32.敵に回してはいけない
ッガキィィィン!!
ゴトッ…、ドサッ…。
「はぁ…はぁ…、ま…参りました…」
7本目の剣が折れた後、うつ伏せに倒れたショウ王子から参ったが出た。
「そうですか。では、フェイロン皇子との対決はレティでいいですね」
「は、はい…」
ミレン辺境伯が終了の合図を出すと、テオ騎士団長がショウ王子に駆け寄る。
「王子!大丈夫ですか!!」
「へ、平気です…」
ショウ王子を抱き起こしながら、テオ騎士団長がこちらを睨む。
「ロイド様!いくらなんでもコレはやり過ぎだ!」
何を言っているんだ?
こちらの力量を見誤ったのはそちらだろうに。
「私はショウ王子の剣を折っただけです。今、そこで倒れている原因は基礎体力が不足しているからですよ。私は一太刀も王子に与えていません」
「しかし…!」
「それに、試合を続行したのはショウ王子の意思です。貴方はなぜその意思を尊重しないのですか?」
俺は、抱えられながら立っているショウ王子に向き合う。
「王子…、相手の力を見誤る事は死に繋がります。危機感を常に持って下さい。何度も立ち向かう根性含め、評価は『もう少しがんばりましょう』ですね。お疲れ様でした」
俺の言い分にあ然とした顔をしている。
「おや、どうしました?」
「ロイド様…、貴方にとってこの勝負は本気では無かったのですか?」
「本気でしたよ?レティが賭かってますからね。ただ、私の全力をぶつけたら、ショウ王子は確実に死にますよ?」
「なっ!!」
「よく思い出して下さい。貴方は私の剣を1本も折れなかった。それどころか体力の無さで自滅している。これで私に『全力を出せ!』とは、片腹痛いですよ」
「…」
「ロイド、そこまでにしておけ!」
アレクシス殿下がイスターク達を連れてやって来る。
俺は折り目正しくお辞儀をした。
「ショウ王子、お疲れ様でした。実は、ロイドはこの国でも屈指の実力者です。彼の力を侮らないでいただきたい」
「そんな話、聞いてないです…」
「自国の手の内はそう簡単に晒せませんから。それに彼の得意な武器は、剣では無いんですよ?」
「殿下…」
「喋り過ぎましたね。まぁ、今日のショウ王子の頑張りに対するご褒美だと思って下さい」
ショウ王子が納得のいかない顔をしている。
「どうしました?」
アレクシス殿下が尋ねる。
「それならロイド様がフェイロン皇子と戦えばいいじゃないですか!何もレティが戦わなくても…」
俺はその発言に鋭い視線を送る。
レティと言った事もそうだが、この無知な王子は本当に剣姫を知らないらしい。
口を開こうとすると、殿下に止められる。
「ショウ王子…、スカーレット嬢はロイドより強いですよ」
「えっ!?」
「『剣姫』、知らないんですか?」
「『剣姫』くらい知ってます!剣を振るう美しい女性の事を指すのでしょう?」
俺たちは呆れた顔をしてしまった。
「ショウ王子、恐れながら申し上げます。我が妹スカーレットの剣の実力は、そこにいる父エドワード・ミレンと同等のものです。私も敵いません」
イスタークが発言する。
それに反応したのはテオ騎士団長だった。
「なっ!『戦場の死神』と言われているイスターク様より強いのですか!!?」
「そうです。まぁ、『剣』だけの話ですけどね」
イスタークも負けず嫌いだな。
ちょっと笑ってしまう。
ショウ王子とテオ騎士団長は、驚き過ぎて固まっている。
そして、力無く項垂れた。
「ショウ王子。自分の限界を今決めるのは時期尚早ですよ。何年も鍛錬を続ければ、貴方も強くなれるでしょう」
ミレン辺境伯がショウ王子を慰める。
しかし衝撃が強すぎて、あまり聞いていないようだった。
「そろそろこの場を次の方に譲った方が良さそうですよ?」
クリストフが忠告する。
入口の方を見ると、フェイロン皇子とラン様が準備をしていた。
「レティ、頑張って」
「はい!私もロイ様のように、相手の心を折ってさしあげますわ!」
「ほどほどにね…」
レティはやる気満々だった。
観客のいる試合は気合が入るらしい。
とんでもないパフォーマンスを披露しそうだ…。
試合前に、ルドルフ王子も観客に加わった。
わくわくしながら開始の合図を待つ様は、子供のようだ。
どうやら創作意欲が湧くらしい。
ヘイムダルが、大事をとってユリアを遠ざけている。
アイツにここまでの独占欲があるとは驚きだ。
訓練場の中央で、二人が対峙する。
「二人とも、思う存分やるといい」
「エドワード卿の前でみっともない試合は出来ないね」
「本気でいきますわよ」
「いい面してんじゃねぇか…。では、両者構え!」
二人が構える。
「始め!」
ミレン辺境伯の合図で二人の試合が始まった。
試合はとても激しいものだったが、やはりレティが圧倒している。
フェイロン皇子は流石は剣舞の達人らしく、舞うような剣さばきだ。流れるような攻撃、軽やかな身のこなし…、これが試合だと言うことを忘れてしまいそうだった。
対するレティは、かなりのパワープレイだ。
片手で剣を振り下ろすと、それを受け止めるフェイロン皇子の足が沈む。
正直言って、よく耐えているなと思う。
フェイロン皇子の実力が相当なものだと伺えた。
そんな打ち合いをしていると、レティの様子が変わった。
今までのパワープレイが嘘のように軽やかな攻撃になる。
よく見ると、フェイロン皇子の技を同じ技で返している。
…威力とスピードを倍返しで。
この激しい剣戟の中で、よくあんな事ができるなと思う…。
「アレ…、ムカつくんだよなぁ」
「わかる兄貴!親父はパワープレイでこちらを屠ってくるけど、レティは神経を逆撫でした上でトドメを刺してくるから嫌なんだよ…。あの様子だと、5倍返しまでいけそうだ」
イスタークとクリストフの会話から、婚約者の意外なサディスティックな面がわかった…。
まぁ、そこも含めて愛せるけどね。
「それにしても、フェイロン皇子の胆力はスゴいな。心の乱れが一切無い」
イスタークが感心している。
「確かにそうですね。実力差は歴然ですが、メンタルが強い。大国の皇帝争いはそれだけ熾烈だという事ですね」
俺も感心してしまった。
やはりフェイロン皇子は侮れない。
ミレン辺境伯家の兄弟喧嘩は凄そうだ…(笑)
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