97.舞踏会②
続いてこちらにやって来たのは、ルドルフ王子とエイダ王女だった。
ルドルフ王子は、黒のテールコートに白シャツ、タイはグレーだった。
エイダ王女はプリンセスラインのドレスである。軸足とは反対の左側が何層も布地を重ねてあり、下にいくほど水色から濃いグレーにグラデーションを作っている。
お互いの瞳がグレーのため、その色を取り入れたのであろう。
また、目を引くデザインのドレスのため、男女問わず注目の的になっていた。
「ごきげんよう、ロイド様」
「ルドルフ王子、エイダ王女。ご機嫌麗しく…」
俺は彼等に一礼する。
「ロイド様、おめでたい席です。堅苦しいのは無しにしましょう」
ルドルフ王子が、愛想よく握手を求めてくる。
「そう言って頂けるとありがたいです。ルドルフ王子には、本当に素晴らしい音楽を頂きましたから」
俺はそう言って、ルドルフ王子の握手に応じた。
「それもこれも、アレクシス陛下とロイド様達のおかげですよ。私はこちらに来る前よりエイダとの仲が深まって嬉しい限りです」
ルドルフ王子が熱のこもった視線でエイダ王女を見つめる。
エイダ王女も満更でもないようだった。
「後で私とエイダの演奏もあります。お耳汚しかもしれませんが、是非聴いてください」
「そんな!世界最高峰と言われる、ヴァイオリンとハープの合奏ですよ?もちろん、聴くに決まっています」
「ありがとうございます」
はにかんでお礼を言うルドルフ王子は、アレクシス陛下とは別タイプの美男だった。
やはり想い人との蟠りが解けるとこんな表情になるんだな、と思わせられた。
エイダ王女を見ると、そんなルドルフ王子にポーッとなっている。当初はあんなに嫌がっていたのに、現金なものだ。
それにしても、この人には本当に酷い目に遭わされた。
国内外通しても、こんなに俺を振り回してきた人はこの人が初めてかもしれない。
俺はエイダ王女に何か意趣返しがしたくなった。
やられっぱなしなのは性に合わないという事だろう。
俺はルドルフ王子の手を取り、持ち上げながらゆっくり指を滑らせ、指先を摘むようにし、そこにキスを落とす。
上目遣いで王子を見つめ、
「(ヴァイオリンの)良い声を聞かせてくださいね」
と、色気たっぷりに囁く。
ルドルフ王子もエイダ王女も、顔を真っ赤にしてフリーズしている。
おや?効きすぎたかな?
そう思っていると、いち早く正気を取り戻したエイダ王女が、俺からルドルフ王子の手を奪い返す。
「ロイド様!ルディは渡しませんからね!」
と、必死の形相で訴えてきた。
この言葉で、ルドルフ王子も正気に戻る。
「はっ!危なかった…。あやうくロイド様に籠絡されるところだった…」
と、胸を押さえて深呼吸を繰り返している。
エイダ王女はルドルフ王子の腕をぎゅうぎゅう抱きしめ、鋭い視線でこちらを睨んでいた。
これで、一矢報いる事は出来たかな?
俺はエイダ王女の様子がおかしく思え、つい笑いをこぼしてしまった。
その様子に、またもや赤くなるエイダ王女。
「ロイド様!私をからかったのですね!?」
「いえ、決してそんなつもりでは無かったのですが…」
まぁ、嘘だがな。
心の中で舌を出す。
「まぁまぁ、エイダ。お陰で私は役得だよ。エイダも少しは私の事を想ってくれているんだね」
ルドルフ王子が、キラキラしい笑顔でエイダ王女を見る。
エイダ王女はよっぽど恥ずかしかったのか、そっぽを向いてしまった。
そんな時、ルドルフ王子の従者がやって来る。
ルドルフ王子に二言三言、何かを告げた。
「どうしました?」
「どうやら私のヴァイオリンの調律に手間取っているようだ。少し外してもいいかな?」
「それは一大事ですね。どうぞ行って下さい」
「では。エイダも暫くしたら、私の元に来るんだよ?」
「わかっています、ルディ」
俺とエイダ王女は、ルドルフ王子を見送った。
姿が見えなくなると、エイダ王女が話しかけてくる。
「さっきはよくもやってくれましたわね?」
「エイダ王女のした事に比べれば、大した事じゃありませんよ」
俺は、そっくりそのまま返してあげた。
「私に対して、一番効果的な方法で嫌がらせをするなんて…。ロイド様は本当に性格が悪いですね?」
「お褒め頂き、ありがとうございます」
性格が悪くなくては、こんなポジションなんてやってられない。
「正気に戻れたのでルディを選べましたが、この瞬間が一生続けばいいのに…、と思ってしまった自分を殴りたい」
「お手伝いしましょうか?」
「結構です!でも、本当にルディに惚れてないですよね?」
エイダ王女が変な確認をしてきた。
俺は思い切り不機嫌な顔をして返す。
「惚れてません。全くもって、心配ご無用ですね」
俺はきっぱりと宣言する。
「なら良かった。では、私もそろそろ行きますわね。ロイド様、ごきげんよう」
「はい。何かあればアレクシス陛下に気軽にご相談下さい。せっかく同じ転生者同士なのですから。まぁ、逆も然りですがね…」
「フフフ…、わかりましたわ。貴方達とは末永くお付き合いしていきたいと思っていますので」
「よろしくお願いいたします」
そう言って、俺は深く礼をする。
エイダ王女は、軽やかに去って行った。
ルドルフ&エイダでした。
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