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90/105

90.WINNER

――――ショウ


「カハッ…。ゴホッゴホッ…」


痛った〜…。

あばら骨、折れたかと思ったけど大丈夫そうだな。

真面目に訓練やってて良かった。

ちょっと前の僕だったら、骨が折れていただろうな。

改めて目の前の敵(・)を見る。


全然息切れもしていなければ、先程、強烈な一撃を打ち込んだとは思えない涼やかな様子でロイド様は立っている。

師匠の一言が無かったら、更にヤバかったな…。

悔しい!悔しい!悔しい!!


確かに数日間の訓練だったけど、僕は今までで一番頑張った。

共に訓練した仲間達の中でも、上から数えた方が早いくらいには上達した。テオ団長も師匠も、称賛してくれていたのに…。

貴方は、まだ遠い…。

どうしたら、そんなに強くなれるんだ?

僕は、ロイド様をキッと睨む。

だがムカつくことに、その視線すら意に介していないようだった。


「大丈夫ですか?ショウ王子」

「大丈夫です…。まだイケます」


イスターク様の手を借りて立ち上がる。

僕の諦めない姿勢に、仲(・)間(・)達(・)からの声援と、ロイド様への野次が飛ぶ。


「ショウ王子!よく立った!あんたは男だ!!」

「公爵子息様!槍で戦っているんだから槍を使えよ!殴るなんて卑怯だぞ!」


あぁ…、みんなの声援が力になる!

もう一度自分を鼓舞していると、イスターク様の怒号が響く。


「うるっっせぇ!ひよっこ共!!こ(・)れ(・)は(・)槍(・)の(・)試(・)合(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)!飛び道具以外、何使ってもいい試合なんだよ!それに、己の拳を使う方が武器使うより卑怯じゃねぇだろ!」


言われてみれば、確かにそうだ。

というか、僕は攻撃に武器を使って貰えなかったって事か?

何だソレ!僕の事をすごく馬鹿にし過ぎだろ!

考えれば考えるほど、どんどん腹が立ってきた。

ロイド様は、僕の事を下に見過ぎだ!

改めて鋭く睨んでいると、師匠が叫ぶ。


「ショウ!ロイドのさっきのパンチは手加減されたものだぞ!次は死ぬ気で行け!」

「はい!」


くぅ~…。やっぱり手加減されてたのか!

ムカつく〜…。

次こそは!

僕はまた、槍を構える。


「親父!あんま煽んな!!」

「あとは頼んだぞ!息子よ」


師匠がいい顔をしている。

よし、なんだかイケる気がする!


僕は、槍を持ってロイド様に突っ込む。

そして連続で高速の突きを繰り出し、隙を狙った。

だが、ロイド様はそれを避けながら、僕に話しかけてきた。


「槍の使い方がなってないな。そんなんじゃ無駄に体力を消耗するだけだ。冥土の土産に本当の使い方を教えてやろう」

「なんだと!」


僕の気が散ったのがいけなかった。

ロイド様は穂先で僕の突きを弾くと、一歩踏み込み、ガラ空きのボディを蹴ってきた。


「ぐはッ!!」


僕はまた吹っ飛び、地面に仰向けになる。

何とか起き上がろうとするが、体が言うことを聞かない。

辛うじて首を起こすと、目の前にロイド様はいなかった。


どこに行ったんだ!?


すると、師匠の叫び声が聞こえた。


「ショウ!上だ!!」


顔を上に向けた時は、槍を構えたロイド様がジャンプした後だった。


あっ、これはヤバイ…。


僕の生存本能が、けたたましくアラートを鳴らしている。

ロイド様と目が合う。

悪魔を通り越して、魔王のような殺気に怖気づき、体がピクリとも動かなくなった。

死んだ…と思ったその時、誰かが僕を庇うように前に出た。



――――ロイド


ガキィィィン!!


「ちっ…」


イスタークが、愛用の斧で俺の攻撃を防いだ。

衝突の衝撃波が訓練場を突き抜ける。

俺はそのまま後ろに宙返りをして着地する。

俺が使用していた槍の穂先は砕け散り、槍がただの棒になっていた。


一瞬の静けさの後、訓練場全体がどよめく。


五月蠅いな…。


俺は持っていた棒(・)切(・)れ(・)を、ショウ王子を応援していた連中がいる辺りに全力で投げた。


ドゴッ…!!


訓練場をぐるりと囲んでいる石垣に、そ(・)れ(・)が派手な音を立てて突き刺さる。

驚いて俺の顔を見たひよっ子騎士団の連中は、俺の視線を受けて全員青い顔をした。


「ロイド!やめろ!」

「チッ…」


興醒めだな。

だが、ヤツはまだ降参していない。


「イスターク。その斧、貸せ。まだ試合は終わってない」

「いやいや、貸せるかよ!それにショウ王子の戦意喪失で、お前の勝ちだ」

「いや、まだ分からない。『参った』と言われてないからな」


俺はショウ王子を見る。

その瞳には確かに恐怖が浮かんでいたが、震えて言葉が出てこない。

俺はニヤリと嗤い、


「まだできますよね?」


と問う。

ショウ王子は、涙目で首をぶんぶんと横に振った。


「チッ…」


俺は顔から笑みを消し、冷酷な視線を浴びせる。

 

「だからソレを止めろ…。おい、勝利宣言するぞ」


俺はイスタークに右手を取られ、上に突き上げられる。


「勝者!ロイド・ウィラー!!」


場内に拍手が起こるが、皆、どこか化け物を見るような目付きで俺を見る。

はぁ…、どいつもこいつも。

不完全燃焼な試合の内容と相まって、苛立ちが抑えられない。


そんな時、アレクシス殿下の声が聞こえた。


「ロイド!お前の槍を用意させた!欲求不満はイスタークと戦って解消しろ!」


その声に冷静さを取り戻す。


『あぁ…、あの人は本当に俺の事をわかっている』


同じ言葉を隣にいる大男も吐いた。

イスタークと顔を見合わせ、お互いに臨戦態勢に入る。


俺的にはここからが本番だな!

ロイドは最初からチート化け物です。

もう一人の化け物との対戦が始まりますが、作者の文章力が追いつくかわかりません…。


✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩


読んでみて面白かったなぁと思われた方は、よろしければブクマ評価もお願いしたいです!!

大変、励みになります(。>﹏<。)

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