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RISELESS 新兵から始める王国戦記  作者: 藤堂拓哉
第一章

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第二十一話 偽り

 山賊襲撃の報告を受け、リシア率いる討伐隊は村へ向けて駆け続けた。


 昼を過ぎた頃。


 ようやく作業場のある村が視界へ入る。


 しかし、そこに広がっていたのは穏やかな村の姿ではなかった。


 黒煙が立ち昇る。


 家屋の壁は破壊され、荷車は横倒しになり、村人達の悲鳴が辺りへ響いていた。


「助けてくれ!」


「いやぁぁっ!」


 山賊達は笑いながら家々へ押し入り、金品を奪い、抵抗する村人を容赦なく斬り倒している。


 リシアは一瞬で全体を見渡した。


(約十名。)


 多すぎない。


 だが、村を蹂躙するには十分な数だった。


 すぐ横にいたコルドへ視線を送る。


「コルド。」


「はい。」


「二人連れて左から回り込みなさい。」


「挟撃します。」


 コルドは即座に頷く。


「了解。」


 振り返る。


「エリック、カイン。」


「俺について来い。」


「了解!」


 三人は村の外周を走り、左側から姿を消した。


 それを確認すると、リシアは剣を静かに抜く。


 銀色の刃が夕日に光る。


 背後の兵士達を見渡した。


「私達は中央から突撃します。」


「コルド達の挟撃まで持ち堪え、その後一気に殲滅します。」


 兵士達は力強く頷く。


「行きます!」


 リシアが地面を蹴った。


 兵士達も一斉に続く。



「王国軍だ!」


 山賊の一人が叫ぶ。


 だが遅い。


 リシアは一気に間合いへ入った。


 鋭い踏み込み。


 一閃。


 山賊の剣ごと肩口を斬り裂く。


 男は悲鳴を上げる間もなく崩れ落ちた。


 その勢いのまま二人目へ向かう。


 横薙ぎ。


 山賊は慌てて斧で受ける。


 激しい衝撃。


 しかしリシアは押し合わない。


 剣を滑らせ、体勢を崩した男の胴へ鋭く突きを放つ。


「がっ……!」


 男は血を吐き、その場へ倒れ込んだ。


 左右から二人。


 同時に斬り掛かる。


 リシアは身体を低く落とす。


 二本の刃が頭上を通り過ぎる。


 そのまま身体を回転させるように立ち上がり、一人の膝裏を斬る。


 体勢を崩した男の喉元へ剣先が走った。


 もう一人が怒号を上げる。


 大振りの一撃。


 リシアは紙一重でかわす。


 肩へ浅い切り傷が走る。


 痛みなど気にしない。


 踏み込み。


 逆袈裟。


 男はそのまま地面へ沈んだ。



 一方、兵士達も激しく戦っていた。


 剣と剣がぶつかる。


 怒号。


 悲鳴。


 土煙。


 徐々に押し返してはいる。


 しかし数で押され、兵士達にも傷が増えていく。


「隊長!」


「問題ありません!」


 リシアは短く返す。


 まだだ。


 まだ時間ではない。


 中央で敵を引き付け続ける。



 その時だった。


「うおおおぉぉぉっ!」


 村の左側から雄叫びが響く。


 次の瞬間。


 三人の兵士が山賊達の背後へ飛び込んだ。


「コルド隊だ!」


 エリックが一人を突き飛ばす。


 カインが横薙ぎで二人目を斬り伏せる。


 そして。


 コルド・ルビックが山賊達の中央へ飛び込んだ。


「遅くなったな!」


 豪快な笑みを浮かべる。


 山賊が振り向き様に剣を振るう。


 コルドは真正面から受け止めた。


 火花が散る。


「そんな細腕で!」


 押し返す。


 山賊の体勢が浮く。


 その一瞬だった。


 コルドは半歩踏み込む。


 腹部へ鋭い一突き。


 男は目を見開いたまま崩れ落ちた。


 さらに振り返る。


 背後から襲い掛かった男の剣を身体を捻ってかわす。


 その勢いを利用し、肘打ちを叩き込む。


 怯んだ山賊へ。


 一直線の袈裟斬り。


 男はその場へ倒れ伏した。


「前だ!」


 コルドが叫ぶ。


 兵士達が一斉に前へ出る。


 中央ではリシア。


 背後からはコルド隊。


 完全に挟撃が完成していた。


「くそっ!」


「逃げろ!」


 山賊達は混乱する。


 前へ進めばリシア。


 後ろへ退けばコルド。


 逃げ場はない。


 兵士達が次々と山賊を討ち取っていく。



 やがて夕日が山の向こうへ沈み始める頃。


 戦いは終わった。


 村には静寂が戻る。


 山賊九名を討伐。


 二名を生け捕り。


 ルミエル小隊にも数名の負傷者は出たが、幸い命に別状のある者はいなかった。


 リシアは剣の血を払い、静かに納める。


「コルド。」


「小隊員の状況を確認してください。」


「了解。」


 コルドはすぐに負傷者の確認へ向かう。


 リシアはその間、村を歩いた。


 倒壊した家屋。


 泣き崩れる村人。


 命を落とした者達。


 その光景を見つめながら、眉を僅かに寄せる。


(……少ない。)


 違和感だった。


(村一つを襲撃するには、山賊の数が少なすぎる。)


 九名討伐。


 二名捕縛。


 それだけで、この規模の襲撃が成立するだろうか。


 考え込んでいると、コルドが戻ってきた。


「隊長。」


「小隊員は切り傷程度です。」


「命に別状ありません。」


 リシアは頷く。


「捕虜は。」


 コルドは表情を曇らせた。


「尋問しました。」


「仲間はまだいるそうです。」


「必ず助けに来る。」


「また襲いに来ると話しています。」


 リシアの表情が変わる。


(まだいる。)


 その瞬間、脳裏に浮かんだのは伐採場だった。


「まずい……。」


 小さく呟く。


「伐採場が狙いです。」


 すぐに二人の兵士を見る。


「エリック!」


「はい!」


「シュタールへ向かいなさい。」


「近くに駐屯しているジルライト軍の部隊へ救援を要請してください。」


「もう一人同行しなさい。」


「了解!」


 二人はすぐさま馬へ飛び乗り、シュタールへ向かって駆け出した。


 リシアは剣の柄を握り直す。


「全員。」


 鋭い声が響く。


「伐採場へ戻ります。」


「急ぎなさい!」


「了解!」


 ルミエル小隊は再び駆け出した。


 嫌な予感だけが、リシアの胸を締め付けていた。

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