28.sideエイダ
『気付いたら異世界転生してました』
「めちゃくちゃ羨ましい!」
私は締め切りが迫った原稿をほっぽり出して、異世界転生モノの漫画を読み漁る。
まぁ、現実逃避というヤツだ。
でも、仕方ない!描いてる途中で、「コレじゃない」感が出てきてしまったんだもの!
改めて現実に引き戻り、重い腰をあげる。
冷蔵庫に栄養ドリンクまだあった筈だよね。
そう思い扉を開けるが、中は空っぽだった。
しまった!アレが無いと乗り切れない!
私は財布を持ち、近くのコンビニまで行くことにした。
玄関を出て鍵を閉めた途端、目の前が真っ白になり、気付いたらこの世界にいた…。
「というのが、こちらに来た経緯です。子供の姿になっていたので、すごく驚きましたが…」
「だよね〜」
アレクシス王子がうんうん頷いている。
今、私の目の前には麗しきお方達がいらっしゃる。
アレクシス王子、ロイド様、イスターク様、クリストフ様、ヨハン様、クロエ様、そしてユリアさん?
ユリアさん以外は、めちゃくちゃ知っている。
前世でド嵌まりした乙女ゲームの面々だったからだ。
私の漫画の原作に出てくる方たちとも言える。
「エイダ王女様は漫画家さんだったんですか?」
ユリアさんが聞いてくる。
「いえ、普段は税務署職員ですよ。漫画は趣味で、同人作家をしています」
「ぜ、税務署の方だったんですか!優秀〜!!」
「実家が厳しかったので…」
そう、両親が厳しかったのだ。
娯楽はほとんど取り上げられ、勉強勉強の日々…。
親が誇りに思う職業に就け!が、口癖だった。
早く家を出たかった私は死物狂いで頑張った。
そしてありがたいことに、税務署に職員として採用された。
親は大喜び。
これで義務は果たしただろうと、私はさっさと一人暮らしをすることにした。
一人暮らしは快適だった。
誰にも邪魔されずに創作活動が出来る。
今までの反動で没頭していたら、いつの間にやら同人作家として花開いていたのである。
BLで!
まぁ、イケメン同士の乳繰り合いは、見ても描いても楽しいからいいのだけど。
「税務署職員!じゃあ関税とかにも詳しい?」
アレクシス王子がキラキラした目で見てくる。
「ほどほどの知識はありますが、それは税関の仕事ですね。私はあくまで内国の税を扱う税務署の職員なので」
「同じ税なのに?」
「はい、業種も仕事内容も違います。私は税務調査員だったので、個人事業主や会社のもとを訪れて税務調査を実施し、検査内容によっては指導するという仕事をしていました」
「そうなのかぁ〜」
今度はがっかりしてしまった。
でもイケメンの憂い顔、ごちそうさまです。
「それにしても…、異世界転生してます!前世の記憶があります!と言っても驚かないんですね?」
私は気になっていた事を聞いてみた。
「あぁ、俺もユリアもそうだからね。そうそう、この場にいる人間は諸々の事情も知っているから、気兼ねしなくていいよ」
「えっ?!」
「ちなみに俺は、商社勤務の会社員でした。専門は資源開発です」
「はーい!私は農学部の学生でした〜。専門は食品化学です」
「あっ!だからコンソメ味…」
「そうで〜す」
「でも、『ユリア』なんて、『四季恋』に出ていたかしら?」
「ソレ、髪の毛染めてるんだよ。元の名前は『リリア』」
「えっ?『リリア』って…。それにその琥珀色の瞳…もしかして、ヒロイン?」
「当たりでーす」
「えぇっ?ヒロインがこんな所で何してるの!?」
「王家の影やってまーす」
「えぇっ!!」
私は驚き過ぎてアレクシス王子を見る。
「まぁ、イロイロあって断罪返ししたらこうなりました」
「それって、ざまぁ的な?」
「そうだね」
く、や、し、い、〜!!
生で見たかった!!ネタになったのに!!
「あのー…、エイダ様?」
「はっ!すみません。取り乱しました」
クロエ様が心配して顔を近づけてくる。
すごい可愛い…。いい匂いもする。
ユリアさんも流石はヒロインという顔をしているが、クロエ様の整い方は別格だった。
悪役令嬢ってスペック高いのよね~。
そう思っていたら、急にキッと睨んでくる。
えっ?何で?
「エイダ様もアレクシス殿下推しなんですの?」
少し低い声音で凄んでくる。コレ嫉妬かな?
でも、可愛いだけなんだけどな…。
それにしても『推し』って…。
「いえ、私は箱推しなので…」
「箱推し?」
「作品の登場人物をまんべんなく好きって事です。誰が一番とかありませんし、男性、女性関係なく好きです」
「そうなんですの?」
クロエ様はホッとしたような顔をする。
ふとアレクシス王子を見ると、悶えていた。
「アレクシス王子、どうしました?」
「俺のクロエが可愛くて尊い…」
悪役令嬢に攻略されている…。
ウケる。
私はこの二人の順位を、心の中でそっと上げた。
「エイダ王女にお聞きしたい事があります」
唐突に耳に美声が飛び込んでくる。
声のした方を見ると、ロイド様が話しかけてきていた。
私は喜びのあまり祈ってしまった…。
「どうしました?」
「はっ!条件反射で…」
「エイダ王女様、その気持ちわかります」
何故かユリアさんが肩に手を置き、うんうん頷いている。
「私も神に感謝の気持ちを捧げました」
「ユリアさん…」
「あのー…、よろしいですか?」
「し、失礼しました!どうぞ」
私は我に返り、慌てて体裁を整える。
「では…。私が聞きたいのはこの後の展開についてです?ユリアは体験版の内容しかわからないそうなので。正規版がどうなっているのか、エイダ王女はわかりますか?」
「残念ながら私も体験版までしかプレイしていないんですよ。というより、正規版は発売されませんでした」
「発売されてない?」
アレクシス王子が聞き返してくる。
「はい」
「どうして?」
「制作チームが解散してしまったので…」
「えっ?」
お忘れかもしれませんが、クロエちゃんは悪役令嬢です。
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