80.アナスタシア殿下④
「アナスタシア王女は、どんな方だったら許容範囲なんですか?それか、アレクシス殿下以外に少しでも気になる方はいないのですか?」
エイダ王女が聞く。
確かに…。
一番好きな人はアレクシス殿下として、容姿、性格、年齢など、アナスタシア殿下の好みを把握しなければ始まらない。
また、殿下の婚約者候補となると、下位貴族は対象外となる。
幸い、ここにはミストラル王国の上位貴族とオルフェル連邦国の王女様がいる。
アナスタシア殿下好みの方への繋ぎもつけやすいだろう。
でも、学園とかに少しでも気になる方はいないのかしら?
これだけの美少女ですもの、殿下にちょっかいを出している方がいてもおかしくないわ…。
私は、殿下の発言を待つ。
「アレク兄様以外に気になる男性はいないわ。好みは…そうねぇ…、私の事だけを見てくれる人かしら?もちろん、容姿は整ってて欲しい!」
「アナ様…、すごく自分に正直ですね…」
アナスタシア殿下の発言に、イザベラ様が応える。
「当たり前じゃない、ベラ!そこは妥協できないわ。それに、貴女達に容姿の事をとやかく言う権利は無いと思うわよ」
皆さん、黙ってお互いを見る。
それはそうだ…。
私達の婚約者は、皆さん見目麗しい。
しかも、この国でも稀に見る美形揃いだ。
身内贔屓を抜きにしても、イスタークお兄様とクリストフお兄様ですら麗しい。
「この中で『容姿なんて関係無い!』と言えるのは、そこにいるユリアさんくらいでしょうねぇ…」
クロエの発言に、みんなの視線がユリアさんに集まる。
ユリアさんは、ピンクブラウンの髪に琥珀色の瞳をした美少女だ。これほどの美少女の恋人は、美形なのではないのか?
いったい、どんな恋人なのかしら?
謎だわ…。
ユリアさんを見ると、照れたような顔をしている。
決して、褒められた話ではないんですが…。
「ユリアさんは、恋人のどんな所に惹かれて付き合っているのかしら?」
ギャビーお義姉様が聞く。
「わ、私ですか!?え〜っと、優しくて、頼りがいがあって、強くて、仕事が出来て…」
ふむふむ、ロイ様も同じね。
「あとは執拗に私だけを愛して、デロデロに甘やかしてくれる所でしょうか」
……。
すごいノロケを聞いてしまった。
でも、ロイ様も一緒か…。
周りを見ると、皆さん身に覚えがあるような顔をしている。
しかし、ユリアさんの恋人はどなたなのかしら?
ちょっと気になるわ〜。
クロエは知っているようだけど…。
クロエを見ると、顔に手を当て、笑いを堪えているようだった。
「クロエ様!貴女、ユリアさんの恋人をご存知なんでしょう?誰か教えて下さいよ!」
とても気になったのか、アナスタシア殿下が聞く。
クロエはユリアさんを見る。
「言ってもいいのかしら?」
「このメンバーなら構いませんよ。それに、恐らく顔を想像出来ないでしょうから」
「それもそうね…」
クロエはユリアさんに確認した後、その名前を告げる。
「ユリアさんの恋人はヘイムダルよ。王家の影の頭領なの」
えぇっ!王家の影の頭領?!
……。
と言われても、ユリアさんの言った通り、役職は認識出来ても顔が思い出せない。
申し訳ないですが、これは容姿なんて関係ないと言える筈だわ…。
「やっぱり、自分だけを愛してくれる人がいいわよね」
「学園にいい人はいないのですか?」
アナスタシア殿下の呟きに、クロエが聞く。
「声は掛けられるけど、イマイチなんです。私の反応が悪いと、それ以降近寄って来なくなってしまうし…」
「意気地なしも願い下げですわよね」
シルヴィア様も辛辣ね。
でも、そうなると年上の方がいいのかしら?
「そういえば、ダイス王国のショウ王子も婚約者がいらっしゃらないそうですよ。ああいった方はアナスタシア殿下の好みに入りますか?」
容姿は整っていて、隣国の王子だ。
能力もあるようだし、剣の訓練も継続していて努力家でもある。そんな方はどうかしら?
アナスタシア殿下は暫く考えた後、
「確かに容姿は整っていますが、可愛い系は私の好みでは無いですわ」
と却下される。
残念!ショウ王子。脱落です。
そんな中、ふとイザベラ様を見ると何故かホッとした顔をしている。
「イザベラ様?」
「はっ!はい、スカーレット様。何でしょうか?」
怪しい…。
私のミレン家の勘が、何かあると告げている。
「イザベラ様は、どなたかに心当たりがあるのですか?」
「えっ!」
声がひっくり返っていますよ…。
明らかに何か知っているようね。
エイダ王女も加勢する。
「何か知っているなら、お話なさって。アナスタシア王女の為でもあるのですよ」
「でも…」
イザベラ様はまだ口ごもる。
「イザベラ様。今、お話くだされば、今日以降あなた様の事はベラお義姉様とお呼びさせていだきます」
「えっ!本当に?」
「はい」
実はイザベラ様の事はまだ「お義姉様」とお呼びした事は無い。ギャビーお義姉様は幼馴染だという事と、すでにミレン辺境伯家にて家政を取り仕切っているため、自然とそう呼んでいた。
しかしイザベラ様は、クリスお兄様が婿入りする先であり、まだお互いの事をよく知らなかった為、中々「お義姉様」と呼ぶ事が出来なかった。
呼んで欲しいとは、言われていたけどね…。
そして、その切り札を使う時が来たのだ。
アナスタシア殿下の為に、是非とも良い人の名を告げて欲しい。
「では、言うわね。その人は…」
挙げられた名前に一同が驚く。
まさか、あの人がアナスタシア殿下に好意を持っていたとは…。
想い人に、勝手に他人の婚約者候補に名前を挙げられ、振られるショウ王子…。
ドンマイ(笑)
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