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底辺探索者は《過去改変》で終末世界を改竄する  作者: モコタ
第二章 《過去改変》の検証(2026年α)

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26話 レベル15

 焼き肉を食べに行ったあの日から四日後。

 アンナと絵梨を護衛に雇ってダンジョンを探索するのは、これで六回目になる。

 三階層の探索も回数を重ね、俺たちの連携は一度目の時とは比べものにならないほどスムーズになっていた。


 周囲を包むのは、ダンジョン特有の濃密な緊張感と魔物の生臭い気配だ。

 前衛で立ち回る俺の動きを、アンナが鋭い指示で補佐し、後方からは絵梨の冷静な援護が飛ぶ。


「――ギギャッ!」


 最後の一体、ゴブリンの喉元を俺の剣が正確に貫いた。肉を裂く確かな手応えがあった。

 魔物が光の粒子となって霧散したその直後、俺の脳内に無機質なアナウンスが響き渡った。


「レベルアップしたようだ」


 俺は周囲の警戒を解かないまま、二人だけに聞こえるような小声で呟いた。


「おめでとう! これでレベルは15になったんやな。ずいぶん順調ちゃう?」


 アンナが自分のことのように上機嫌な声で言う。


「ああ……。二人のおかげだ。俺一人じゃ、今頃まだ二階層で足踏みしていただろうからな」


「あはは! ウチらはきっちりコレ頂いてる『商売』やから、気にせんでええよ」


 そう言いながら、アンナは右手の親指と人差し指で円を作り、金銭を意味するジェスチャーをしてみせた。

 確かにこちらは大金を払ってレベリングを依頼している客なのだから、下手に出る必要はないのかもしれない。

 だが、客だからといって上から目線で振る舞うのは、俺の性分にはどうしても合わなかった。


「まだまだレベル上げたいのよね」


 絵梨が、杖を構えたまま背後で静かに呟いた。

 正確には「パーティメンバーが見つかるまで」はこの契約を続けたいと思っている。

 もちろん、俺の予算が底を突かなければの話ではあるが。

 レベル15になったとはいえ、この程度でまともなパーティメンバーが見つかるかどうかは、まだ微妙なラインだ。


「これからも頼むよ。二人には本当に助けられてるんだ」


 俺が真剣なトーンでそう答えると、絵梨はこちらをチラリと盗み見て、ふっと微かに口角を上げた。


「ええ。期待に応えられるよう、精一杯サポートさせてもらうわ」




 ▽


 それから二日後。俺は《過去改変》を発動させることにした。

 検証の結果、現在と過去では時間の流れが違うことが分かっている。その差はおよそ二・六倍。非常に中途半端な数字だ。

 計算を楽にするため、俺はスキルの使用を五日単位で行うことに決めていた。クールタイムが明ける三十日後に使えば、過去では七十八日が経過する。

 そこから五日ごとにスキルを使えば、あちらでは十三日ずつ時が過ぎていく計算だ。

 今日はちょうど、前回から数えて三十五日が経過したタイミングだった。過去の世界では、すでに九十一日の月日が流れているはずだ。


 あれから三ヶ月か。前は小学三年生の二学期――十月上旬だったから、三ヶ月後となると、一月上旬になるな。

 計算してみると一月十日。あちらの自分は冬休みが終わった頃だろう。計算した日にちょうど行けるのだろうか。


 とりあえずスキルの検証を一緒に試してみようと考えて、友人の千葉に連絡を入れてみた。

 だが、あいつは相変わらず死ぬほど忙しいらしい。


「またバグが……」


 千葉の返信によれば、来月発売のゲームに致命的な不具合が見つかったという。

 発売日までに修正パッチを完成させなければならず、文字通りのデスマーチだそうだ。当然ながら俺に付き合っている暇はないようだ。

 友人が地獄を見ているのは気の毒だけど、俺には俺のやるべきことがある。


 仕方がないので、俺は一人で準備を進めることにした。

 今回の過去で何を確認するべきか、頭の中でシミュレーションを繰り返す。


 深呼吸をして、意識を集中させる。

 俺はステータスウィンドウを呼び出した。



 【名前】 北條緋呂(ほうじょう ひろ) 

 【年齢】 25歳  【レベル】 Lv15 

 【HP】 334/334 

 【MP】 321/321 

 【攻撃】 207

 【防御】 197

 【敏捷】 203

 【理力】 193

 【技力】 188

 【幸運】 183

 【SP】 1088

 【武装スキル】 《剣術 Lv2》《投術 Lv2》《体術 Lv2》

 【魔術スキル】 《火魔術 Lv3》《土魔術 Lv2》

 【固有スキル】 《過去改変 E》

 【一般スキル】 《回避 E》《追撃 E》《索敵 D》《虫特攻 E》《料理 D》

 【耐性スキル】 《魔術耐性 E》《物理耐性 E》《精神耐性 E》《毒耐性 E》



 レベルアップで《火魔術》のスキルレベルが上がっている。

 武装スキルと魔術スキルを両方取得した場合は、スキルレベルが上がりにくくなる。

 俺のレベルならばスキルレベル3が当たり前なのだが、ようやく皆に追いついた感があるな。

 とはいえ低レベル帯であれば、器用にいろんな攻撃の出来るタイプは役に立つ。レベル25を越えた中堅探索者は武装スキルか魔術スキルでスキルレベルが4以上ないと戦力不足になってくる。

 器用貧乏タイプはこのレベル帯で最前線から降り落とされるのだ。

 そして、そういう情報が出回った今となっては、器用貧乏タイプは将来性無しとして忌避されることになる。


 まあ、それはいい。

 俺としては目標はレベル20。《過去改変》のスキルランクをDにして、探索者として自活することが出来るようになるのが目標だ。

 今は《過去改変》の検証に集中しよう。


 俺は視界に浮かぶ半透明のステータスウィンドウをログを操作した。


『過去改変A(TP:2P)』


 十分間の過去への旅が始まる。

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