27.お約束
「というワケで1週間後、レティとフェイロン皇子の手合わせの前にショウ王子と対決することになりました」
「は?」
アレクシス殿下が惚けている。
ちゃんと理解できたのだろうか?
「ロイド。殺すなよ?」
「まぁ、善処する」
イスタークが忠告してくる。
でも実際、手加減が難しそうだ。
レティを愛称で呼んだんだ。憎悪に駆られ、全力でぶつかってしまうかもしれん…。
「いやいや、何でそうなったんだ?」
「喧嘩を売られたので」
「は?」
「ショウ王子はフェイロン皇子とレティを戦わせたくないそうですよ。か弱い女性を男性との対決に駆り出すなんて、何事だ!とのようです」
「ショウ王子は剣姫を知らないのか?」
「おそらく」
「それはレティに失礼だろ」
イスタークも呆れている。
「でも、レティを守ろうとする心意気は買うけどな」
そう言って、イスタークが俺を見る。
本当に嫌なヤツだ。
「まぁとにかく、我が国でスカーレット嬢以上の剣技の持ち主はミレン辺境伯しかいないからな。ロイドとの対決が終わったらショウ王子にその事実をぶつけてみよう」
「殿下も性格悪いですね。対決前に言わないとか」
イスタークが顔を顰める。
「それはそうだろう。ミストラル王国の事を碌に知りもしないで口出ししてくるんだからな」
「勉強不足は否めませんね」
「それにしたって…」
「イスターク」
「はい」
「俺は部下を虚仮にされて、黙っていられるほど広量ではないぞ」
「…!」
イスタークが押し黙った。
すると突然、「あ〜…」と言いながら、頭をガシガシと掻きだす。
そして、何か大切な事を思い出したかのように顔を上げた。
「…殿下はそういう方でしたね。忘れてました。少し、妹の事で視野が狭くなっていたのかもしれません。失礼しました」
そう言って、頭を下げた。
滅多に無いことに俺も驚く。
本当にこの男はアレクシス殿下にだけは忠誠を誓っているな。
きっと二人の間で何かがあったのだろう。
これは俺やクリストフ、ヨハンにも言える事だ。
「わかればいいよ。でも、ロイドだけじゃない。イスタークが馬鹿にされても俺は相手に対して報復するからね」
そう言って、殿下は笑った。
これだけでイスタークは報われるだろう。
チラッと見ると、大男が感動しているのが見えた。
殿下は本当に王たる器だな、と思う。
そんな中、扉をノックする音が聞こえた。
「入れ」
殿下の合図で入室したのはユリアだった。
「失礼します」
「ユリアか。どうだ?エイダ王女の様子は」
「殿下…。エイダ王女は…」
「エイダ王女は?」
「エイダ王女は腐っていました!」
「うん?…えっ?!え〜〜〜!!!」
?
腐っているとはどういう事だろうか?
俺とイスタークは首をかしげた。
「マジかよ…。この後、そういう展開になるの?エイダ王女の二次創作なの?どっち!!」
殿下が必死だ。
そんなに重要なのだろうか?
確かに人が腐ったら大変だが…
「恐らく、二次創作かと思われます」
「ああ、そういえば殿下。エイダ王女が不思議な事を呟いていましたよ」
「いつ!何て言ってたの?」
「確かあの顔合わせのお茶会の時、『アレク✕ショウかしら、でもレオ王子も捨てがたい。イス✕ロイに、当て馬アレク』と言ってた気がします。どういう事ですか?」
俺にはさっぱりわからんが…。
殿下が頭を抱えている。
「アレクシス殿下とイスターク様とロイド様とショウ王子は獲物決定なんですね〜」
ユリアが楽しそうだ。
深堀りしてはいけない気がしてきた…。
「やめてくれ…」
殿下も弱々しい。
「んふふふ〜。わかっていないロイド様とイスターク様に教えてあげましょう!ズバリ、エイダ王女はアレクシス殿下たちを二次創作の登場人物にしています!しかもその二次創作とは、男同士の恋愛を描いたものです!」
『…え“っ?』
という事は…
「二次創作の世界では、先に名前が出た方が攻め、後が受けを意味しています。なのでアレク✕ショウとは、アレクシス殿下に攻められるショウ王子という事です!」
鼻息荒く、ユリアが自慢気に説明してくる。
やっぱり聞かなきゃ良かった…。
「じゃあイス✕ロイは、俺に攻められるロイドという事か?」
「イスターク様、その通りです!」
「だとよ、ロイド。上下関係では俺が上のようだな?」
イスタークがニヤリと笑い、マウントをとってくる。
絶対わかってないな…。
「イスターク…。これは男同士の恋愛の話だぞ。純粋な上下関係の話じゃ無い」
「は?恋愛?」
「あぁ、恋愛の話だ」
俺は大きく頷く。
「はぁぁぁ〜〜!!何考えてんだよ!エイダ王女」
「まぁ、そういう事だ」
「えぇ〜!イスターク様、反対派の人ですか〜?」
ユリアが何故か不満そうだ。
「いや、だって俺にはギャビーがいるからな!」
「だから空想の話なんですってば〜!イスターク様、頭堅い!それにロイド様をよく見てくださいよ!本当に無理ですか?」
「やめろ」
ユリアに唆され、イスタークが俺を見る。
何故、近づいてくるんだ…。
俺はジリジリと後退りし、ついに入口扉付近の壁に追い詰められた。
俺より背の高いイスタークが、壁に手をついて俺を見る。
そして一言、
「無いな。顔と色気は十分だが、胸と尻が無い」
ときっぱり言い放った。
一部の女性を敵に回しそうな発言だ。最低な男だな…。
そう思っていると、耳をつんざく悲鳴が聞こえた。
「ぎゃぁぁぁ〜〜!!」
そして、そこには鼻血を出して倒れてるエイダ王女がいた。
ユリアが入った時、扉が少し開いていたらしい。
ユリアを見ると、してやったりの顔をしていた。
コイツも中々の策士だな…。
俺とイスタークは、そんな哀れなエイダ王女を殿下の執務室に運んだ。
さぁ、お楽しみの尋問の時間だ。
クリストフとヨハンの出番が少ない…(-_-;)
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