22.邂逅
――――ショウ・ダイス
なんて美しい人なんだろう…。
真っ直ぐなブルネットのロングストレートを高い位置で一つに結わえ、ルビーのような紅い瞳は意思の強さを感じる。
その立ち居振る舞いは、まるで高貴な一輪の薔薇のようだった。
「ショウ王子、大丈夫ですか?ご令嬢も…」
テオ騎士団長が、心配しながらすかさず警護に入る。
女性といえど侮れないからね…。
「私は大丈夫です。それより、今、ショウ王子と…」
「はい。ダイス王国から来ましたショウ・ダイスと言います」
彼女が一歩下がり、カーテシーをする。
軸のブレない、とても美しいカーテシーだった。
「ダイス王国の王子とは知らず、大変失礼しました」
「そんな!こちらも不注意だったので顔を上げてください!」
「ありがとうございます」
そう言って、顔を上げて笑った彼女は一輪の薔薇から大輪の薔薇へと表情を変えたため、僕は見惚れてしまった。
「あ、貴女のお名前は?」
「はい。私は、スカーレット・ミレンと申します」
「スカーレット嬢…」
とその時、僕を探す声が聞こえた。
「あちらで王子をお呼びのようですね。早く行かれた方がよろしいのでは?」
「そうですね。あっ、でも…、もし、後から怪我などしていたら遠慮なく僕を訪ねてください。これから王宮に暫く滞在しますし、僕は薬学に詳しいので…」
「ふふっ、お優しいのですね。でも私も鍛えてますから、これくらいでしたら大丈夫ですわ。お気遣い頂き、ありがとうございます」
なんて謙虚な人なんだろう…と、また見惚れてしまった。
「王子、そろそろ…」
テオ騎士団長が急かす。
「わかりました…。行きましょう」
そう言って僕たちは会場へと戻った。
スカーレット嬢…、また会えるといいな。
――――スカーレット
はぁ…。
私ったら、他国の王子とぶつかるなんてとんでもない粗相だわ…。
ショウ王子がいい人だったから良かったものの、あやうくロイ様に恥をかかす所だった…。
なんて情けない。
今日はこの後、王宮にてエイダ王女とアビゲイル様との顔合わせがある。
ミストラル王国からの参加者は、クロエ、ガブリエラ様、イザベラ様、シルヴィア様と私だ。
遅れないようにしなくては…。
それにしても…、先程ショウ王子を呼ぶ声。あれはロイ様だったわね。姿は見えなかったけど、お声だけでも聞けて元気を貰えたわ!
よし、ロイ様の為に頑張るぞ!
――――中庭レセプション会場
「ショウ王子、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です!ロイド様」
「私の事はロイドで構いません。それより気のせいか、お顔が赤いような…」
「えぇっ!」
そう言って、ショウ王子が更に赤くなる。
いったい、何かあったのだろうか?
「もう少しで懇親会も終わりですが、先に休まれますか?」
「本当に大丈夫ですから!最後まで参加しますよ」
「そうですか…。何かあったら何でも仰ってください」
そう言って、俺は人好きのする笑顔を向けた。
「はい、ありがとうございます!」
「では失礼します」
そう言って踵を返そうとすると、ショウ王子に呼び止められた。
「そういえばロイドさん!」
「はい」
「『スカーレット・ミレン嬢』を知っていますか?」
……。
スカーレット・ミレンだと…?
俺は一瞬、顔が強張った。が、すぐに表情を戻す。
「知っていますが、そのご令嬢がどうかされましたか?」
俺はできるだけフラットな状態を心がけた。
ショウ王子の発言によっては、冷静でいられなくなるかもしれないからな…。
「い、いえ。先ほど廊下でぶつかってしまって…。どこかお怪我でもされていないか心配になったものですから…」
なんだ…。ただぶつかっただけか…。
俺はまた人の良い笑顔で対応する。
「そうですか…。では、ショウ王子が心配していたと伝えておきますね」
「ありがとうございます」
「ショウ王子、本当にそれだけでよろしいのですか?」
テオ騎士団長が口を挟んできた。
「どういう事です?」
俺はテオ騎士団長に顔を向ける。
「いや、ショウ王子の様子を見る限り、スカーレット嬢に一目惚れしたようでしたので」
「テ、テオ団長!!何を!」
ガハハと笑いながら、テオ騎士団長は続ける。
「ミレンということは、もしや『辺境の獅子』の異名を持つエドワード・ミレン辺境伯のお嬢さんなのでは?」
「ええ、その通りです」
「テオ団長、知ってたのですか?!」
「いや、勢いよくぶつかったり、カーテシーをした時の体幹がまったくブレていませんでしたからね。それに、『ミレン』という姓も…。『ミレン』は武人ならば、国を超えて誰もが知る姓ですからね」
さすがはミレン辺境伯だな。ファンがあちこちにいるとは…。
「それに、スカーレット嬢は確か婚約者がいなかった筈。ショウ王子もいませんし、年も同じですから、ちょうどいいのではないですか?ねぇ、ロイド殿…!!」
こちらを振り向いたテオ騎士団長の顔が固まった。
軽く自覚はしているが、今、俺がどんな表情をしているかは想像に難くない。
「ロ、ロイドさん?」
ショウ王子が、おずおずと話しかけてくる。
「テオ騎士団長」
「は、ハイ!」
自分でもびっくりするくらいの冷ややかな声が出た。
「その情報は古いですね。スカーレット嬢には婚約者がいますよ」
「そ、そうなんですね」
「ええ。私たちはお互い愛し合っていますので、余計なお節介は無用かと」
「と、言うことは…」
「はい。スカーレット・ミレン辺境伯令嬢は、この私、ロイド・ウィラーの婚約者です」
俺は朗々と宣言した。
ショウ王子はロイドの地雷を踏み抜きました。
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