↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RISELESS 新兵から始める王国戦記  作者: 藤堂拓哉
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/87

第十三話 もう1人の副官

中隊会議の翌日。


ローウェン小隊の宿舎では。


三人が机を囲んでいた。


ラウル・ローウェン。


コルティオ・シルフォード。


そして。


ベルン・クラウゼル。


ローウェン小隊の隊長と二人の副官。


「六月中に」


ラウルが二人を見る。


「中隊訓練と大隊訓練が行われる」


昨日。


リシアから伝えられた予定。


中隊訓練が二回。


大隊訓練が一回。


「それまでに」


ラウルは続ける。


「小隊として、ある程度形を作る必要が出てきた」


「急がなくてはなりませんね」


ベルンがすぐに答える。


「そうだなぁ」


コルティオが椅子の背へ身体を預けた。


「基礎固めだと思って、ゆっくりやってたけど」


頭を掻く。


「そういうわけにもいかないかぁ」


ラウルも。


同じことを考えていた。


焦って。


形だけを作るつもりはない。


だが。


期限ができた。


ならば。


その期限から。


逆算しなければならない。


「ベルン中尉」


「はい」


「現状の小隊について、どう思う?」


ベルンは少しだけ考えた。


「……あまり良いものとは言えませんね」


はっきりとした答え。


ラウルは黙って続きを待つ。


「ただ」


ベルンが続ける。


「連携は、できるようになってきたようにも思えます」


訓練を始めた頃と比べれば。


隊員同士。


声を掛け合うことも増えた。


互いの動きを。


少しずつ理解し始めている。


「ですが」


ベルンの表情が僅かに厳しくなる。


「戦闘面においては、正直に言って厳しいかと」


「どうしてだ?」


ラウルが聞く。


「現状」


ベルンが。


一人ずつ。


頭の中で整理する。


「戦闘面での主力は、まず隊長とコルティオ少尉」


ラウル。


コルティオ。


「それから私とバーデン少尉、ローフェンス少尉」


ベルン。


グレゴール。


エレナ。


「後は、クレイド、レイデル、ヘルマンといったところでしょうか」


アレン。


ハンス。


ザック。


「随分いるじゃん」


コルティオが言う。


「人数だけを見れば、そうです」


ベルンが答える。


「ですが」


少し。


間を置く。


「バーデン少尉とザックに関しては、連携が見込めません」


「……」


「二人とも、個人としては戦えます」


ベルンは。


冷静に続ける。


「ですが、自分の力だけで戦えばいいというものではありません」


ラウルは。


黙って聞いている。


「今のままなら」


ベルンが言う。


「各個撃破されて終わるのが目に見えています」


「あぁ……」


コルティオが。


苦笑する。


「確かに、あの二人は我が強いからなぁ」


「それだけではありません」


ベルンはさらに続けた。


「他の隊員も心配です」


ラウルがベルンを見る。


「ハーシェルはまだしも」


テオ。


「ベイル、リードは……」


ニコ。


ノエル。


ベルンは。


少し言葉を選んだ。


だが。


結局。


そのまま言う。


「戦闘要員として考えるなら、問題外です」


厳しい。


だが。


四年間。


小隊副官を務めてきた男の評価。


「ハルデリックも」


ベルンが続ける。


「力はあります」


ロッコ。


「ですが、あの力をどこで使えばいいのか」


首を振る。


「私には、まだ分かりません」


そして。


ラウルを見る。


「隊長の言う適材適所」


「……」


「それが彼らのどこにあるのか」


ベルンは率直に言った。


「私には見当もつかないです」


ラウルは。


そんなベルンを。


少し見つめる。


「そうだろうか?」


「はい?」


「むしろ」


ラウルが言う。


「私より彼らのことを見ているようにも思えたけどね」


「いえ」


ベルンが僅かに姿勢を正す。


「そんなことは」


「少なくとも」


ラウルは続ける。


「今の説明だけで、かなり見ていることは分かる」


ベルンは。


何も言わなかった。


ラウルは少し考える。


「ロッコのことは」


「はい」


「少し考えがある」


ベルンがラウルを見る。


「考え、ですか?」


「ああ」


だが。


ラウルはそれ以上を話さなかった。


まだ。


確信があるわけではない。


「それと」


ラウルは続ける。


「グレゴールに関しては、特に問題とは思っていない」


「……バーデン少尉を?」


ベルンが少し意外そうな顔をする。


「ああ」


ラウルは頷く。


「彼は軍人だ」


方針には。


反発している。


ラウル自身とも。


決して。


良い関係とは言えない。


それでも。


「命令には従うさ」


個人的な感情と。


軍人としての行動は。


別。


少なくとも。


ラウルはそう見ていた。


「じゃあ」


コルティオが身体を起こす。


「問題はザックだね」


「そうですね」


ベルンもすぐに同意した。


「彼は我流で荒いですが」


実戦訓練で見せた。


ザックの剣。


「剣術には長けています」


そして。


「体力もある」


走り込みでも。


最後まで残った。


「根性もあります」


ベルンは。


一度。


息を吐く。


「ないのは」


ラウルとコルティオを見る。


「規律だけですね」


「……」


否定しにくい。


「だからこそ」


ラウルが言う。


「知りたいな」


「何をです?」


「なぜ」


ラウルは。


机の上で。


指を組む。


「問題行動を起こすのか」


単に。


規律を嫌っているだけなのか。


上官へ反発したいだけなのか。


それとも。


別の理由があるのか。


「確か」


コルティオが記憶を探る。


「前回は、上官を殴ったんじゃなかったかな」


「上官を?」


ラウルが。


コルティオを見る。


「うん」


「理由は?」


「それが」


コルティオが少し首を傾げる。


「理由までは資料になかったと思う」


「……そうか」


ラウルは。


少し考え。


すぐに言った。


「調べられるか?」


「任せろっす!」


即答。


「……」


一瞬。


静かになる。


ベルンが。


二人を見る。


そして。


少し笑った。


「お二人は」


「?」


「本当に息がぴったりですね」


ラウルとコルティオが。


顔を見合わせる。


「軍学校からの同期だからですかね」


ラウルが。


少し笑う。


「いやいや」


コルティオが。


嬉しそうに手を振る。


「僕はラウルに助けられてばかりっす!」


「……」


ラウルがコルティオを見る。


「出てるぞ、コルティオ」


「え?」


コルティオが。


一瞬。


固まる。


「あっ」


自分の口を。


手で押さえた。


だが。


すぐに。


ラウルを見る。


「ラウルも敬語出てるっす!」


「……」


ラウルが頭を抱える。


「またか……」


少し前にも。


テオから。


同じことを指摘されたばかり。


立場では。


ラウルが上。


だが。


ベルンは年上で。


階級も上。


軍歴も長い。


どうしても。


無意識に。


敬語が出る。


「ははっ」


ベルンが。


小さく笑った。


「私は気にしませんよ」


ラウルが顔を上げる。


「お二人のやりやすいように、やってください」


ベルンは二人を見る。


「支えますから」


「……」


ラウルは。


少しだけ。


目を見開いた。


ベルン・クラウゼル。


四年間。


副官として。


小隊を支えてきた男。


自分より。


軍人として。


遥かに長い経験を持っている。


その男が。


今。


自分を支えると言っている。


「ありがとうございます」


ラウルは。


そう答えた。


ローウェン小隊には。


コルティオがいる。


軍学校から。


共に歩いてきた。


誰よりも。


息の合う副官。


だが。


それだけではない。


経験を持ち。


隊員を見て。


足りないものを指摘し。


自分たちの未熟さまで。


受け止めてくれる。


もう一人の副官。


ベルン・クラウゼル。


ローウェン小隊は。


少しずつ。


隊員だけではなく。


それを率いる側も。


形になり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。