86.逆鱗
「ロイ様!勝手にあんな事を受けて…。怪我でもしたらどうするんですか!次の日は戴冠式ですよ!」
「ごめんね、レティ」
「アレクシス殿下の側近なんですから、もう少し自覚を持ってください!」
ソファに座っている俺は、かれこれ1時間程、側に立つレティに怒られている。
勝手に勝負を受けてしまった事に相当お怒りのようだ。
しかし、ああでもしなければ収まらなかっただろう。
訓練後のため、準備運動も終わり、感覚が研ぎ澄まされているレティが本気を出したら…。
いや、考えないでおこう。
無事に済んだからそれでいいじゃないか。
それなら次にやることは決まっている。
目の前にいる、ご機嫌斜めの婚約者様を何とかしなければ…。
俺は、レティをジッと見つめる。
「ど、どうしたんですか?ロイ様?」
「レティが俺の事を心配してくれてとても嬉しいよ」
俺は、にっこりと笑う。
しかし、次の瞬間には険しい表情をする。
「…でも、大事なレティをあんな景品のように扱われて、俺が怒らないとでも思った?」
俺の真剣な眼差しに、レティは少したじろぐ。
その場を収める事も重要だったが、そもそも俺はあのいい分に納得出来なかった。
ヤツが告白した所でどうでもいい。
恐らく玉砕するからだ。
しかしアイツは権力をチラつかせ、俺に勝負を挑んできた。
「勝利した暁には私の手を取る事を考えていただけますか?」
だと?
何を馬鹿げた事を…。
お前に勝利は無いし、レティがお前の手を取る事も無い!
「俺は、権力に屈してレティを譲るなんてしないよ。向こうがその気なら、ダイス王国をどんな手を使ってでも潰す!」
「ロイ様…」
俺は、ソファから立ち上がりレティを抱きしめる。
「俺は、君を失う事を何よりも恐れている。君が手元からいなくなるギリギリまで、俺は見苦しく足掻くよ。嫌悪や、憐れに思う気持ちだっていい。レティの心に少しでも俺を残せるなら何だってする」
我ながら、とんでもない執着心だと思う。
どんな感情であれ、レティの心を侵食しているのは俺に対する気持ちであって欲しい。
こんな馬鹿みたいな男に見初められたレティには申し訳ないが、離してやる事は出来ない。
俺もアレクシス殿下やイスターク達の事は言えないなと、本気で思う。
そんなことを考えていると、レティが抱きしめ返してきた。
「私だって…、私だって同じ気持ちですから!ロイ様から離れるなんて考えられません!」
「レティ…」
レティは少し体を離し、真っ直ぐに俺を見た。
「私はロイ様が大好きです、愛しています。言葉ではこの気持ちを言い尽くせないほどです。私が死ぬその時まで、ロイ様に抱く感情は、愛するという気持ちに違いありません!嫌悪や憐憫なんて言わないでください!そんな気持ちは微塵も起きないですから!」
その言葉に目を見開く。
と同時に、可笑しさが込み上げてきた。
「ハハッ、そんな…、まだ来てない未来の感情を断定するなんて…」
「む〜、おかしいですか?」
レティが不満気に口を尖らせている。
しかし頬は赤いため、恥ずかしいらしい。
「いや、レティらしいよ。ありがとう。その言葉は俺に力をくれる」
「なら良かったです」
そう言ってレティはにっこりと笑い、抱きついてくれる。
俺は、そんな可愛い婚約者の頭にキスを落とした。
「でも、まだ心配だからな…。レティにしっかりと俺を刻みつけないと」
「えっ?」
俺は飢えた獣のような目でレティを見る。
「ロ、ロイ様…」
「大丈夫、手加減するから。明後日に余計な仕事が出来てしまったから、明日は馬車馬のように働かないといけないからね」
怯えたレティは俺から逃げ出そうとするが、ガッチリと腰を抱かれているため抜け出せない。
「死ぬまで俺を愛してくれるんでしょ?俺、期待には応えるタイプだから」
そう言うと、俺はレティを抱き上げ寝室に向かう。
レティは、「体を休めた方がいい」と言って抵抗していたが、濃厚なキスをお見舞いしたら大人しくなった。
最終的には、「お手柔らかにお願いします…」と言って、これから起こる事に同意してくれた。
よし、これで英気が養えるぞ!
性格が悪い俺だから、ショウ王子に対してこう思ってしまう。
「ざまぁ」
と。
レティを優しくベッドに下ろし、キスをする。
夜は始まったばかりだ。
もっとイチャイチャしろ!(笑)
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