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RISELESS 新兵から始める王国戦記  作者: 藤堂拓哉
第二章

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第八話 軍拡

王宮。


シャルルが向かった。


とある一室。


その中には。


すでに一人の男が待っていた。


軍務長。


ヴァレン・シュトライザー。


扉が開き。


シャルルが入ってくる。


「待たせたね」


「いえ」


ヴァレンは。


一度席を立った。


シャルルが席へ向かうのを待つ。


国王が腰を下ろしてから。


ヴァレンも。


向かいの席へ座った。


先ほどまで。


シャルルが話していたのは。


王国の領地について。


そして。


今度は。


王国を守る軍についてだった。


「それで」


シャルルが口を開く。


「軍の編成はどうかね」


「はい」


ヴァレンが答える。


「現在、私のシュトライザー軍、そしてジルライト軍を中心に再編を進めております」


先の戦いで。


王国軍は。


あまりにも多くの兵を失った。


戦死者。


行方不明者。


そして。


兵だけではない。


多くの指揮官も。


失われている。


以前と同じ形へ。


そのまま戻すことはできなかった。


「ジルライト軍については、ゴルディア帝国との国境を監視させています」


「うむ」


「ハイム軍は維持」


そして。


ヴァレンは続ける。


「エンデヴァー軍は、一時的に解体しています」


「そうか」


シャルルは。


静かに頷いた。


すぐに。


人が戻ってくるわけではない。


兵を集めたとしても。


指揮する者がいなければ。


軍にはならない。


「すぐに人材の補充ができるわけではない」


シャルルが言う。


「まずはゴルディア帝国の動きを探るのが賢明だろう」


帝国軍は。


国境の向こうへ退いた。


だが。


それで。


脅威そのものが消えたわけではない。


「他には何かあるか?」


「はい」


ヴァレンが答える。


「許可をいただいた募兵に関しては、現在百二十名ほどを受け入れております」


「百二十か」


「今後も増えていく見込みです」


まだ。


始まったばかり。


だが。


王国軍を立て直すには。


到底。


それだけでは足りない。


「それから」


ヴァレンが続ける。


「各長にも打診しております」


「各長に?」


「はい」


「長員の縮小をお願いし、軍への異動を実施する予定です」


シャルルは。


少し考え込んだ。


すでに。


軍の外からも。


人を集めようとしている。


それでも。


「……まだ足りぬか」


「はい」


ヴァレンは。


迷わず答えた。


「募兵目標が二万人」


シャルルが。


ヴァレンを見る。


「異動人員で千人」


合わせても。


それだけの規模になる。


だが。


ヴァレンの表情は。


決して明るくなかった。


「これでも」


一拍。


「次も防げるとは、断言できません」


シャルルの目が細くなる。


「今回の帝国軍の規模は予想外でした」


ゴルディア帝国。


今回。


王国へ攻め込んできた軍勢。


それは。


王国側の想定を超えていた。


「軍の規模拡大は急務です」


部屋に。


短い沈黙が流れた。


必要なのは。


数。


だが。


ただ増やせばいいわけではない。


「……新兵の入隊年齢を下げてはどうか」


シャルルが提案する。


ヴァレンは。


すぐには答えなかった。


少し考えてから。


口を開く。


「新兵の数は、確かに増えるでしょう」


「うむ」


「ですが」


ヴァレンは続ける。


「軍学校で学んでいない者が増えてしまっては、育成に時間が掛かります」


兵士として。


最低限必要なものを。


一から教えなければならない。


数だけを増やしても。


すぐに戦える軍にはならない。


「確かにのう」


シャルルは。


椅子へ身体を預けた。


そして。


少し考える。


「……では」


ヴァレンを見る。


「一つ考えがある」


「なんでしょうか?」


シャルルは。


静かに言った。


「投降兵を帰順させてはどうか?」


「……投降兵を?」


ヴァレンの眉が。


僅かに動く。


「編入しろと?」


「ああ」


シャルルが頷く。


「我が国は奴隷を認めてはおらん」


戦いに敗れ。


武器を捨てた兵士。


だからといって。


奴隷として扱うことはない。


「だが」


シャルルは続ける。


「投降し、亡命を願うならば、帰順もできよう」


ヴァレンは。


しばらく黙った。


投降兵。


すでに。


戦うための訓練を受けた者たち。


もし。


その中から。


本当に王国へ帰順する者が出るのであれば。


新兵とは違う。


一から。


全てを教える必要はないかもしれない。


「それは確かに……」


ヴァレンが考える。


「今回の投降兵は、病傷者を入れて約千人ほど」


千人。


決して。


少ない数ではない。


「可能かどうかは分かりませんが」


ヴァレンがシャルルを見る。


「軍務長の方で動いてみます」


「ああ」


シャルルが頷いた。


「そうしてくれ」


これで。


軍を増やすための。


新たな選択肢が一つ。


加わった。


だが。


ヴァレンの報告は。


まだ終わっていなかった。


「それから」


声が。


少し低くなる。


「最後に」


シャルルが見る。


ヴァレンは。


一度。


間を置いた。


「ドルドウィンですが」


その名に。


シャルルの表情が変わる。


「やはり」


ヴァレンが続ける。


「ゴルディア帝国に亡命したようです」


「……そうか」


ダールトン・ドルドウィン。


王国に反旗を翻した男。


追跡の手を逃れ。


ついに。


国境の向こうへ。


渡った。


「取り逃がしてしまい」


ヴァレンが頭を下げる。


「申し訳ありません」


「構わんさ」


シャルルは。


責めなかった。


「君が逃したわけでもあるまい」


「……」


ヴァレンが。


顔を上げる。


シャルルは。


静かだった。


だが。


その声には。


はっきりとした意思があった。


「だが」


一拍。


「必ず、あやつには責任を取ってもらうぞ」


ヴァレンの表情も。


引き締まる。


「はい」


そして。


力強く答えた。


「必ず」


王国軍は。


多くを失った。


兵。


指揮官。


そして。


これまでの形。


だからこそ。


変えなければならない。


募兵。


人員の異動。


投降兵の帰順。


そして。


軍そのものの再編。


次に。


同じだけの敵が来た時。


今度も守り切れる保証など。


どこにもない。


戦争が終わった今だからこそ。


次の戦争へ備えなければならなかった。


アーヴァルト王国は。


軍を。


大きく変えようとしていた。

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