72.我慢の限界
誤解が解けた所で、俺達は帰路につく。
レティとガブリエラ嬢が乗ってきた馬車に、エイダ王女とユリアを押し込め、先に二人は城に帰した。
レティとガブリエラ嬢は、俺達の馬に横抱きに乗せられている。さて、この後どうしたものか…。
そんな風に思っていると、イスタークに呼ばれる。
「ロイド。俺達は辺境伯家に一旦帰る。どうしても外せない用事が出来たからな」
「そうか」
「殿下には、そのまま帰ったと伝えてくれ」
「わかった」
話をするために近づいたせいか、イスタークがこぼした独り言がばっちりと聞こえた。
「今さら謝った所で遅いんだがな…」
その発言を聞いて、ガブリエラ嬢が顔色を変える。
あの様子だと、イスタークの執着心の再教育が施されるな。
もう、ご愁傷様ですとしか言いようが無い。
イスタークは、少しでも心が離れた事が我慢ならないのだろう。おそらく、泣いて許しを請うても数日は聞き入れて貰えないだろうな…。
ガブリエラ嬢、頑張れ!
遠くなる二人を見ながら、俺はエールを送った。
「お義姉様、大丈夫でしょうか?」
レティがガブリエラ嬢を心配する。
「う〜ん、大丈夫だと思うよ」
程度はわからんが、イスタークの愛情をこれでもかとぶつけられるだけだし…。
「そうでしょうか?先程のお兄様の発言…。お義姉様は婚約破棄されてしまうのでは…?」
レティがオロオロしている。
うん?
アレって、そう捉える?
……。
確かに、そうも捉えられる発言か…。
「婚約破棄は絶対に無いよ。そこは安心して。それに、レティはイスタークが簡単にガブリエラ嬢と離れられると思うの?」
レティは暫く考えた後、
「無理ですね」
と断言した。
まったく…。最初からそんな風に冷静に考える事ができたなら、こんな騒動は起こらなかったのに。
これも、シナリオ強制力というヤツなのか…。
本当に厄介だな。
俺は姿の見えない敵の事を考え、眉間にシワを寄せる。
そんな様子の俺に、レティが怯える。
「やっぱり、ロイ様も怒ってらっしゃいますよね…?」
「えっ?」
レティが涙目で訴えてきた。
「格式高い筆頭公爵家のウィラー家で、変な騒動を起こしてしまいましたし…」
「誤解は解けたから、良いんじゃない?」
「でも!」
「まだ何かある?」
いや、本当に心当たりが無いな。
俺的には、レティが戻って来てくれれば何も問題は無いんだが?
また、愛を囁いてズブズブに甘やかせばいいんだし。
「だって…、カフェにいる時からずっと怒ってらっしゃるでしょう?」
「えっ?」
俺って、怒ってたの?
「気付いて無いんですか?」
レティもびっくりしたような顔をしている。
「ロイ様、カフェで私に話し掛けた時から、ずっと一人称が『俺』ですよ?口調は丁寧でしたけど、ロイ様が他国の王族にそんな態度を取るなんて考えられません。なので、ずっと怒っているのかと思いまして…」
うわっ…。全然気付かなかった。
そんなに露骨に態度に出ていたんだ…。
「カッコ悪…」
俺は自己嫌悪に陥る。
レティが絡むと、俺は途端に感情の制御を失うんだな。
そんな俺の様子を見て、レティがあり得ない事を口走る。
「公爵家の品位を落としてしまったお詫びとして、やはり婚約破棄をするしか…」
「婚約破棄なんてしないし!」
「でも!」
「公爵家の品位なんて、どうでもいい!」
俺は驚くレティを見て悟った。
なぜ、先程のイスタークの言葉を正確に読み取れたのか…。
俺も同じだったからだ。
嫉妬に混じり、俺を突き動かしていたのは『怒り』だったのだ。
こんなに愛を伝えているのに、一欠片でも疑われた事が悲しくて、やるせない気持ちが怒りへと変わったのだ。
「レティは全然わかってない…」
「えっ?」
「これはもう一度、君に分からせるしかないね」
俺はにっこりと笑う。
「ろ、ロイ様?」
「辺境伯の許可も貰っているし…、覚悟してね?」
「えっ?えぇっ!!」
俺は、公爵家へと進路を変える。
殿下への報告は明日でいいか。
帰ったら、今日はもう登城しないという伝令を飛ばさなければ。
イスターク同様、俺にもどうしても外せない用事が出来てしまったからな。
もう、我慢するのは止めよう!
やっとですな…。
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