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RISELESS 新兵から始める王国戦記  作者: 藤堂拓哉
第二章

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第二十四話 隠れた才能

翌朝。


休憩所を出立したローウェン小隊は。


オリオルへ向けて進んでいた。


昨日まで使っていた二台の馬車は休憩所に残している。


今は。


物資を積んだ三台の荷馬車を。


ローウェン小隊の十二人が囲むようにして進んでいた。


「隊長」


歩いていたテオが、ラウルへ声をかける。


「この辺りで山賊が出ると、業者の者から聞いています」


「この辺りか?」


「はい」


テオは周囲を見ながら頷く。


「気をつけて進みましょう」


「ああ」


ラウルも周囲へ視線を向ける。


昨日までとは違う。


ここから先は。


いつ山賊が現れてもおかしくない。


小隊全体も。


自然と周囲を警戒しながら進んでいた。


しばらく進んだところで。


一行の前に。


道が二手に分かれている場所が現れた。


テオが足を止める。


「隊長」


「どうした?」


「右の林道を進めば、オリオルまでの近道になります」


テオは右へ続く道を見る。


木々に囲まれた。


細い林道。


「予定通り、このまま進みますか?」


続いて。


左側へ視線を向ける。


「左の坂を越えれば、少し遠回りになります。ただ、その先は平地に出るので、見晴らしは良くなります」


「なるほど」


ラウルは二つの道を見る。


予定通りなら。


右の林道を進む。


その方が早く。


今日の行程にも影響は出ない。


「コルティオ」


「はいっす」


「どう思う?」


コルティオも二つの道を見比べる。


「予定を考えるなら、右っすね。ただ、この辺りから山賊が出るって話なら……」


「そうだな」


二人が話していた。


その時だった。


「た、隊長……」


小さな声が聞こえる。


ラウルが振り返った。


声をかけてきたのは。


ノエルだった。


「どうした、ノエル」


「あの……」


ノエルは右側の林道を見ていた。


どこか落ち着かない様子で。


何度も木々の奥へ視線を向けている。


「右は……何か嫌な感じがします」


「嫌な感じ?」


「はい……」


ノエルは頷く。


そして。


少し迷いながらも口を開いた。


「左から回りませんか?」


その言葉を聞いて。


ザックがノエルを見る。


「いや、お前」


右の林道へ視線を向ける。


「嫌な予感ってだけじゃ変えられねぇぞ」


「で、でも……」


ノエルは言葉に詰まる。


それでも。


引き下がらなかった。


いつものノエルなら。


ザックにそう言われれば、そのまま黙っていてもおかしくない。


だが。


今日は違った。


ラウルはノエルを見る。


その表情は。


いつも以上に不安そうだった。


何かを恐れている。


ラウルにはそう見えた。


「……分かった」


ラウルはコルティオを見る。


「コルティオ」


「はいっす」


「アレンとニコを連れて、右側を偵察してきてくれ」


コルティオが林道を見る。


「了解っす」


「他は左の坂を登るぞ」


ラウルは続ける。


「平地で待機している。確認が終わったら戻って報告してくれ」


「分かったっす」


コルティオはすぐに二人へ声をかける。


「アレン、ニコ。行くっすよ」


「はい」


「分かった」


三人は小隊から離れ。


右側の林道へ向かっていった。


ラウルたちは。


三台の荷馬車と共に左の坂を進み始める。


その途中。


ラウルはノエルへ視線を向けた。


ノエルは。


まだ落ち着かない様子で歩いている。


普段から。


何かに怯えているようなところがあった。


兵士として見ても。


特別に高い適性があるようには見えない。


だからこそ。


ラウルには分からなかった。


なぜ。


ノエルは軍人になったのか。


そして。


さっきの。


あの嫌な予感は何なのか。


ラウルは。


少し気になっていた。


◇ ◇ ◇


その頃。


コルティオたちは。


林道の奥へ進んでいた。


三人はできるだけ音を立てず。


周囲を確認しながら進む。


やがて。


コルティオが足を止めた。


すぐに。


アレンとニコも止まる。


コルティオは木の陰へ身を寄せ。


その先を覗いた。


「あれ、見えるか?」


小さな声で。


二人へ呼びかける。


アレンとニコも。


木の陰から遠くを見る。


目を凝らすと。


森の中に。


人影があった。


一人。


二人。


さらにその奥にもいる。


五、六人ほど。


「さ、山賊ですよ!」


ニコが声を上げる。


「しっ!静かに!気づかれるぞ」


アレンがすぐに制する。


「ご、ごめん」


ニコが慌てて口を閉じた。


幸い。


山賊たちに気づかれた様子はない。


コルティオは。


もう一度、森の中を見る。


「ノエルの嫌な予感、当たったっすね」


まさか。


本当に山賊が潜んでいるとは思っていなかった。


「ラウルも、僕らを偵察に出して正解だったっす」


アレンも山賊たちを見ながら。


少し眉を寄せる。


「でも、山賊にしては少なくないですか?」


見えるのは。


五、六人。


それだけだった。


「たぶん」


コルティオは周囲を見る。


「ここを通る人たちを襲うために、各所に散ってるんだと思うっす」


この場所にいる者たちだけで。


すべてとは限らない。


「他にもいるっすよ、これ」


ニコが少し不安そうに辺りを見る。


「一旦、戻りますか?」


「ああ」


コルティオは頷いた。


「見つかる前に戻るっす」


三人は静かにその場を離れ。


ラウルたちが待つ場所へ戻っていった。


◇ ◇ ◇


左の坂を越えた先。


見晴らしのいい平地で。


ラウルたちは待機していた。


三台の荷馬車を止め。


周囲を警戒しながら。


コルティオたちが戻るのを待つ。


しばらくすると。


坂の向こうから。


三人の姿が見えた。


「ラウル!」


コルティオがこちらへ走ってくる。


「見てきたっす!」


「どうだった?」


ラウルが尋ねる。


コルティオは息を整えると。


すぐに答えた。


「ノエルの嫌な予感が的中っす!」


そして。


右側の林道を指す。


「山賊が潜んでたっす」


「まじかよ」


ザックが目を丸くする。


ラウルは。


ノエルを見た。


ノエルは。


少し震えているように見える。


だが。


同時に。


どこかほっとしているようにも見えた。


自分が感じたものが。


間違いではなかった。


そう思っているようだった。


「隊長」


今度はハンスが口を開く。


「ここで山賊、潰しておきますか?」


ラウルは少し考える。


そして。


首を横に振った。


「いや」


ハンスを見る。


「俺たちの任務は、物資輸送と護衛だ」


右の林道の方へ視線を向ける。


山賊がいる。


だが。


どれだけの人数がいるのかは分からない。


「危険を冒す必要はないよ」


「分かりました」


ハンスが頷く。


テオも口を開いた。


「こちらに気づかれる前に、抜けてしまいましょう」


「そうだな」


ラウルは全員を見る。


「このまま左から進む」


予定より。


遠回りになる。


それでも。


わざわざ危険な場所へ入る理由はない。


ローウェン小隊は。


再び移動を開始した。


◇ ◇ ◇


オリオルに到着した頃には。


すでに夜も遅くなっていた。


長い行軍を終え。


隊員たちにも疲れが見えている。


「予定より遅くなってしまいましたね」


ベルンが言う。


「ああ」


ラウルが頷く。


コルティオも。


今日の行程を思い返す。


「本当なら夕方にはここを出て、野営の予定だったっすから」


予定では。


すでにオリオルを通過しているはずだった。


だが。


途中で道を変えた。


遠回りをした以上。


遅れるのは仕方がない。


「今日はオリオルに泊まろう」


ラウルが言う。


「予定通りじゃない道を回ったんだ。無理に進む必要はない」


そして。


隊員たちを見る。


「明日の朝、出立する。みんな、今日は身体を休めてくれ」


「了解っす」


それぞれが。


宿泊の準備へ向かった。


◇ ◇ ◇


その夜。


ラウルは宿泊している部屋で。


一人。


今日のことを考えていた。


山賊のことではない。


ノエルのことだった。


これまで。


ノエルはいつも。


何かに怯えているように見えた。


気持ちの問題なのかもしれない。


そう思っていた。


だが。


今日。


ノエルは。


誰よりも先に。


右の林道に何かを感じていた。


実際に偵察へ向かわせると。


そこには山賊がいた。


偶然かもしれない。


まだ。


一度だけだ。


それでも。


ラウルには。


少し気になることがあった。


もしかしたら。


ノエルは。


危険を察知することに。


何か優れた感覚を持っているのかもしれない。


まだ。


分からない。


だが。


もしそうなら。


これまで自分が気づいていなかった。


ノエルの。


隠れた才能なのかもしれない。


ラウルは。


今日のノエルの様子を。


静かに思い返していた。

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