91.sideスカーレット⑤
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「あ〜ぁ…。兄貴のやつ、張り切っちゃって」
「仕方ないですよクリスお兄様。相手がロイ様ですから」
先程の試合も凄かったが、今、目の前で行われている戦いは何だろう?
ロイ様愛用の槍は、全長10メートルくらいあり、その内、穂先は2メートルとなっている。重さも20キロほどで穂先と柄の色は黒く、銀の装飾がカッコいい。
イストお兄様のバトルアックスも全体的に黒く、やはりこちらも銀の装飾がカッコいい。
両方とも、同じ『黒鉱鉄』という素材で作られている。クロエが発見した鉱物だ。
黒鉱鉄の特性は粘りがあって硬い。
そのため、鋭い切れ味を出しながら耐久力もあるという優れものだ。ただあまり産出されない為、今の所この鉱物で作られた武器を持っている人は限られている。
そんな2つの武器が衝突している。
衝撃で訓練場が壊れそうだ。
ロイ様がジャンプして槍を鋭く突き刺す。
あぁ!惜しい!ギリギリで躱された…。
槍は訓練場の地面に突き刺さると、その周りが隆起した。
イストお兄様もバトルアックスをロイド様めがけて振り下ろす。あの斧、50キロくらいあるのに全然重さを感じさせないわ…。改めて自分の兄の怪力ぶりに驚かされる。
ロイ様もそれを躱し、振り下ろされた衝撃は訓練場の地面を割った。もう、まともな足場は無い。
単純な攻撃しかしていないのに、その攻防が高速でなされている為、もう何が何だかわからない。
ただ、爆音とボロボロになっていく訓練場の姿が、戦闘の激しさを物語っていた。
正直、ヒトとヒトが戦っているとは思えない状況だ。
実は試合が始まる前にアレクシス殿下から退避命令が出た。
「戦いに巻き込まれたくない者は、今すぐに訓練場を出るんだ!留まる者は、自己責任だからな!ただし、そこにいる騎士団の若手連中は最前列で観戦すること!」
殿下の命令に騎士団員がどよめく。
殿下はにっこりと笑い、更に続ける。
「ロイドが地位だけで私の側近を務めている筈が無いだろう?私の側近を甘く見ている者には、実際に知ってもらわなければな。経験に勝る知識は無いと思うぞ?」
(えぇ、その通りです!殿下!
私のロイ様が弱いワケないでしょう!)
私はアレクシス殿下の言葉に何度も頷いた。
この殿下の言葉に、騎士団の若手達は青い顔をしてブルブルと震えていた。しかし王太子殿下の命令のため、従わなければならない。私のお父様のミレン辺境伯とカイオム騎士団長のいる前で、命令違反を起こす猛者はいなかった。
結果、戦闘の最中に半数以上が気を失った。
ロイ様とイスト兄様の戦いの邪魔になるため、その者達は私やクリス兄様、古参の騎士団員達で通路に移動させてある。
まったく…。こんな勉強になる戦闘を間近で見ないなんて勿体ない!
ちなみにクリスお兄様も同じ事を思っているようだ。
しきりに、狙撃ポイントをシミュレーションしている。
……あの二人にそんなのあるのかな?
「二人の戦いは、いつ見ても凄いな…」
殿下がクロエと一緒にこちらに来た。
私とクリスお兄様は一礼する。
「いや、今はそういうのいいから」
殿下の言葉で私達は礼を解く。
「お兄様が、こんなに戦えるとは思いませんでしたわ…」
クロエが驚いている。
まぁ、そうでしょう。
この国で1、2を争う強さのイストお兄様とまともに戦えているのが凄いことだ…。
ちなみに1、2の内訳は、イストお兄様とお父様である。
現時点で、クリスお兄様はロイ様より弱いと思う…。
「でもこの威力は、クロエの発見した黒鉱鉄のお陰もあるよね?」
アレクシス殿下が、すかさずクロエを褒める。
この方は、本当にクロエがお好きなのね。
仲睦まじい様子に、微笑ましくなる。
すると、フェイロン皇子もこちらにやって来た。
一礼しようとすると、「今は、そういうのは良い」と、先に止められる。
フェイロン皇子は興奮した様子だった。
「アレク!あの武器は何なんだ!我が国でも欲しいぞ!」
「アレですか?いや〜…、我が国でも材料があまり産出されないので、あの二振りしかないんですよ…。輸出できるくらいになったら考えます」
アレクシス殿下がにこやかに答える。
「怪しい…。本当は何振りあるかはわからんが、あまり作れないのは本当のようだな。気長に我の元に来ることを待つとしよう」
「努力します」
フェイロン皇子は一人で納得し、それ以上は聞いてこなかった。
実際、あの武器はあと5種類ある。
お父様の大剣、アレクシス殿下の剣、クリスお兄様の銃、ヨハン様のダガー、そして私の太刀である。
殺傷能力が高く、それぞれがクセがあって扱いにくい為、普通の人には渡す事が出来ない武器だった。
アレクシス殿下も、これ以上増やすつもりはないらしい。
フェイロン皇子が引き下がってくれて良かった。
戦いに目を戻すと、そろそろ決着がつきそうだった。
ロイ様がイストお兄様の一撃をガードするが、そのまま吹っ飛ぶ。イストお兄様は吹っ飛んだロイ様を追って、間合いを詰めた。そのまま訓練場の壁に叩きつけられたロイ様の顔の横に斧を打ち込んで、勝負が決まったようだった。
「イスターク…、参った」
「…っっっはぁぁ〜。やっとかよ!お前とヤると、本っっ当に疲れる」
「でも、スッキリしたろ?」
「まぁな。でもすげぇな、クロエ嬢の開発した武器。あんなに激しく使ったのに、刃こぼれもしてない!」
「確かに。さすがはうちのドワーフ姫だな…」
二人はいい顔でお互いと武器を称え合っていた。
なんかモヤモヤとジェラシーを感じてしまう。
「ロイ様〜!!」
私の声に気付いたロイ様が微笑む。
「レティ!また、負けてしまったよ!」
「次がありますわ!!」
爽やかに笑う婚約者にまた惚れ直してしまう。
ロイ様もお兄様もボロボロだけど、とてもカッコ良かった。
でも、何で二人が戦っていたんでしたっけ?
理由は忘れてしまったが、訓練場に明日から大規模な補修工事が入るであろう事だけはわかった。
黒鉱鉄はオリジナルです。
こんな鉱物は、実際にはありません。
ちなみに硬さを誇るダイヤモンドは、それ自体を研ぐ事が出来ないので刀にはできないみたいです。
ダイヤモンド加工されてるものは、粉末をふりかけて硬くしているみたいですよ(作者調べです)。
切れ味を良くしたいなら、素材に粘り気が無いとダメみたいです。
黒鉱鉄は、両方を兼ね備えた夢の物質です。
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