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底辺探索者の俺、スキル《過去改変》で終末世界を改竄する ~「あの時こうしていれば」を現実にしたら、いつの間にか世界最強の救世主になっていた件~  作者: モコタ
第一章 《過去改変》を取得する(2025年α)

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8/22

8話 《過去改変》1回目①

 固有スキル、《過去改変》を取得した翌日のことだ。

 俺は一晩中、興奮と不安でろくに眠れなかった。ステータスウィンドウに刻まれたその文字が、見間違いではないかと何度も確認した。


「……やっぱり、誰かに相談しないと落ち着かないな」


 一人で抱え込むには、この力はあまりにも重すぎた。

 そう思い至った俺は、夜になってから友人の千葉の家を訪ねることにした。


 千葉一樹(ちばかずき)は中学生の頃からの数少ない友人だ。

 数少ないというか、唯一と言ってもいい。

 他にこんな、頭が狂ったと思われるような話を打ち明けられる相手なんていなかったんだ。


 彼は独身だというのに、驚くほど立派なマンションに住んでいた。

 場所はダンジョン近くの危険区域内だ。

 本来ならいつモンスターが徘徊していてもおかしくない場所だけど、このマンションには高価な結界石が設置されている。

 そのおかげで、部屋の中にモンスターが湧くことはない。金があるってのは、安全さえも買えるってことなんだな。


「固有スキルだと! 緋呂、本当か?」


 リビングに通されるなり報告すると、千葉は手に持っていたグラスを落としそうになった。


「ああ。嘘じゃない。だが……頼む、これについては絶対に秘密にしてくれ。変な連中に目を付けられたくない」


「分かってる、分かってるよ。探索者にとって固有スキルは大事な切り札だからな……。だが、《過去改変》とは、穏やかじゃないな」


 千葉はそう言って、大きなソファに深く腰掛けた。

 俺は彼から手渡された冷たい缶ビールを一口啜る。

 キンと冷えた苦みが喉を通ると、高ぶっていた感情が少しだけ、現実に引き戻される気がした。


 ふとした瞬間に、部屋の中に静かな時間が流れる。いつまでも驚いているわけにはいかない。

この《過去改変》という未知の力と真正面から向き合うべき時だ。


 俺は空中に向かってステータスウィンドウを開いた。

この半透明の画面は本人にしか見えない仕組みになっている。俺は千葉に見守られながら、表示されている内容を一つずつ口に出して伝え、スキルの詳細説明を読み解いていった。


「意識を……過去に飛ばす? これって、つまり……タイムリープか?」


 心臓の鼓動が、ドクンと跳ねる。

説明欄の隅には、リソースと思われる不思議な表記があった。


【TP:20/20】


「TP……タイムポイント、か」


 俺がつぶやくと、千葉が身を乗り出してウィンドウのあたりを覗き込んできた。

 もちろん、彼には何も見えていないはずだが、その表情は真剣そのものだ。


「スキルの発動に必要なエネルギーみたいなものだろうな。20ポイントが最大値か。緋呂、そのポイントがどう消費されるのか、もっと詳しく見てくれ」


 千葉の言葉に従い、俺はウィンドウの説明を読む。

どうやら、スキルを使用するたびにこのポイントが引かれる仕組みのようだ。

現在の残りTPは十。


『過去改変(TP:2P)』

――意識を過去へ飛ばす。過去での滞在時間は五分。


「2ポイント使って、五分間だけ過去をやり直せる……ってことか」


 俺の説明を聞きながら、千葉が低いうなり声を上げた。


「『過去に戻れる時間』ってのは、過去の自分に意識を飛ばして、その五分間だけあっちで自由に行動できるって意味だろうな」


「過去で行った行動により………過去が改変される、か」


「これ、とんでもないスキルじゃないか? 特大の当たりだぞ。歴史を塗り替えるレベルだ」


 千葉の興奮した言葉に、俺は喉の渇きを覚えた。

学歴も職歴もない底辺探索者だった俺に、世界をひっくり返すような力が握られているのだ。


「……試してみる価値はありそうだな」


「おいおい、本気か? 慎重にやれよ」


「分かってる。でも、動かなきゃ何も始まらないだろ」


 俺は震える指先で、自分にしか見えないウィンドウの文字を見つめ続けた。

この静かなマンションの一室で、俺の運命が大きく動き出そうとしていた。


 TPは、スキルを使用するごとに消費される。

 つまり、過去改編のスキルを使える回数は十回というわけだ。……なるほど、無限にやり直せる無敵モードというわけじゃなさそうだ。


「回数制限があるあたり、かえってリアルだな」


 千葉が腕を組んで言った。


「そうだな。代償なしで使い放題だったら、世界の法則が壊れちまう。制限があるのは、むしろこのスキルの『本気度』を表している気がして、背筋がゾクリとするよ」


 スキルというものは、実際に使用して検証していくことで理解が深まっていく。特性や制限を体に叩き込むうちに、理屈ではなく「確信」として理解できるようになるのが、この世界のルールだ。不親切だとは思うが、何事も習うより慣れろ、ということだろう。


 今まで生きてきた二十四年の人生は、お世辞にも順調とは言えなかった。

 高校を中退し、まともな職にも就けず、ダンジョンの底辺を這いずる日々。だが、このスキルがあれば、クソみたいな過去を書き換え、未来に一筋の光をブチ込めるかもしれない。

 何を変えるか。何を選ぶか。俺の目の前には、今まで閉ざされていた選択肢が無限に広がり、その一つ一つに見たこともない可能性が詰まっている。


「……よし。まずは、試してみるしかねえだろ」


 俺は慎重に、だが魂に決意を込めて、ウィンドウの文字を押し込んだ。


『過去改変(TP:2P)を実行しますか?』


「ああ、やってやる。――起動!」


 その瞬間、視界がぐにゃりと歪み始めた。

 千葉の住むマンションの部屋の景色が溶け、意識が濁流に飲み込まれていく。


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