84.sideエイダ③
「皆さん。昨日に引き続き、アナスタシア王女の行く末を見守る会に参加いただきまして、ありがとうございます」
私はこの会のホストとして、会員の皆さんに丁寧にお礼を述べる。
「エイダ様…。こちらも予定があるので、緊急招集はこれっきりにしてくださいませ」
ゲッソリした顔でクロエ様が仰る。
クロエ様は、王妃教育の最中に呼び出してしまった。
時間創出のため、今日のカリュキュラムは2倍速で行われたらしい…。
クロエ様の可愛らしいお顔に生気が無い…。すまん…。
「こちらもです…。うぅ…、汗臭い…」
スカーレット様は、騎士団との訓練中に呼び出してしまった。
いつものドレス姿ではなく、騎士団の方が着るようなお姿で登場された。背が高くてスラリとしたスカーレット様は、男装の麗人のようで、めっちゃ興奮した。いや、現在進行系で興奮している。
「何事にも臨機応変に対応されなくては、王妃は勤まりませんよ?」
辛辣に言葉を投げかけるのはシルヴィア様だ。
婚約者と一緒に商売をしているため、咄嗟の対応力が素晴らしい。
貴族とは思えないフットワークだ。
「はぁ〜、シルヴィも成長したね〜。昔は引っ込み思案でオドオドしていたのに。でも、それを悟られたくないから無表情でいたら、周りから冷たい女だと評価されて落ち込んでたのに…」
「ベラ!昔の話はいいでしょう!私は過去の自分を克服したの!」
「はいはい。ヨハン様々ですね」
「もう!」
軽口を叩いているのはイザベラ様だ。
彼女はアナ様に呼ばれていたため、こちらにもすぐに来てくれた。暇なのかしら?
「フフッ。ベラはシルヴィア様が自分を頼ってくれなくなって寂しいのでしょう?クリスから聞きましたわよ」
「ち、違います!ギャビーお義姉様!…もう、クリスったら」
溢れんばかりの色気を伴ってここにいるのはガブリエラ様だ。
一人だけ纏っている雰囲気が『夜』なんですが…。
というか、イザベラ様はシルヴィア様の代わりをアナ様に見出したのね。面倒見が良いというか、頼られたい気質なのかしら?
「あの〜…、それで何故集まったのでしょうか?」
「アナ様。デートのお誘い、上手くいったようですね?」
「何故それを!」
アナ様が、大袈裟に驚く。
「私の手の者が、ヴェルン副団長をマークしています。報告によると、思い悩んだ顔でアレクシス王子の執務室に入ったかと思うと、出てくるときは何か意気込んでいらしたようです」
「えっ!ヴェルン副団長を尾行してるんですか?!」
クロエ様が驚く。
「もちろん。見守る会の会長としては、当然の事です!」
「エイダ様…いつから会長に…」
あ然とした顔でシルヴィア様が呟く。
「なので、アレクシス王子に何があったのか聞きに行きましたわ」
「とんでもない行動力ですね…」
イザベラ様は引いている。
失礼な!『推しカプ』が幸せになるためなら、いくらでも下働きしますよ!
「それで、どんなお話が聞けたのですか?」
ガブリエラ様が続きを促してくれる。
この人も意外と楽しんでいるな。
「戸惑いもあったようですが、嬉しそうにしていたようです。やりましたね!これは期待が持てますよ、アナ様」
「はぁ〜…」
アナ様が弱気になっている。
どうしたというのだ。
「アナ様?ご不満があるんですの?」
「いえ、そうではなく…。あまり意識したこともないのに、ヴェルン副団長を利用するようで気が引けてまして…」
「相手に悪いとお思いなのね?」
「はい…。誘ってみたのはいいものの、どう接したらいいのか分からなくて…」
え〜〜。
意外と恋愛経験無いのかしら?
前世では、どんな恋愛ドラマもどんと来いの人だったのに…。
「そのままでいいのでは?聞くところによると、ヴェルン副団長は、アナ様を聖女のように思ってますわよ。神格化し過ぎて、おならもう○こもしないと思ってるんじゃないかしら?」
「ちょっ!エイダ様!!」
「ですから、人間らしい所を見せてみては?アナ様だって、怒ったり泣いたりする、一人の女の子だと見せてあげたらいいんです。化けの皮しか愛せないような男とは、そもそも上手くいきませんわ!」
「化けの皮って…」
クロエ様の顔が引き攣っている。
「あら?私、何かおかしい事でも言いましたかしら?」
「いえ、『言い得て妙』だと思いまして。私も化けの皮は剥ぎ取られてますからね」
クスクス笑いながら、クロエ様はそう仰った。
おお!アレクシス王子とクロエ様は、深い所までわかり合っているのね。
これは、血縁抜きにしてもアナ様には勝ち目は無かっただろうな。
「わかりました。ちゃんと素を出してみます」
「その心意気ですよ、アナ様!思っていたのと違うのも、また新しい魅力!とでも思わせてあげなさいな」
「はい、そうします」
そう言って、アナ様は凄く良い笑顔を見せてくれた。
少しは緊張が解れたようね。
良かった良かった。
「ところで、アナ様」
「はい」
「前世が『月越真奈』って本当ですか?」
「何故、それを!!」
「えっ!そうなんですか!!」
ユリアさんも食いついてくる。
「アレク兄様に聞きましたわね…?」
不穏な空気を纏い、私は問い詰められる。
この話は地雷かしら?
「えぇ。でも、アナ様が真奈様だとは言ってませんわよ」
「なら、良いです。でも、絶対に言わないで下さいね!」
「わかりましたわ。約束します」
「絶対ですからね!」
「はい…。でも、真奈様の演技の幅が広がったのって、もしや…。確か、休業もされてましたよね?」
「そうですよ!隆二が死んだからです!お陰様で、後年はハリウッド映画にも挑戦させてもらって、アカデミー賞の式典にも参列できました!」
なんか、ヤケクソ気味ね…。
「では、恋愛もお得意なのでは?」
「隆二以上の男がいなくて、結局その後、死ぬまで誰とも付き合いませんでした…」
アレクシス王子…。
貴方、死んでから元カノに神格化されてるわよ…。
道理で、恋愛の仕方が初心者だと思った…。
「まぁ、ヴェルン副団長とのデート頑張ってくださいね」
「やってやりますよ!」
その受け答えに、一抹の不安が心をよぎった。
亡くなった順
アレクシス→ユリア→エイダ→アナスタシア
です。
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