69.バッドタイミング
俺達はエイダ王女を訪ねた。
通常は、面会のアポを取り、先触れを出してからお会いする。
しかし、今回は全部省いてやった。
俺とイスタークにとっては死活問題だからだ。
アレクシス殿下にも、俺達と同じ目に遭う可能性を説いたところ、快く強行突破の手伝いをしてくれた。
さて、獲物は何をしているのだろうか…。
イスタークを見ると、俺と同じようにギラギラと目を輝かせている。
俺達を敵にした事を後悔させてやる!
エイダ王女付きの侍女が、王女の許可を得て中に通してくれる。室内を見渡すと、ユリアもそこにいた。
ユリアと俺の目が合う。
「ほう…。情報源はお前だったのか…」
そう呟くと、
「申し訳ございませんでしたぁぁぁ!!」
と大声で謝罪しながら、ユリアがひれ伏した。
殿下が言っていたな。
これは土下座と言って、殿下達の前世で最上級の謝罪を表したスタイルなのだそうだ。
「おい。謝って許してもらえるなんて思ってねぇだろうな?」
イスタークが嘲笑いながら見下ろす。
『戦場の死神』が降臨中のようだ。
それだけでユリアは死にそうだ。
ちらりと扉の方を見ると、いつの間にかヘイムダルもいる。
しかし、表情を伺うに助けるつもりはないようだ。
自業自得だ、という言葉が顔に出ている。
「ロイド、イスターク。あんまり怖がらせちゃダメだよ」
「でんかぁ…」
ユリアが涙目で、アレクシス殿下を見る。
「知ってる事を全部、吐かせてからじゃないと。ね?」
「ヒョッ!!」
殿下の笑みが黒い。
さっき脅した事が、相当堪えているようだな。
ユリアが失神しかけた。
「エイダ王女も。わかっているよね?」
殿下が、エイダ王女を見る。
エイダ王女も顔面蒼白になっていた。
「わ、わかりました!もう、降参ですわ!」
よし。話し合いに応じてくれるようだ。
「まさか、アレクシス王子達がこんなに執着体質だったなんて…」
「驚いた?失望した?もう、小説のモデルにしない?」
「いえ、モデルとしては最高の逸材達です!」
「エイダ王女…」
「でも、敵にはなりたくないですわ!」
エイダ王女、懲りてないのか?
エイダ王女とユリアは、現在、殿下によって“正座”というものをさせられている、
殿下はソファにゆったり座り、それを眺めていた。
「で、どう落とし前つけてくれるんだ?」
イスタークが聞く。
「どう、と言われましても…」
「あ“ぁ?」
「ヒイィィィ!」
凄い悪人顔だな…。
ガブリエラ嬢はこの男のどこがいいのか?
むしろ、このまま婚約破棄した方が良いのではないか?
そんな事を思っていると、イスタークの怒りの矛先がこっちに来た。
「ロイド!お前、思っていることが顔に出てんぞ!俺は絶対にギャビーを手放さないからな!むしろ、俺を嫌うならギャビーを殺して俺も死ぬ!」
「えっ!それは困る!」
殿下がすかさず突っ込んだ。
「それに、ロイドも平静ではないな?得意の貴族らしい顔が崩れて、考えを俺に読まれるなんて」
イスタークが憎らしい笑みを浮かべる。
「当然だろ?レティがいないんだ。平静でいられるワケがない。しかもその原因がココにいるなら、消さなければ…」
「ヒイィィィ!」
「ダメだろ!この人、一国の王女だから!ユリアはまぁ…、アレだけど…」
「でんかぁ!!」
凄い勢いでユリアが俯いていた顔をあげる。
滂沱の涙とは、こういう事を言うのか…。
「でも、まだロイドとイスタークで良かったよ」
「え“っ?」
「ですね。私達は、まだ理性が働く人間ですから」
「違いない。これがクリスとヨハンなら、今頃二人はこの世にいないからな」
ギギギ…と音がしそうな動きで、エイダ王女とユリアがクリストフとヨハンを見た。
二人はにこやかにヒラヒラと手を振っている。
「俺、狙撃手だから」
「僕、暗殺が得意なんです。これ、秘密なんで喋らないで下さいね」
二人は壊れた人形のように頭を上下に動かしていた。
「それで、これからどうするかだな…」
イスタークが仕切り直す。
切り替えが早いのは、イスタークの数少ない長所であろう。
「お二人には、命懸けでレティとガブリエラ嬢を公爵家と辺境伯家に戻してもらいましょう」
「そんな事なら、喜んで!!」
もっと無理難題を突きつけられるのかと思ったのか、二つ返事で同意する。
二人が公爵家を出て行った時の事を考えると、かなり難航するだろうが頑張ってもらおう。
それよりも、レティが戻った後の事だ。
あんなに愛を囁いているのに、まだ俺の事が信じられないとは…。
今度こそ、本気で思い知らせるしかないな。
俺は、自分の瞳が昏く濁るのを感じた。
ふとイスタークを見ると、同じ昏い瞳をしている。
考える事は同じか…。
おそらく俺がイスタークを煙たく思うのは、似た者同士だからなんだろう。
と、そんな事を考えていると、エイダ王女付きの侍女が入ってくる。
「失礼します!エイダ…さ、ま?」
侍女は、床に正座しているエイダ王女を見て戸惑う。
「あ〜…、いいの!気にしないで。それでどうしたの?」
「実は…」
侍女はゴニョゴニョと、エイダ王女に耳打ちする。
「あちゃ〜…。間が悪い…」
エイダ王女が頭を抱えた。
「どうした?」
アレクシス殿下が声を掛ける。
「このタイミングで、ショウ王子がガブリエラ様とスカーレット様に接触しました。ロイド様、イスターク様、どうしましょう?」
まさにバッドタイミングですねぇ(+_+)
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