87.ランチタイムオーダー
次の日、俺は鬼の形相で仕事をこなす。
アレクシス殿下でさえ、声を掛けるのをためらったようだった。
昼の時間になり、昼食の為に机の上の書類を片付ける。
皆に倣い、立ち上がって俺も食堂に向かおうとすると、殿下が話しかけてくる。
「ロイドちょっと、いいか?」
「はい」
俺は扉に向かう足を止め、殿下の机へと方向を変える。
「昼食はこちらに運ぶように手配した。少し話そうじゃないか」
「わかりました」
何とも用意がいい事だ。
暫くすると、二人分の昼食を乗せたワゴンが運ばれてくる。
部屋にある応接セットに昼食が並べられ、さながらランチミーティングのような様相である。
殿下が選んだメニューは、牛肉のステーキだった。
午後も頑張らなければならないからな。景気づけにはいいチョイスだろう。
二人で用意された昼食を食べ、食後の紅茶をいただく。
一息ついた頃に、殿下が徐ろに切り出す。
「今日は鬼気迫る勢いだな…」
「えぇ。このクソ忙しい中、人の都合を無視する王族が、明日の俺の予定を押さえてきたので」
「あぁ、うん。それに関しては、俺も止められなくてごめん…」
アレクシス殿下が申し訳無さそうにする。
「殿下の所為ではありませんよ。あの方が、おかしいんです」
「いやまさか、あそこまで豹変するとは思ってなかったぞ。恋の力は厄介だな…」
「まったくです」
ショウ王子に、人の都合を考えない王族本来の気質が出てきた。
それ自体は特に問題は無い。
むしろ、今までがオドオドして王族らしくなかったのだ。
王族とは、数ある選択肢の中から最適解を導き出し、人を動かすカリスマ性を持つ者である。
それ故、人の上に立つ事が出来る。
カリスマ性の顕現は人によるが、大抵は相手に畏怖の念を抱かせる。ショウ王子にそういった面が出てきたことは、他国の臣下としても嬉しいが…。
「何も、今じゃなくても…」
「ロイド、わかるぞ。ここはショウ王子の母国ではなく、外遊先だからな…」
それなのだ。
外遊中に、他国臣下にあの態度は無い…。
しかも俺は、もうすぐこの国の王になるアレクシス殿下の側近だ。
ミストラル王国に敵意アリ、と見做されてもおかしくない。
覚醒直後とはいえ、恋に狂った男は本当に厄介だ。
「もう少し、周りを見る目も養ってもらわなければ…」
俺は大きなため息をつく。
それを見て、殿下が呆れている。
「お前は、どんな立場なんだ。ショウ王子の側近ではなく、俺の側近だろう?」
「殿下、ヤキモチですか?」
「違う!」
「わかってますよ。ほんの冗談です」
そう言って、またお茶を一口飲む。
「ロイドが負けるなんて事は無いだろうけど、これでも俺は心配しているんだぞ」
「それは、どういった立場で?」
「主君としてもそうだが、8割方は友人としてだな」
その言葉に俺はフッと笑みを漏らす。
「ありがとう、アレク。だが俺は、完膚無きまでにショウ王子を叩きのめしたいんだ」
「何故、そこまで?」
アレクの問いはもっともだ。
何故、俺は未成熟ではなく、完成された王子となったショウ王子に勝ちたいのか?
「アレクの言う、『シナリオ強制力』に怯えているのかもな…」
「は?」
アレクが不思議そうな顔をする。
俺は、持論を展開させた。
「俺はこの『話』を終わらせたいのだと思う。アレクやユリアの話を聞く限り、シナリオはショウ王子の成長と共にあるように感じる」
「…まぁ、シミュレーションゲームってそういうモノだからな」
「だから、完全に成長した状態のショウ王子と戦い、勝つ事ができれば…」
「そうか!シナリオをエンディングに持っていける!」
「そういう事だ。中途半端な状態では、追加のシナリオが発生するかもしれないからな」
俺の話に、アレクは納得がいったようだった。
「ショウ王子にとってはバッドエンドかもしれないが、ロイドにとってはグッドエンドになるな」
「いや、気が早いから。俺が負けたらどうする?」
その言葉に、アレクは意地の悪い顔をする。
「負けるつもりも無いのに、そんな事を言うなよ」
「まぁ、そうだな…」
俺も悪い顔で微笑んだ。
「でも冗談は抜きにして、俺はお前が勝つ事を信じているぞ。必ず勝てよ」
「あぁ、承った」
俺はアレクの期待に自信を持って答える。
我が主君の為にも、自分の為にも、この王命は絶対に遂行する!
寄り道が多かったですが、いよいよクライマックスが近いです。
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