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底辺探索者は《過去改変》で終末世界を改竄する  作者: モコタ
第三章 世界線の移動(2026年α)

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39話 三人の大学生①

「メンバー募集の件ですけど、条件とは少し違いますが、応募が一件ありましたよ」


 ギルドの受付嬢、楠木さんのその言葉に、俺のテンションは一気に跳ね上がった。


「本当ですか!?」


 身を乗り出すようにして問い返す。


「……それで、どういった条件の方たちなんです?」


「大学生の三人組なんですけどね。一人がレベル14で、残りの二人がレベル12だそうです」


 俺が出していた希望条件は、レベル18以上の探索者一人か、あるいはレベル14以上の二人組だった。

 糟屋(かすや)ダンジョンの三階層を探索するには、レベル14の探索者が三人揃うのが最低条件とされている。

 今の俺のレベルは16だ。それくらいの戦力が揃えば、ようやくまともな探索の形になる。

 三人ではなく、俺を含めた四人パーティーであれば、レベル12が混じっていても十分戦い抜けるだろう。


 その大学生三人組は、自分たちだけでは適正レベルに届かず、三階層に挑むのは難しい。

 だが、俺と組めば三階層への切符が手に入る。

 ちょうど大学が冬休みに入るというタイミングも、彼らにとっては都合が良かったのかもしれない。


 自分より低レベルの探索者と組むのは、本来なら効率が良いとは言えない。

 四人パーティーとなれば、手に入る素材も経験値もすべて四分割だ。だからこそ、当初の募集条件には彼らのような低レベル層は入れていなかった。

 だが、俺一人では逆立ちしたって三階層を探索することはできない。

 適正レベル以下の階層でどれだけ魔物を倒したところで、効率が悪すぎて話にならない。

 三階層に足を踏み入れられるのであれば、この話は俺にとっても決して悪い話ではないのだ。


「問題ないです。その条件で受けさせていただきます」


 素材の分配が四分割になる以上、収入面ではあまり期待できないかもしれない。

 だが、レベルを早く上げないと人生が詰んでしまう俺には、一分一秒の無駄も許されないのだ。

 今は目先の小銭を追いかけるよりも、着実に強くなれる経験値効率を選ぶしかない。


 それに、三階層のモンスターの方がレアドロップの可能性が高い。

 運よくレアな素材を一つでも仕留めることができれば、収入面だって現状を大きく上回ることだってあり得る。




 ▽


「本日よりお世話になります! よろしくお願いします!」


 元気のいい挨拶とともに頭を下げたのは、佐々木、京極、六角の三人組だ。

 彼らは現役の大学二年生。学業の傍ら、ダンジョン探索をバイト感覚でこなしている若者たちである。……いやはや、二十代半ばに突入した俺からすれば、その溢れんばかりの若さとエネルギーは眩しすぎて網膜が焼けそうだ。


 ここで少し、現代の世知辛い大学事情を解説しておこう。今の大学学生課という場所は、実は政府公認の「クラン」として認定されている。

 学生が探索を行う際は、学生課が窓口となってギルドと連携し、バックアップを受けられる仕組みだ。

 二〇二四年のパンデミック以降、政府の予算がダンジョン対策に偏ったせいで、大学への補助金はボロボロに削られた。

 結果、大学側も学生にダンジョンを潜らせて国からの支援金を得ないと、運営の歯車が回らないというわけだ。

 彼らにとっての探索は、夢を追うプロへの道ではなく、あくまで「効率の良い生活費稼ぎ」なのだろう。


 パーティーの構成を確認すると、前衛に佐々木と六角、後衛に京極。実に教科書通りのバランスだ。

 前衛も後衛もそれなりにこなせるが、決定打に欠ける器用貧乏な俺としては、彼らの動きを観察しつつ、足りない穴を埋めるパズルの一片として動くのが最善だろう。


 彼ら大学生にとって、今は待ちに待った冬休みだ。時間が腐るほどあるうちに集中的に潜り、レベルを上げて稼ぎたいという思惑らしい。

 彼ら三人の実力では三階層への挑戦は荷が重いが、レベル16の俺が加われば話は別だ。お互いの利害は一致している。


「よし、方針は決まったな。顔合わせの会議だけで一日を潰すなんて、時間の無駄遣いも甚だしい。早速ダンジョンへ向かうぞ」


 俺の提案に、三人は期待と緊張が入り混じった顔で頷いた。


 向かった先は糟屋(かすや)ダンジョン。初心者に優しいE級ダンジョンであり、俺にとっては文字通りの「ホーム」だ。

 何しろ、俺が借りているボロアパートはここから徒歩二分の距離にある。ダンジョンの入り口付近はモンスターが湧くリスクがあるため家賃が激安なのだが、E級程度なら低レベルの俺でも安全は確保できる。


 ダンジョンの入り口は、地面にぽっかりと空いた巨大な「大穴」である。直径十メートル、深さ五メートル。

 その底に地下へと続く階段があり、そこから先が異界の入り口だ。大穴の周辺は高いフェンスで厳重に封鎖され、ギルドの詰め所には職員が目を光らせている。


「北條緋呂です。こちら、パーティー全員分の登録証になります」


 受付で免許証を提示し、手際よく手続きを済ませる。

 学生たちの冬休み期間は三十分待ちの行列ができることもあるが、今日は運良く人の波が切れたタイミングだった。

 予定より少し遅めの出発にはなったが、幸先の良い滑り出しと言えるだろう。


「よし、じゃあ行こうか。足元に気をつけろよ」


「うっす、任せてください!」


 俺たち四人のパーティーは、ダンジョンの中へと足を踏み入れた。

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