21.ヘビと子ウサギ
そんな熱い展開を繰り広げていると、いつの間にかフェイロン皇子がショウ王子と接触していた。
ヘイムダルと配下の者が位置につき、何かあれば合図が来る手筈となっている。
さて、フェイロン皇子はどう切り出すのだろう。
――――ショウ・ダイス
はぁ〜、他国王族への謁見なんてめちゃくちゃ緊張した…。
僕は上手く出来ただろうか…。
これが他の兄弟たちならもっとスムーズに出来たんだろうな…。
いやいや、落ち込むな自分!
他の兄弟たちに負けないように自分から言い出した事だろ!
しっかりダイス王国に成果を持って帰らないと…。
僕の名前はショウ・ダイス。
ダイス王国で第三王子として生を受けた。
僕には上に二人の兄と一人の姉、下に双子の弟と妹がいる。
そう、なんとびっくり六人兄弟なのだ。しかも一人の母から生まれている。女性にとって危険な多産ができるのも、ダイス王国の医療が発展しているからである。
そんなダイス王国は医療技術を売りにしていて、他の兄弟たちは、類稀なオペ技術を持ち、新しい術式もどんどん発表している。
僕はそんな兄弟たちの落ちこぼれだ…。
オペ技術は平凡極まりない。
僕に出来ることといえば薬学くらいである。
正直、兄弟たちの手助けになっているかは怪しい所だ。
国の為になることを模索していたとき、今回の話は渡りに船だった。
アレクシス王子の即位式に他国の王族も来るという。
何をすればいいのかまだ見つけられていないが、きっかけでも掴めればと思う。
僕はこの外交に賭けた。
もちろん家族は反対した。
そうだよね…。落ちこぼれの僕が行ってもダイス王国の恥さらしにしかならないもんね…。
でも、僕は諦めなかった。なんとか説得して、ミストラル王国行きを勝ち取ったのである。
ただ、護衛にテオ騎士団長を付けられてしまった。
余計な事はするなよ、という家族の意思を感じる…。
まぁ、何はともあれ僕はミストラル王国にやって来た。
来る途中もイロイロあったが、一番ビックリしたのは、具合の悪い妊婦に薬を処方したら、それがティーダ国のレオ王子の奥さんだった事だ。
二人にはとても感謝された。
それにしても…、他国の王族とは何故あんなにきらびやかなのか…。
レオ王子は華やかで逞しく、男らしい。羨ましい限りだ。
アビゲイル様も嫋やかで、美しかった。
二人ともお似合いだと思う。
しかし、ミストラル王国に来たら更に驚いた。
アレクシス王子を始め、側近たちの美形度が半端なかったからだ。僕はすごく気後れした…。
なんだ?選ばれし者は美形と相場が決まっているのか?
特に、アレクシス王子の右腕と言われているロイド様は神がかっていた。
なんなら崇拝してもいい程の美形だった。
しかも優しそう…。
婚約者がいないなら、うちの姉様と結婚してほしいとまで思ってしまった。
そして、ミストラル国王への謁見が終わり現在である。
会場の百合の花がとても美しい!
百合はダイス王国の国花でもあるので、とても嬉しい。
それに、このパリパリしたお菓子!
給仕に聞いたら、ジャガイモを薄くスライスして揚げ、味付けしたものだという。とても美味しい!
これは家族にも食べさせてあげたいな…、と思っていたらシュブラン皇国のフェイロン皇子が話しかけてきた。
「好、ショウ王子」
「こ、こんにちは。フェイロン皇子」
あんな大国の皇子が僕に何の用だろう?
人見知りな僕の為に、人よけになってくれていたテオ騎士団長も、さすがにシュブラン皇国の皇子は止められない。
それにしてもニコニコして、とても人が良さそうだ。
「君、薬学に通じていると聞いたんだが」
「はい、そうですが…」
「ふむ…。一つ聞きたい事がある」
「何でしょう?」
「ミストラル王国、邪魔だよね?」
「!?!?」
「フェイロン皇子!何をおっしゃいますか!」
テオ騎士団長がすかさず会話に割って入る。
「君には聞いてない。我はショウ王子と話している」
「しかし!!」
「クドいです。主の話に、水を差さぬように」
隣にいた藍色の髪の男がテオ騎士団長を退ける。
えっ?テオ騎士団長を退けられるって…。
どんな強者なの…。
僕はブルブルと震えた。
「あぁ、そんなに怖がらないで。今は落ち着いて話ができなさそうだ。アレクの狗もチラホラいるようだし」
「主、ロイド様が動きそうです」
「あの男を敵に回すと厄介ね。ユファ叔母上の弟子らしい」
「それは確かに厄介ですね。ここは退散しましょう」
「では、ショウ王子。また連絡する。再見」
そう言って、フェイロン皇子は去って行った。
「ショウ王子!大丈夫ですか!?お顔が真っ青です」
「だ、大丈夫だから。ちょっと休めば元に戻るから。僕、ちょっとお手洗いに行ってくるよ」
「では、私も付いて行きます」
「いいよ、とは言えないね…。ここ、他国の王城だし。わかった。テオ、ついて来て」
「御意」
僕とテオは足早に会場を出た。
びっくりした…。
あんな何事も無い様子で、悪意を出す人がいるなんて…。
僕のいた世界は、なんて狭いんだろう。
目を閉じても、フェイロン皇子のあのヘビのような目が忘れられない。
ただ、あの言葉はすごく甘美だった…。
僕も思っていたんだ。
ミストラル王国が無ければと…。
そうすれば、もっと薬の材料が安く手に入ると思うから…。
きっと自分の心の底にある醜い欲望を、無理矢理引きずりだされたから恐怖してしまったんだ…。
でも、フェイロン皇子とはまた話をした方がいいかもしれない。僕がダイス王国に持ち帰れる成果を呈示してくれそうな気がする。
考え事をしていたので前をよく見ていなかった。
テオ騎士団長の「危ない!」という言葉に気付いた時には、誰かとぶつかってしまった。
「わっ!」
「きゃっ!」
「ごめんなさい!僕が前を見てなくて…」
「大丈夫です。こちらも不注意でした」
そう言って、ぶつかってしまった人を見る。
そこには、ブルネットに紅い瞳をした薔薇のような女性が佇んでいた。
シナリオスタート!!
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