるんだ?やっぱり安定の町中か?それとも森の中か?」

「上かな。」

「上?まさか初っ端から王様の真ん前か…。俺礼儀作法なんて分かんないぞ。」

「違うその(位的な)上じゃない物理的な上。」

「物理的?」


なんだよそれと言いかけたとき、急な浮遊感に襲われた。頭が追い付かず、言葉が出ない。いまならアメノが言っていたことも良くわかる。本当に物理的に上なのだ。そう、それは空中。下には森が広がっていて綺麗だった。これは放心状態の俺の気持ちだった。


「ちなみに、空中から始まるのは最初に特大の恐怖を味わって耐性を付けるためだよ。」


そんなアメノからの豆知識は目の前の恐怖と俺の叫び声で耳には届かなかった。

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