40.ユファ王太后①
遅くなりました…(-.-;)
王宮の一角、シュブラン風の異国情緒ある離宮がユファ王太后様の居所である。
離宮に入ると、庭園に案内された。
庭は、普段王城の庭園では見ることの無い花々で彩られている。これらはシュブラン皇国から輸入したものだ。
アレクシス殿下は、物珍しげに花を見ている。
「ロイド。ここには久しぶりに訪れたが、こんなに見事だったか?」
「ユファ王太后様の庭園はいつでもこんな感じですよ。愛する人に花を贈ったりする習慣がついた為、そう感じるんでしょう」
「なるほどな。確かに花を見ても思い浮かぶのはクロエの事ばかりだからな…」
「ホホホホ…。アレクも女心を理解するようになったか」
声のした方を向き、礼をする。
やって来たのはユファ王太后様だ。
白髪交じりの豊かな黒髪を複雑に編み上げ、年齢を感じさせない出で立ちをしている。若々しく見えるのは、シュブラン人だからというだけでは無いのだろう。
本人と侍女達の涙ぐましい努力が伺える。
御召し物は、何枚も重ね着するシュブラン流の衣装を纏っていた。
施された刺繍が素晴らしい。
この衣装はレティにも似合いそうだ。
「どうしたロイド?着物を食い入るように見て」
「婚約者にも似合いそうだなと思いまして」
「ミレンの所の娘か…。確かにミストラル人だが、あの娘はシュブランの衣装も似合いそうだな」
「お祖母様、クロエに似合いそうなのはありますか?」
「ロイドの妹か。あの子は顔立ちが甘すぎる。この国の衣装の方が似合うと思うぞ」
「なるほど…」
「だがまぁ、柄にもよるかもしれんな。小花を散らしたような意匠のものなら…、まぁ大丈夫たろう」
「ほうほう…」
アレクシス殿下は今日、何をしに来たんだ…。
すっかりクロエに似合うものを探せ!状態になっている。
「しかし驚いたぞ。妾も、まさかお前達とこんな話が出来るとは思ってもみなかったわ」
「ユファ王太后様。私の事は気にせず、アレクシス殿下と交流を深めて下さい」
「ロイドよ、そんな堅苦しい事を言うな。お前とも知らぬ仲ではあるまいに」
「それはそうですが…」
「妾は、お前の事も孫のように思っておるぞ。さぁ、孫たちよ。妾に恋バナというものを話してはくれないか?」
俺と殿下は顔を見合わせた。
ユファ王太后様はゴシップに飢えている…。
彼女を満足させない限り、こちらの話を聞きそうにない。
ハードルは高いが、やるしかないだろう…。
お互いに頷き、覚悟を決める。
「では、私からお話します」
「うむ」
そう言って、アレクシス殿下がクロエとの馴れ初めを語りだした。
最初は躊躇しながらであったが、王太后様の絶妙な合いの手により、殿下はツラツラと話し出した。
後半は如何にクロエが可愛いか、惚気話を語っていた。
王太后様を観察してみると、キラキラと目を輝かせている。
ご満悦のようで何よりだ。
「アレク、ありがとう。いや〜甘酸っぱいのう〜」
「クロエの魅力は話し尽くせませんからね」
「所でロイドはどうだ?」
「えっ?私ですか!」
「聞きたいのう〜。この憐れな年寄りの願いを叶えてほしいのう〜」
「ロイド!俺からもお願いだ!」
「…。わかりました。殿下のようには出来ないかもしれませんよ?」
「わかっておる。何でもいいから話してみろ」
「では…」
俺はそう言って、レティとの馴れ初めを語りだした。
語り終わった後、王太后様が瞳をウルウルさせている。
何故だ…?
「ロイドよ…。お前は稀に見る純愛体質なのだな」
「はぁ…」
「流石はルーカスの子供じゃな」
「宰相がどうかしましたか?」
「アレクよ。ルーカスはあんな腹黒陰険野郎だが、ロイドと同じように奥手だったのだぞ」
「えっ!私はてっきり、夫人が宰相の逃れられない戦略に嵌まり、結婚せざるを得ない状況に追い込まれたのかと…」
「そうだろう、そうだろう。普通はそう思う」
この人達は、俺の両親を何だと思っているんだ…。
「実際は、ヴィクトリア夫人が押せ押せな感じだったぞ。ルーカスも恋愛スイッチが壊れていたからな」
「仕事一筋ですか…」
「その通り。なんにも面白みのない男だった。顔だけは抜群に良かったがな」
「ロイドと同じですね」
おい!
「しかし、愛に目覚めてからのルーカスは凄かった。独占欲の塊になっていたな。何だアレは?ウィラー公爵家には、独占、執着の呪いでもかかってるのか?」
ユファ王太后様が聞いてくる。
「そんな話は聞いた事が無いですが、一途な家系とは聞いています」
「何だソレは!綺麗な言葉でまとめおって…。お前達の感情は、執着以外の何者でもないだろう」
「はぁ…」
「だが、コレはミストラル王国全体に言える事だがな。広大な後宮を持つシュブランでは考えられん!」
「では、お祖母様もお祖父様に執着されていたのですか?」
殿下が王太后様に話を振った。
「当たり前だろう!妾のこの美貌と才覚だぞ?夢中にならない方がおかしいわ!」
「…ソウナンデスネ」
「まぁ、妾もシュブラン皇国の後宮制度は疑問しか無かったからな。こちらの国に来れて良かったかもしれん…」
何だかんだで、王太后様も前王の事を好いていたのだろう。
その性格を読んで、シュブラン皇帝がコチラの国にユファ様を寄越したのかもしれない。
「では、シュブラン皇帝に感謝ですね」
「まぁ…そうなるな」
照れ隠しのように王太后様はそう答えた。
攻めるなら今かもしれない。
俺は殿下に目線を送った。
「お祖母様、シュブラン皇国についてもっと教えて頂いてもよろしいですか?…例えば、衣装や食べ物…」
「そんな事なら容易いわ」
「…そうそう、流行っている病など」
「!」
王太后様の雰囲気が変わる。
どうやら何か知っているらしい…。
年寄りの恋バナ(笑)
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