表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/105

89.sideアレクシス⑤

「始め!!」


イスタークの号令で、ショウ王子とロイドが同時に動き出す。

ショウ王子の動きは、最初に見た時と見違えるようなものになっていた。

この場でロイドが得意とする槍で勝負を挑むあたり、何か必殺技や必勝法があるのかもしれない…。


「勝てよ…、ロイド」


思わず拳に力が入ってしまう。


つい数日前に決まった話なのに、この騒ぎを聞きつけて観覧席は大賑わいだ。

まぁ、ほとんどが騎士団の連中だがな。


同じ釜の飯もとい、ミレン辺境伯の地獄の訓練を受けた仲間意識からか、ショウ王子を応援する声も大きい。

若い騎士たちは、こぞってショウ王子を応援していた。

まるで、アイドルのコンサートのようだ。

それに反して、古参の騎士たちは冷静だ。

彼等はロイドの実力を知っているからだ。

ロイドの勝ちを前提として、ショウ王子が何分耐えられるかを賭けている。

正直、俺も加わりたい。なんか楽しそう。


うん?あれ?

胴元はヨハンじゃないか?

アイツ…。

後で、儲けを酒代にしてやろう…。

そんな事を考えていると、後ろから声がかかる。


「随分と楽しそうですね?アレクシス王子」

「これはエイダ王女。そちらこそ、遅かったですね?」


やって来たのはエイダ王女だ。

こんなイベント、彼女が来ないワケが無かった。


「ホホホ…、女性は色々準備がありますから」

「今朝、興奮し過ぎて鼻血を出したんですよね?大丈夫ですか?」


俺はニヤニヤしながらエイダ王女に聞く。

エイダ王女は図星だったのか、顔を真っ赤にしている。


「なっ!何故それを…」

「私にも優秀な情報屋がいますから」


そう言って体をずらし、隣にいるルドルフ王子が見えるようにする。


「ルディ!」

「ごめんねエイダ。喋っちゃった。アレクって、聞き上手だからさぁ」

「聞き上手だからさぁ、じゃないわよ!」

「だからゴメンって」


うるさっ。

痴話喧嘩は他所でやって欲しい…。

隣を見ると、クロエが目を丸くしている。


「エイダ様って、こんな一面もあるのね…」


と、感心したように呟いていた。


(ハオ)!アレク。ショウはどんな感じね?」

「フェイ!」


続いてやって来たのはフェイロン皇子だった。

お付きのランも一緒だ。

ランは、食い入るようにロイドの戦いぶりを見ている。


「見ての通りだよ。手数は多いんだけどねぇ」

「ほうほう…。でも、あれは何かを狙ってそうではないか?ラン、どう思う?」


フェイがランに聞く。


「そう思わせて無策じゃないですか?ロイド様の目から対戦者に対する敬意がどんどん失われていますから」

「あー、ホントね。ショウはロイドの地雷を踏んでるよ」


俺も二人の戦いに再び目を向ける。

確かにランの言った通りだ。

パッと見は分からないが、ある程度鍛錬を積んだ者にはロイドの機嫌が急降下しているのがわかる。

ショウ王子を応援している騎士達は、「押せ押せ!」「イケるぞ!」「ロイド様は防戦一方だ!ショウ王子にビビってるぞ!」、などと言っている。

奴らは、まだまだ鍛錬が足りないようだな。

ミレン辺境伯とカイオム騎士団長も不穏な空気を出している。


その時、ミレン辺境伯が叫ぶ。


「ショウ!焦るな!初心を思い出せ!!」


その言葉でショウ王子が後ろに跳んで間合いを取り、息を整える。ロイドは追撃せずに、その様子をただ眺めていた。

もちろん、息はあがっていない。涼しい顔をしている。


アイツ…、あんなに書類仕事してるのにいつ鍛錬してるんだ?


そんな疑問が浮かぶほど、疲れは微塵も感じさせなかった。


「勝負ありましたね。あれだけ連続で突きを繰り出していては、スタミナの消費が大きいでしょう。対するロイド様は、すべて薙ぎ払っているだけで、スタミナを殆どロスしていない。元々の基礎体力にも違いがありそうですね」

「ランの言う通りだな。ショウは、挑む相手を間違えてるよ」


俺も二人の見立てに同意だ。

槍は剣よりリーチが長い分、しなる。

その『しなり』を制御するには、全身の筋肉とスタミナが必要だ。試合ともなると、体力配分が鍵となってくる。

今、使用している騎士団の槍はだいたい1.5〜2キロくらいだが、実はイスタークのようにロイドも愛用の槍を持っている。その重さ、20キロ。長さも一般のものより、1.5倍程長い。

それを制御して戦えるロイドの筋力とスタミナたるや…。

ロイドが愛用の槍を使用していたなら、一突きでショウ王子の体に風穴が空いたであろう。


「あっ、お兄様も動くみたいですよ」


クロエの言葉に、皆の視線がロイドに集まった。

俺はこっそりエイダ王女に耳打ちする。


「実際、ゲームではこんな試合あったの?」

「いいえ、ありませんよ。前回の戦いだけです。この試合は完全にオリジナルですよ。だから興奮してしまったんです」

「という事は、シナリオから外れる事が出来たって事か…」

「みたいですね…あっ!」


エイダ王女の声で、試合に意識を戻す。

見ると、ロイドが片手で槍を持ち、素早い動きでショウ王子に走って向かっていく。

ショウ王子は防御の姿勢を取る為、目の前で槍を構えた。

槍を持ったロイドの右手が動く。

ショウ王子は上からの衝撃に耐えるように態勢を整えた。

しかしロイドは槍を構えの下から差し入れ、そのまま手前に引いた。

思わぬ衝撃で、ショウ王子の上に挙げていた右手が柄から外れる。ただ、下の方でしっかりと握っていた左手が仇となった。

そのまま槍を絡め取られ、ショウ王子の体がロイドの方に崩れる。次の瞬間…、


ロイドの左フックがショウ王子のボディにクリーンヒットした。

吹っ飛ぶショウ王子。


えええぇ〜〜!!!


『な…、殴ったぁ〜!?』


観客が口を揃えて同じ言葉を発する。

えっ?

これって槍の試合じゃなかったっけ?

戦ってます!

ストレートから、ボディへのフックに変えました。

戴冠式前に他国王族の顔に傷をつけちゃダメでしょ…(笑)


✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩✩


読んでみて面白かったなぁと思われた方は、よろしければブクマ評価もお願いしたいです!!

大変、励みになります(。>﹏<。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ