41.ユファ王太后②
ユファ王太后様の雰囲気が変わる。
スッと目を細め、口元に微かな笑みをたたえる。
どうやら、気さくなお祖母様モードから、王太后モードに変わったようだ。
「はて?何の事だ?」
これはとぼけているな。
さて、どうやって切り崩すか…。
ふとアレクシス殿下を見ると、意外な事に落ち着いている。
何か策でもあるのだろうか?
「お祖母様、とぼけないで下さい」
「何を可笑しな事を…」
「私は人の命がかかっているのに、腹の探り合いなどしたくありません。その命が例え他国の者であってもです。偽善かもしれませんが、この手で救えるのなら救いたい!自分の身の丈はわかっているつもりですが、私の手の届く範囲の者たちは皆、幸せになって欲しい。お祖母様の兄上も、私にとっては手の届く範囲です!」
王太后様が、鳩が豆鉄砲でもくらったような顔をしている。
殿下…、無策か…。
…しかし、シュブラン皇国という大国の皇帝も、殿下にとってはただの親戚扱いとは。
俺は自然と笑みがこぼれた。
王太后様を見ると、先ほどまでの雰囲気が崩れていた。
正直に真正面からぶつかるやり方は、案外王太后様にも効いたようだ。
「お前は真っ直ぐな男だな…」
王太后様が殿下を見据える。
殿下も黙って王太后様を見据えた。
暫く沈黙が流れた後、観念したように声が掛かる。
「あぁ、その通りだ。お前達が掴んでいる情報と同じだ。兄上とその側近たちは伝染病に罹っている。フェイが機転が利く男だったからそれほど被害は広がっていないがな」
「フェイロン皇子は医療の心得もあるのですか?」
「アヤツは好奇心が旺盛なのだ。そして優秀だ。学んだそばから全てを吸収し、蓄えた知識は衰えない」
「流石は皇帝に一番近い男ですね」
「アレク!何をたわけた事を言っておるのだ。フェイほど、皇帝に相応しくない男などおらんぞ!」
「えぇっ!!」
アレクシス殿下は驚いているが、俺も王太后様と同じ意見だ。むしろ皇帝に相応しいのは…
「むしろ皇帝に相応しいのはフェイの姉の第一皇女だろう」
「第一皇子ではなく、ですか?」
「アイツはダメだ!軍の半数を掌握しているそうだが、皇帝になったら戦争ばかり起こして国を疲弊させるだろうよ」
「それはこちらとしても困りますね…」
「そうだろう。その点、第一皇女のリオウは色々弁えている。自分の身の丈を知っているからな」
意趣返しとばかりに、殿下の言葉を引用する。
殿下は少し恥ずかしそうにした。
「でも、フェイロン皇子でもダメなのですか?」
「フェイは優秀すぎて、周りが気後れしている。せっかく優秀な側近を集めても、皆、フェイの顔色を伺うようになってしまうそうだ。己を諫める存在がいない為政者は、遅かれ早かれ国を滅ぼす。良い為政者とは、体の中心に一本芯を持ち、人の意見を聴けて、人に相談できる人間だ。アレク…、お前のようにな」
「えっ!」
そう言って、王太后様はニヤリと笑う。
いきなり持ち上げられ、殿下は目が泳いでいた。
「そ、そんな事を思っていたのですか!?」
「あぁ、お前は王に向いている。先ほどの啖呵で、妾はそう確信したぞ」
そう言って、王太后様はカラカラと笑った。
「それにお前にはロイド達がおるではないか。彼等はお前に迎合するだけの人間か?」
「いや、違いますね」
「キチンと己を諫めてくれる側近は重要だぞ?」
俺はアレクシス殿下に向かい、大きく頷く。
何故か納得がいっていない顔をされた…。
「ロイドは妾が鍛えただけあって、性格が悪いからな。アレクも頑張ってロイドの手綱を握るのだぞ。でないと…」
「でないと?」
「下剋上されかねないぞ。もしくは傀儡政権か?」
王太后様は言いながら笑っていた。
何て事を言っているんだ…。
俺はこう見えて、アレクシス殿下に心酔しているんだがな。
「気を付けます…」
殿下がこちらをチラチラ見ながら小さな声でそう返事をした。
「では、アレクに頼みたい!我が兄、シュブラン皇帝のシンロンの為に力を貸してくれぬか」
「もちろんです、ユファお祖母様!」
アレクシス回でしたね。
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