78.アナスタシア殿下②
『えぇっ!!』
エイダ様とユリアさんが揃って驚く。
言葉も出ないようだった。
沈黙の後、暫くしてエイダ王女が口を開く。
「クロエ様とイザベラ様は分かっていたんでしょうけど、何故、スカーレット様達は驚かないの?」
おおっと、こちらに質問が来た。
私は思っていた疑問をぶつける。
「エイダ様。『元カノ』って何ですか?」
「えっ!そこ?…、もしかしてガブリエラ様達も?」
「えぇ。わかりませんわ」
「お恥ずかしい事に、私もまったく…」
ガブリエラ様とシルヴィア様も同じ反応だった。
良かった…。
私だけじゃない。
「『元カノ』とは、元・彼女の略で、昔付き合っていた恋人という事です」
アナスタシア殿下が教えてくれる。
ほうほう…。
って、えっ?!恋人?
思わずアナスタシア殿下をまじまじと見てしまう。
「皆さん。そんなに見ないで下さい…」
照れたように殿下が答える。
どうやら、ガブリエラ様とシルヴィア様も同じような事をしていたみたいだ。
「でも何故、クロエとイザベラ様はその事を知っていたの?」
私はクロエに聞く。
「成り行きよ…。元々、この事実はイザベラ様しか知らなかったわ」
私達はイザベラ様を見る。
「内容が内容だったので…」
まぁ、そうでしょうね…。
私でもそうしたわ…。
「前世を思い出したばかりのアナスタシア様は混乱されていて、その時、近くにいて介抱してたのが私でした。ただ、あまりにも突拍子も無い話だったので、私も相談相手を探していたんです。最初にクロエ様に話したのは、たまたまでした。誰かは特定せず、小説の話のようにお伝えすると、話の流れでアレクシス殿下もそうだと…」
「えっ?アレクシス殿下も前世があるんですか!?」
ガブリエラ様とシルヴィア様が驚く。
イストお兄様とヨハン様は、その話を婚約者にはしていなかったようだ。
私は、デビュタントの時に本人とロイ様から知らされていた。
更にクロエが続ける。
「ちなみに、エイダ様とユリアさんもよ」
と、爆弾発言をしてきた。
もはや、パニックだ。
シルヴィア様は、
「前世持ちって、珍しい事ではないのかしら?」
などと、思い悩まれてしまった。
「シルヴィア様、これは珍しい事ですのでお気になさらずに」
と、見かねたエイダ様がフォローしてくれた。
「でも、よくアレクシス殿下が『元カレ』だとわかりましたね」
エイダ様が聞く。
「昔からアレク兄様の側は、どこか懐かしく、安心できたんです。最初は家族愛からきているのかと思っていました。ただ、エスト兄様への気持ちとは段々違う事に気付いてきて…」
「慕情だと気付いたのね…」
エイダ様の言葉に息を飲む。
「はい…。その後、クロエ様にアレク兄様の前世の名前を聞いた時には衝撃でした。そして、まだ縁が切れて無かったと歓喜したんです。元々、前世では売り言葉に買い言葉で別れを口に出してしまっただけで、本当に嫌いで別れたワケではありませんでした。彼が…、隆二が忙しい人だったので、私が寂しさに耐えきれなかったのが原因です」
「アレクシス殿下は前世で、1年の大半を海外で過ごしていたようですから…」
クロエが説明してくれる。
それは前世の真奈さんも寂しかったに違いない。
しかも、前世で恋人だった人が、今世では血の繋がった兄妹だったなんて…。
「ままならないものね…」
エイダ様も何か思う所がありそうな雰囲気だった。
「別れた事を後悔しているさなか、隆二が亡くなったと聞いて…」
「それはお辛かったでしょう」
ガブリエラ様が優しく宥める。
「はい。暫くは、私も仕事が手につかなくなりました。後を追おうとも思いましたが、何とか立ち直り、私は寿命をまっとうしました」
凄い…、強かだ…。
「でも結局、それ以来恋愛が出来なくなり、独り身で人生を終えましたけどね」
はにかんだ顔が泣いているようで、私は思わずアナスタシア殿下を抱き締めてしまった。
不敬の誹りは、後で甘んじて受けます!
ただ今は、真奈さんを抱きしめたい!
そう思ったのは私だけでは無かったようで、みんなが彼女を抱き締めていた。
アナスタシア編、もう少し続きます。
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