85.挑戦者
あっ!レティだ!
今日の仕事が終わり帰路につこうとすると、前方に愛しのレティを見つけた。
レティは、騎士服を着ている。
珍しい。こんな時間まで訓練をしていたのだろうか?
「レティ!」
名前を呼ぶと、くるりとこちらを向く。
その両目に俺の姿を捉え、レティは花が咲くような笑顔を見せた。
あぁ…、今日も可愛いな。
「ロイ様!」
小走りにこちらに駆け寄って来るが、1メートル程手前で急停止した。
どうしたんだ?
そう思い、俺から歩み寄る。
「来ないで下さい!」
えっ!?
いきなり大声を出されたのと、その内容に、俺は固まってしまった。
…俺、嫌われるような事した?
思わず、悲しそうな顔をしてしまう。
「違います、違います!今、私は汗臭いしベトベトなので、近寄ったらロイ様がご不快かと思います…。あの…、だから、そんな悲しそうな顔をしないで下さい!」
レティが焦りながら弁解する。
「俺、嫌われてない?」
「嫌ってませんよ。むしろ大好きだから、こんな姿を見せるのは嫌なんです!…好きな人には、可愛いと思われたいじゃないですか…」
良かったぁ〜〜。
俺は、満面の笑みでレティを見る。
「うっ!しょぼんとした後の満面の笑み…。ロイ様、ワンちゃんみたいで可愛い」
レティは顔を赤くして、そっぽを向いてしまった。
「レティ?」
「な、何でもないです!さぁ、帰りましょう」
レティはきびきびとした動きで帰り始める。
本当は汗だくのレティでも抱きしめられるが、本人が嫌がっている事をするのは止めよう。
俺は紳士だからな。
決して、そんな些細な事で嫌われるのがイヤだからではない!
少し離れて二人で歩く。
穏やかな時間が流れるのが心地よい。
何も言わずとも、ただ黙って歩くだけで幸せに浸れるとは…。
しかし、そんな時間も唐突に終わる。
目の前に厄介な人物が現れた。
「ロイド様」
俺はため息を一つつき、呼びかけに応じる。
「何でしょう、ショウ王子。待ち伏せですか?」
レティを歩みを止め、俺達を見る。
「はい、そうです。お二人が一緒だと聞き、今しか無いと思いましたので」
ちらりと周りを見ると、ダイス王国から来た従者が数人いた。
まぁ、数は問題ではないな。
ずっとつけられていたのも気付いていたし。
俺は鋭い視線をショウ王子に向ける。
「用件を早く仰って下さい。見ての通り、私達は一刻も早く帰りたいのでね」
レティもコクコクと頷く。
早く風呂に入りたいんだろうな…。
いつもは騎士団のシャワー室を借りているらしいが、今日は時間が無かったのだろう。
「そんなに時間は取らせません」
そう言って、ショウ王子はレティの方を向く。
そしてすかさずレティに近づき、跪く。
「好きです、レティ。初めて会った時から私はずっと貴女に惹かれていました。貴女に婚約者がいる事はわかっています!でも、この想いは諦められない!隣国の王子としての権限で貴女を攫ってもいいが、私は貴方の心が欲しい…。今一度、ロイド様に闘いを挑み、勝利した暁には私の手を取る事を考えていただけますか?」
手を差し出すショウ王子。
公衆の面前で何をやっているんだ…。
帰宅途中の役人がジロジロ見ているぞ。
レティも恥ずかしそうにオロオロしている。
まったく、相手の事を考えて行動出来ないとは…。
さて、レティはどうする?
再びレティを見ると、何故か目つきが変わっていた。
「隣国の王子の権限とは、一体、何をするおつもりなんですか?」
「まだ具体的には考えてはいませんが、そういった手段も辞さないという私の意気込みですよ」
ショウ王子はニコリとする。
ふーん…、少しは交渉術というものを学んだようだな。
さて、レティは何と答えるだろうか…。
って、えっ!?
臨戦態勢なんですけど!
あの目つきはヤバい!
何とか止めなくては!
「ショウ王子!その勝負、承りました」
俺は大声を張り上げる。
それに気付いたレティから、剣呑な雰囲気が消えた。
良かった。今、ここにいる全員が一命を取り留めた。
「受けていただき、ありがとうございます。では、明後日の午後に訓練場で」
「わかりました」
ショウ王子は立ち上がり、王宮へと帰っていく。
俺とレティはそれを見送った。
しかし、明後日とは…。
戴冠式の前日じゃないか!
あぁ!忙しくなるな!
ショウ王子のラストターンです。
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