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眠れる星の少女  作者: 今井まい
11/16

10 alley cat

世界は時空波でしばしの間、眠りに落ちた。



地球上で現在動いているのは私と曽根くんが乗った原付バイクだけ。

ただひたすらに道路の上を走っている。




「どうして家でじっとして無かったんだよ!!!」

曽根くんは私に怒っていた。バイクを運転しながら怒っているのでぶつからないかヒヤヒヤする程だ。

「俺、誘いましたよね……?一緒に行きませんかって。そこで断っておいて自分は1人で時空波の中で動き回っちゃったんですか!?」

「それはごめんなさい……」

「おかげで見つかっちゃったじゃないですか!!」

「だって!!そこまで言わなくたっていいじゃない!!」

感情が高ぶって泣いてしまった。

「とにかく……詳しい話は目的地に着いたら話しますから」

曽根くんは完全に頭に血がのぼっている。バイクは3時間ほど走ったが、それ以降会話が無かった。




--------------------------------------------------------------------------------------------------------

バイクはどこかの山の中に入り、鬱蒼とした木々に囲まれた場所で止まった。

途端にポケットに入れてあったラジオが鳴り始め、時空波の終わりを告げた。

だんだんタイミングが良すぎて怖くなってきた。

何故曽根くんが到着して時空波が始まったのだろうか。曽根くんは何かを隠していることを確信する。

「ねぇ。どこ。ここは」

かなり古い家の前にきた。

シャッターは長い間開けられていないようで、草のツルが絡まっている。引き戸の玄関を開けるとカビ臭い匂いがした。曽根くんが玄関と廊下の電気をつけ、靴を脱いであがるとリビングのような場所に案内された。

「僕の隠れ家です。詳しく話すと友達の亡くなったおじいさんの家ですが……まぁ、座ってください」

古そうなソファーに座ると曽根くんは近くにあったコンロでお湯を沸かし始めた。台所のドアにはめ込まれている硝子はキラキラと星の光のような柄をしている。

曽根くんはお茶の葉を用意しながらボソッと呟いた。

「泉さん、さっきは怒ってしまってごめんなさい。」

「あ……うん」

お湯が沸いてヤカンが鳴る。曽根君はお湯を急須に入れ、湯のみを2つ分机の上に置いた。

「あなたを巻き込んでしまって、ごめんなさい。これから泉さんと俺はしばらくの間逃げ回らなくちゃなりません。」

「そっか」

こんなことならもっと真面目に大学の授業受けておけば良かったな……

私はお茶をすすった。温かいお茶を飲んだことで少し落ち着いた。

「ねぇ、なんで、私が逃げている時に曽根くんが現れたの?」

「言えません」

即答した曽根くんに空いた口が塞がらなくなった。血圧が元に戻る。

「は!?隠し事しながら一緒に逃げないといけないの?どうして?」

「これ以上、巻き込むことが出来ないからです。」

「もう十分一緒に巻き込まれてるじゃん」

「泉さんが考えているより、ずっと大きなことに巻き込まれてしまうんです。」

「いつ、説明してくれるの?」

「わかりません」

話しの埒が明かなかった。


曾根くんは時空波の中をバイクで走り、道端で寝ている人に毛布をかけている…じゃあ、その理由は?一体なんでそんな非営利的なことをしているの?なぜ私はそんな謎ばかりの人を信頼してしまったのだろうか。時空波の中で動ける同士が出来たからと浮かれてしまったから?自分の頭の回転の悪さに腹が立ってきた。


「何があろうと私は信じるよ、だって時間が止まるとか意味わからない世界なんだよ。今更宇宙人でもなんでもどんと来いってさ。話してくれるまで、ずっと待ってるから」

そう言うと曽根くんは目線をそらしてお茶をすすった。



「…とにかく、無理だよ逃げるなんて。日本中どこにでもいる時空波対策庁にさ……」

「え、そっちにも見つかったんですか!?」


そっち?????


曽根くんは頭を抱えている。ぁぁ、そっちか……そっちもあるのか……とグルグル部屋を回り始めた。

「俺が慌てて迎えに行ったのは、、猫です。最近、猫に見つかりましたよね。さっき時空波を起こされたのもそのせいです。」


猫?

最近私の家を出入りしていたあの、野良猫?


「俺、ずっと猫に追いかけられているんです。」

また、開いた口が塞がらなくなってしまった。

…まあ…時間がずっと止まるよりは現実的な話かもしれない。


その瞬間、私の視界がユラユラと揺れ始めた。

あ、だめだこれ、倒れるやつだ。

あまりの出来事の連続に、私は気絶してしまったのだった。




----------------------------------------------------------------------------------------------------


時空波が終わり、サイレンが鳴る。最悪の目覚めだ。


「国民のみなさん、おはようございます。時空波が明けました。本日、突然発生した時空波による被害は甚大なものとなり、この後時空波庁が緊急会見を…」


小枝茜は、泉を追いかけている最中に時空波に遭遇、道端で意識が飛んでしまった。となりには部下の谷岡がぐっすりと寝ている。

「おい谷岡、谷岡ってば」

茜は谷岡を揺らして起きない姿を見ると、背中にかかと落としをした。

「いってえーーーーーーー!!」

「なんでこんな道端でぐっすり寝れるのよ。鈍感にも程がある。」

「すんません、もう少し、寝かせてください。」

谷岡が再び寝ようとするので、茜はもう一度かかと落としをしようとした。慌てて谷岡が立ち上がる。


「寝てる場合じゃないわよ谷岡。「泉みらい」のことよ。逃げたのも怪しいけど、時空波が明けてから辺りを見回しても何処にもいなかった。間違いなく彼女は時空波の最中動き回り、狐面と関係がある。」

「やりましたね先輩!!じゃあ、上に報告を…」

「ダメ」

「なんで?」

「この程度の証拠じゃ、上の人に見せても寝ぼけていたんじゃないの?と一喝されて終わってしまう。とにかく何か、証拠を集めるのよ。付近の防犯カメラ探すとか」

「わかりました。で、逃げた行方はどうやって探します?」

「…根気よ」

急に力業になった上司を見て、少しあきれる谷岡だった。



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