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RISELESS 新兵から始める王国戦記  作者: 藤堂拓哉
第一章

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第十七話 シャルル・アーヴァルト

 新兵研修が行われていた、その日。


 王都ラピタル――王宮。


 重厚な扉の先にある大会議室では、王国の中枢を担う者達が円卓を囲んでいた。


 第五十二代アーヴァルト王国国王、シャルル・アーヴァルト。


 宰相レオニード・ヴァルステッド。


 軍務長長官ヴァレン・シュトライザー。


 そして、各軍団長達。


 王国軍を束ねる者達による会議が始まろうとしていた。


 席に着いた全員を見渡し、レオニードが静かに口を開く。


「それでは、会議を始めさせていただきます。」


 一礼すると、ヴァレンへ視線を向けた。


「まずは軍務長長官より、ご報告をお願いいたします。」


 ヴァレンはゆっくりと立ち上がる。


「報告いたします。」


 机上の資料を開き、会議室全体を見渡した。


「今回の報告案件は三件です。」


「第一に、新兵研修について。」


「第二に、軍兵による国民虐殺事件について。」


「第三に、各地で確認されている山賊及び不審な集団の目撃情報についてです。」


 全員の視線がヴァレンへ集まる。


「まず、新兵研修について。」


「現在、軍務長と訓練長が連携し、新兵千九百八十二名を対象とした新兵研修を実施しております。」


「各軍より旅団長、副旅団長を招集し、各会場にて講義を担当しております。」


 資料を一枚めくる。


「続いて、軍兵による国民虐殺事件について。」


 会議室の空気が僅かに重くなった。


「小隊任務中、一つの村を全焼させ、村民の大半を虐殺。」


「その後、報告書を偽装し軍務長へ提出していましたが、任務報告書に不審な点を確認したため監査を実施。」


「その結果、事件が発覚いたしました。」


 ヴァレンは淡々と報告を続ける。


「事件に関与した小隊長一名、副官二名、小隊員三名を現在投獄しております。」


 誰一人として口を挟まない。


「最後に、各地で確認されている山賊及び不審な集団についてです。」


「山賊については、実際に討伐報告のあるものは少なく、大半が所在不明となっております。」


「不審な集団についても、現時点で実態を確認できたものはありません。」


「ですが、目撃情報は一件や二件ではなく、各地で継続的に報告されています。」


「今後も警戒が必要であると考えます。」


 資料を閉じ、一礼する。


「以上です。」


 ヴァレンは席へ腰を下ろした。


 シャルルが静かに口を開く。


「シュトライザー長官、報告ありがとう。」


 穏やかな声だった。


 しかし、その一言だけで会議室の空気が引き締まる。


「新兵研修については、各長が協力し、引き続き継続してほしい。」


 一拍置く。


「事件については事前に報告を受けた。」


 シャルルは各軍総司令官達を見渡した。


「このようなことは、決してあってはならぬ。」


「各軍は改めて内部状況を確認し、不正、不満、横暴を許さず、軍務長と協力して根絶に努めよ。」


 各軍総司令官達は一斉に立ち上がる。


「はっ!」


 力強い返事が響く。


 シャルルは静かに頷いた。


「続いて、山賊及び不審な集団についてだ。」


 視線をレオニードへ向ける。


「レオニード。」


「はい。」


 レオニードは立ち上がり、壁に掛けられた地図へ目を向けた。


「軍務長へ確認したところ、未解決となっている山賊及び不審な集団の目撃情報は、東から南東、南にかけて集中しております。」


 ゆっくりと地図を指し示す。


「位置関係から、ソルドーニ連邦国及びゴルディア帝国の関与が疑われます。」


 会議室に静かな緊張が走る。


「特にゴルディア帝国とは、幾度となく国境付近で小競り合いが続いております。」


「状況に応じて、軍の派遣も検討する必要があるかと考えます。」


 レオニードが席へ着くと、ヴァレンが口を開いた。


「現在、各国境については各軍の大隊が交代で警備にあたっています。」


 すると、一人の男が静かに立ち上がる。


 第四軍総司令官、オーエン・ハイムだった。


「一つ、提案があります。」


 シャルルが頷く。


「申してみよ。」


「ゴルディア帝国方面には、防衛戦を得意とするジルライト軍。」


「ソルドーニ連邦国方面には、機動力に優れたエンデヴァー軍を配置し、しばらく様子を見るのはいかがでしょう。」


 第二軍総司令官ホーランス・ジルライトが頷く。


「異論ありません。」


 第三軍総司令官エンデヴァーも続いた。


「私も問題ありません。」


 シャルルは全員を見渡し、静かに頷いた。


「よかろう。」


 そしてヴァレンへ視線を向ける。


「シュトライザー長官。」


「はい。」


「軍務長として引き続き調査を進めよ。」


「その結果を踏まえ、三ヶ月後を目処に軍配置を実施してほしい。」


「承知いたしました。」


 ヴァレンは力強く答えた。


 こうして、この日の会議は終了した。


     ◇


 会議を終えた後。


 王宮内、国王執務室。


 部屋にはシャルルとレオニードだけが残っていた。


 窓から夕日が差し込み、静かな空気が流れている。


 シャルルは窓の外を眺めたまま口を開いた。


「先ほどの件。」


「南東方面、と言っておったな。」


「はい。」


 レオニードは静かに頷く。


 シャルルはゆっくりと振り返った。


「……関係ないと思うか。」


 短い問いだった。


 レオニードは国王の真意を理解していた。


「調べてみます。」


 それだけ答える。


 シャルルは小さく頷いた。


「頼む。」


 二人はそれ以上言葉を交わさなかった。


 王都では新兵達が未来へ向けて学び続けている。


 その一方で、王国の中枢では、誰にも知られぬまま新たな火種が静かに動き始めていた。

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